メンバーズレビュー一覧

E_L_E_G_Yさんが書いたメンバーズレビュー

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(全48件)

個人的に「These Days」以来、久々に気に入ったシングル曲となった。母親が「山P」を好きみたいで、『インハンド』DVDがあるのだが、その流れで、実家で『ブルー・モーメント』が流れていて、耳を引いたという訳。

分かり易いヒーロー・ソングだが、歌詞・主旋律が巧みで、印象の良い曲に仕上がっている。喉の調子が悪かったとかで、全盛期よりキーが低めだが、高音が出なくても歌えるので、1曲しか収録しないなら、「カラオケ」トラックが欲しかった。

ドラマ用に書き下ろしたかは知らないが、高揚感・生きる力・友情と、物語に沿った歌詞になっており、ドラマのバックで流れると説得力を増す。

特に「持ち上げられないものは 持ち上げない」の一節は、二次災害を防ぎ「必ず生きて帰る」というレスキューの掟を、きちんと盛り込んでおり、相当、考えて書かれた詞だ。

★取り表は、本音を言えば4.5かな? 歴史に残る名曲=★5には一歩及ばないが、歌詞の質は割合高いと思う。

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フォーリング・イン・ラヴ

Aerosmith

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

全米1位に輝いた1997年『Nine Lives』からのシングル。タチの悪い女に惚れちまって、大変だぁ!という歌である。3分半のコンパクトなラヴ・ソングで、気軽に聴けるノリ一発!な曲だ。1997/02/21に、この曲でミュージックステーションにも生出演を果たした。メンバーがインドの音楽に興味を示したとかで、アルバム・ジャケットも(宗教的理由で変更されてしまったが)、それっぽい物だった。

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ライズ・アップ

Bobby Kimball

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

【レア度と音質の良さで、★4つから、★5つにおまけ】

 TOTO の高音シンガー:ボビー・キンボールのソロ作。普通はそう思って聴くだろうが。この作品には、実は「兄弟盤」が存在する。それが、アンルーリー・チャイルドの1st.(タイトルはバンド名と同じ)である。後に女性に性転換してシーンを驚かす事になる、マーク・フリー率いるハード・ポップ・バンドである。

 このアルバムは、その、アンルーリー・チャイルドのメンバーが全面的にバックアップしており、曲もかなり重複しているのだ。良質のHR/HPと紹介され、アンルーリー・チャイルドの1st.を当時買ったのだが。Atlantic Recordという事で、日本の音響機器と、奥行きの座標軸が逆になっており、ドラムが手前に、ヴォーカルが一番奥に聞こえてしまう、困りものだった。暫く聴いたものの、音の規格違いに耐えられず、自分は手放した。

 そんな時、ほぼ同じ盤が別名義で出ている、との情報を BURRN! 誌で見つけて、買ってみたのが、これである。結果は、大正解!だった。自分は音の定位を結構気にする方なので、アンルーリー・チャイルド盤が「本家」だとは知っているが、聴くなら絶対にボビー・キンボールの方!である。

 大名曲とは言えないが、ハード・ポップの秀作「Who Cries Now」がお気に入り。年齢的には1990年代が青春期なのだが、年長の兄弟や、部活の先輩に教えられて洋楽を聴くようになった事もあり、聴いて落ち着くのは1980年代の方だったりする。メロディック全盛だった1980年代好きなら、そこそこ気に入るのではないかと思う。

 それにしても、ボビーって、ノーメイクで海賊役が務まりそうな風貌なのに、歌うと爽やかだなぁ(爆笑)。

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【白昼夢】=「クリーム」-「クラプトン」+「ムーア」

 BBM と書いて、ベイカー=ブルース&ムーアと読む。方程式で表すなら、(クリーム)-(クラプトン)+(ムーア) である。ロック史上、最も歌の上手いギタリストとも賞されるゲイリー・ムーアの力を借りて、伝説のブルーズ・ロック・バンド「Cream」を現代に甦らせた。簡単に言うと、そういうバンドである。Ginger Baker (Dr), Jack Bruce (Bass), Gary Moore (Gtr/Vo)。

