2017年の本作以降、彼らの音信は途絶えてしまった。一説には空中分解(あるいは自然消滅)してしまったみたいで、本作は貴重かつ希少なラスト・(ミニ)アルバムとなってしまった。”夏”にフォーカスした楽曲をたくさん提供し続けてくれていただけに、ソリッドな夏歌愛好家としては残念でならない。
本作には秋の気配が感じられる落ち着いた楽曲も収められているが、全体的に夏色の風景が広がっていて、方向性にブレはない。
出色は2曲目のミディアムな「君と僕の宇宙」だ。ゆったりとした時間の流れに身を任せているような、幸福感と安心感に包まれている。歌詞には生物学的な視点で綴られている部分もあって、何となく理系の匂いがするが、学術レポートのような堅苦しさなどはなく、酸素が十分に足りている無重力空間を浮遊しているみたいで何とも心地よい。
ジャケットに描かれた紫紺の海を泳ぐシロナガスクジラを眺めながら、1,650円で手に入るコンパクトな音楽に浸ってみるといい。彼らの残した4枚のCDはどれも秀作揃いで、聴いているだけで”なつやすみはおわらない”気持ちにさせてくれる。