コストパフォーマンスが良くないので3つ星とする。本セットはショスタコーヴィチ第5だけで3種類の演奏が入っているなど、選曲に偏りがあり、寄せ集め感が強いが、実際、全部聴いてみても、玉石混交の感は否めない。コンヴィチュニー指揮のマーラー第5は、冒頭のトランペットが止まりそうになるなど、オケの技量が何とも頼りない。一方、クリュイタンスの「幻想」は、流石の貫禄を見せるが、ホールのひどくデッドな音響に足を引っ張られている。全部の演奏に関して書いているとキリがないので、やめておくが、音質と演奏の両面から満足できたのは、デルヴォーとマルティノンのみ。特に素晴らしいのはマルティノン、それも「春の祭典」だ。半世紀ほど前、日本の高名な音楽評論家が「マルティノンの春の祭典は涼しい」と評していたのがずっと記憶に残っていたのだが、実際に「涼しい」かどうかはともかく、圧倒的な名演だ。これまで数十種類の「春の祭典」を聴いてきたが、これほどまでに、イキイキと躍動する演奏は初めてだ。もちろん、マルティノン指揮フランス国立放送管弦楽団ならではの気品高い音色と洒脱な表現も存分に味わえる。あくまでも個人的な感想だが、マルティノンの全演奏の中でもトップレベル、「春の祭典」の全CDの中でもトップレベルと言えるのではないか。だが、この1曲のためだけに定価15,590円を
支払おうと考える人は、流石に少ないのではないだろうか?