 1960年代に活躍したバンドゆえ、グランジ全盛の世に大ヒット…とは成らなかったが。内容はお聴きの通りである。驚く程、【音が老化して無い】のである。当時、高校生だった自分でも、安定感のある音に聴き惚れた。3ピースによる伝統的なブルーズ。本当にただそれだけなのだが。各曲は表情豊かだし、何曲かは目立つメロディーもある。そして何よりプレイがやたら上手い。3人とも、楽器が弾けて、歌も唄えるので、人数の割に曲が多彩で飽きない。年齢からは想像しにくい程、音にキレがあり、そこそこテンポの速い曲もある。

 シングルにもなった「Where In The World」と、オープニング「Waiting In The Wings」の2曲が目玉だが、その他も、及第点はクリアした曲ばかりなので、ブルーズが好きなら「外れ」はまず無いだろう。ゲイリーの歌はハード曲でもカッコいいが、表現力が抜群なので、スローな曲も安心して聴ける。高音でありながら、豊かな声量があり、そして適度に渋い。

 今よりも文学の地位が高かった時代。街で出会った女と一夜の恋を共にするOP曲でも、ムード抜群の優れた歌詞に仕上げてしまう。言葉を操る能力は、やはり本を読まないと身に付かない。映像やゲーム全盛となった1990年代以降の曲に、こういった「奥行き」を感じる物語は少なくなってしまった。

 2002年リマスター盤は、アビィ・ロード・スタジオで仕上げられた秀逸な物。音空間がひと回り広がった他、シングルB面曲がボーナスで加わった、ほぼ完全版なので、当時のスタジオ盤を「下取りに出して」(笑)、2002年日本盤を買い直した。旧オリジナル盤が、次のファンを生んでくれる事を願って。ちなみに増曲も歌詞と日本語訳が付く。

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【一度はお蔵入りになった名作】

オバマ大統領が広島で行ったスピーチは 「Death fell from the sky」 and the world was changed というフレーズで始まる。これは、Gary Moore 「Hiroshima」 の歌詞から引用されている。音楽ファンでも知られるオバマ大統領は、間違いなく、この曲を知っていたと思われる。情報は、第191回「ラフカディオ・ハーンの会」会報より。「落ちてきたんじゃなく、自分らが落としたんだろう?」という批判が一部で起こったが、この曲を知っていれば、「被害」もきちんと把握していた事だろう。

制作は1981年。ミュージシャンを食い物にすることで悪名高い、JET Records時代の作品で、録音当初はお蔵入りになっていた。収録曲に原爆をテーマにした「ヒロシマ」という曲が収録されていたからか、1983年に突如、レア・アイテムとして日本のみで発売され、漸く陽の目を見た。

ヴォーカルは元テッド・ニュージェント・バンドのチャーリー・ハーン。ベースにジミー・ベイン、キーボードにドン・エイリー、ドラムにトミー・アルドリッチと、そうそうたる面子が揃っている。特に、ヴォーカルのチャーリー・ハーンの絶唱はこのアルバムに特別な力を与えている。

オープニングは「ヒロシマ」。♪あの “リトル・ボーイ(爆弾)” が生まれ落ちた日のことを忘れない ♪罪なき市民が焼かれた ♪口のきけない子供がたくさん生まれた ♪死神が舞い降りた日、彼らは胎内に居た 縦横無尽に駆けめぐるギター、空間を突き抜けるヒステリックな高音。反戦を歌うこの曲は衝撃的だ。

12”シングルとして唯一、お蔵入りを免れた「ニュークリア・アタック」(核攻撃)も素晴らしい。♪ボタン一つで、世界は闇と化すだろう ♪核攻撃の後に誰が生き残れるのか? 絞り上げるコーラスの高音は迫力十分だ。

