|
|
このセットの中に1956年にバンベルク響を振ったブルックナー交響曲第9番がある。モノラルの放送局のスタジオ録音らしい。多少の音質の瑕疵はあるが、ハンブルク響のような乾いた音ではなく、潤いのあるホールトーンでとても聴きやすい音である。これが飛び切りの名演である。 カイルベルトというひとはなんでブルックナー9番をこんなに素晴らしく指揮できるのだろう! なにもいうことがない。一点も非の打ちどころのない演奏である。 遅くもない早くもない丁度よいテンポで、素晴らしい楽器のバランスで、真情がこもっていていて、こころの中になんの障害もなくすーっとブルックナーの音楽がしみ込んでくる。 かつて岩城宏之は「カイルベルトの音楽は嘘がない」と言ったというがまさにその通りだ。 カラヤンと同年生まれで、とても仲が良く、誕生日には二人でニコニコしながらお祝いをし合ったというが、周知のようにカイルベルトはトリスタン指揮中に長逝してしまった。カラヤンと二人で仲良く80過ぎまで生きて活躍してくれていたら…と誰しもが思っているだろう。 しかしないものねだりはやめよう。カイルベルトはバイロイトなどにも不滅の足跡を遺したのだから。
0
|