眼の前を蒸気機関車が疾走する!
余りのリアルな音質に狂喜!
汽笛一声、左から右へ、右から左へと通過する蒸気機関車。あるときは軽快に、あるときは息も絶え絶えに、まるで生き物のように姿を変える。山々にこだまする汽笛、シュッシュというドラフト音、ガタンゴトンというジョイント音はもとより、虫や小鳥たちの囀りも見事に捉えられている。
特に感動的なのが山口線。夏真っ盛りの空気感、蜃気楼の彼方から汽笛が響き、段々と右奥からこちらへ迫ってくる。C57型1号機は「貴婦人」という名とは裏腹に、威勢のいい汽笛を、まるで自らを鼓舞するかのように鳴らしに鳴らして近付いてくる。ドラフト音が如何にも「なんだ坂こんな坂」と聴こえるようだ。やがて勾配の頂点を越えて、向かって左側へと、軽快さを取り戻して疾走し消え去り、あとには虫の音だけが残るのである。
その一連の流れは、今まさに自分が線路脇にいて、録音機材を回しているかのように極めてリアルだ。
なお、JVC盤との比較を何点か。音質は変わらないが、装丁が変わっている。JVC盤ではケースが分厚い紙で出来ていて、2つ折りになっているところにCDが収まり、更にライナーノートがケースに直張りされていた。対する当盤では、JVC盤より薄い紙の2つ折りで、ライナーノートはポケット状になっている表紙の中に封入されている。これなら、ライナーノートが読み易い。しかも説明が細やかで読み応え満点!
新規にトラックが追加され、特に追分構内での音には地震か地響きのようで驚かされるが、これもまた臨場感に優れたもの。
オーディオ・ファンにも鉄道マニアにも嬉しいCDだろう。つくづく生産終了が惜しまれる。別の高音質な媒体での再販を切に希望するところである。