そして、ラストの大作「レスト・イン・ピース」。現在の彼に通じる「引き」のプレイが楽しめる。個々の曲も素晴らしいし、アルバム全体としても起承転結がしっかりと描かれている。満足感が高いアルバムだ。これだけの作品が2年もの間、倉庫に眠っているとは…。ブルース・ディッキンソンの幻のソロ2作目もそうだし、世の中には理解不能の理由で発売されなかった音源がまだまだあるのだろう。

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スケートの羽生結弦選手が起用した事から、新品在庫はゼロに

世界的なギター・ヒーローにして、歌も抜群に上手い事で知られる「ゲイリー・ムーア」。「Parisienne Walkways - Jet to the Best」とある様に、Jet Records 時代のアルバム3枚から選曲したベスト盤。

同様のベスト盤は『White Knuckles』、『Gary Moore Best』に続く3度目なので、あまり注目していなかった。しかし、ふと調べてみると、曲数が一番多い(17曲)事に加え、G-Force 名義の7-inchシングル『You (remix)』にしか収録されていないレア曲「Trust Your Lovin'」を世界初のCD音源として収録しているではないか。実家に置いていたはずの『ホワイト・ナックルズ』を誰かが借りて行ったまま行方不明になってしまっていた自分。「じゃあこれを」と注文した、はずだった。

... ところが、自分が全く知らなかった「ある社会現象」により、たくさんあると思っていた在庫は、綺麗さっぱり、音楽店の倉庫から姿を消してしまっていた ...

それは、アイドル的な人気を誇る、フィギュアスケート界のプリンス:羽生結弦選手が演技のBGMに「パリの散歩道」を起用した為である。聞けば、それを当て込んで3度目の新装発売を企画したフシも。お陰で、アマゾンにて新品を注文し、到着予定まで立ったのに、とうとう買えなかった自分である。2ヶ月も待たされた挙句、注文ごと取り消しに。仕方ないので、新品に近い中古盤で我慢する羽目に。あぁーあ。何と言う事だ! 羽生人気恐るべし。まるでジャニーズのCDの様である。まぁ、きっと新しいファンを獲得出来て、天国のゲイリーは喜んでいる事だろう。

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追悼の日本独自2011ベスト。Dis2には客演参加曲など多数網羅。

 2011年2月6日に亡くなった名ギタリスト:ゲイリー・ムーアを偲ぶ、日本独自ベストである。14万人の広島市民を摂氏6000℃の炎で焼いた「原爆」を歌う「Hiroshima」をはじめ、日本人の感性を重視して選曲したDisc1は、本当に納得の選曲。Disc2は、THIN LIZZY や COLOSSEUM II に加え、コージー(dr)ソロへの客演など、マニアックなサンプラーとなっている。この時だからこそ実現したと思われる、レコード会社横断の追悼盤だ。

 今の時代だから、海外でも買い求める人が居るだろう…と思ったのだが、実際は存在さえあまり知られていない模様で、貴重盤のコレクションサイトでも、詳細なデーターが載っていない。「再販制度」という特殊な保護主義のお陰で、今でも入手が可能なので、是非、海外のファンにもお勧めしたいぐらいだ。

 ハイライトはやはり「Hiroshima (ヒロシマ)」だろう。日本の戦争に関して、欧米は通常「加害者」として見るが、アイルランドの独立紛争を知るゲイリーは、珍しく原爆を被害者側から見て、怒りの声を上げている。チャーリー・ハーン(vo)の絶唱が冴え渡る曲で、間奏には「日本音階」も取り入れる等、歴史を正面から見据えた傑作である。

 ♪(when) death fell from the sky ... のフレーズは、オバマ大統領の広島スピーチでも引用されている。当日、勤務先で、昼のニュースで見たのだが、「あれ? もしかしたら、『Hiroshima』の歌詞か?」と気付いたのだが、たまたまかも知れない短いフレーズだったので、確証を持てなかった。しかし、ラフカディオ・ハーンの会という、文学のサークルで、事情を知る翻訳家の人が、公式に証言を寄せた事で、間違い無い事が確認された。

 ゲイリー・ムーア:若かりし頃は、スピード曲をバックにギターを掻き鳴らし、キッズを熱狂させた。年を重ねてからは、ブルーズを中心に「引き」のプレイでこれまた一時代を築いた。名手と云われるギタリストの1人。そして、恐らく「世界で最も歌の上手い」ギタリストである。歌えるギタリストは数いれど、ここまで歌唱力の高い人は中々居ない。声量のあるハイトーンで、独特の渋みを帯びている。

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スパニッシュ・ギタ-~ベスト

Gary Moore

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

「スパニッシュ・ギター」を3ヴァージョン全部収録するベスト?盤

New Wave Of British Heavy Metal ムーヴメントの理解者だったMCAレーベルが伊藤政則と企画した「NWOBHM貴重盤コレクション」シリーズの1つ。同シリーズではタイガース・オブ・パンタンも復刻されている。ほぼ日本企画盤だが、実はドイツでも1度だけリリースされている。尚、タイトルは「A Retrospective (レトロスペクティヴ)」だった。

2020年現在でも、マスターはオリジナルのままで、音質は1992年の初CD化時と変わっていない。よって、リズム楽器を拾い切れておらず、ドタバタとせわしない音質。土台のしっかりした重低音も響いていない。だが、これが当時のNWOBHMの典型だった。Jetレコード時代の音源や、メイデンのオリジナル音源もこんな感じだったなぁ。

「スパニッシュ・ギター」を3ヴァージョン揃える盤は、実はもう1つある。2013年に欧州だけで発売された「Back On The Streets」の再発盤がそれ。こちらは一応、リマスターもされている、という触れ込みになっているのだが。音圧が低く、あまり効果が感じられないそうなので、コレクター向けか。

ゲイリーにしてはファンキーな表裏ジャケットは、シングル盤「Spanish Guitar」をそのまま再現した物なので、石を投げない様に!! カウボーイ帽を被り、ガンマンを気取るゲイリー(笑笑笑)。天国で後悔してるんじゃないか?!と思える、ファンキーな代物だ。

[2] [3] [8] には作曲者としてシン・リジーのフィル・ライノットの名があり、[4] は彼のヴォーカルだ。レンジも狭いし、技術的には決して上手く無いのだが、独特の味があり、表現力がそれを補っている。

[6] [7] [8] [9] [10] はジャズ・ロックバンド「COLOSSEUM II (コロシアムII)」時代のアルバム「Electric Savage」、「War Dance」より。他、ソロアルバム「Back on the Streets」と、「Spanish Guitar」の計4作から選曲されている。

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スモウグリップ

Lucifer's Friend

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

相撲グリップが2022年にリマスターされる

リッチー・ブラックモアにRAINBOWに誘われた事でも知られる、ヴォーカリスト:ジョン・ロートン擁する、ドイツのルシファーズ・フレンドの復活作。『Sumogrip』(相撲グリップ) というタイトルで、入場・相撲・万歳・退場という和風のインストを挟む、面白い構成になっている。オリジナル発売は1994年。ジャケットのせいか、日本発売は無かったが、非常に優れた楽曲群で、ロートン亡き今、歴代最高傑作が確定した。日本的な作風なのはインストだけで、歌モノは以前通りである。メロディー重視のロックが好きなら聴いてみるといい。

ジョン・ロートンのクリスタル・ハイトーン。哀愁を帯びた曲から、明るく軽快なナンバーまで、多彩で飽きさせない。どれもシングル・カット出来そうな曲がズラリと並ぶ。実質・輸入盤で、解説が付くのみだが、2022年リマスターを機に日本でも発売が実現したのは素晴らしい。これが気に入ったなら、同じぐらい優れた ZAR (ツァー) の1st.アルバム『Live Your Life Forever』も、お勧めしておく。

リマスター効果だが、主に中音域の厚みが豊かになっている。オリジナルはクリアだが少し軽めの音だった。音量は幾らか増し、MAXになっている。

「You Touched Me... (with your heart)」は、4分と5分があるが、5分の方がオリジナル当時のボーナス曲だ:

Marquee/Belle Antiqueのものは、17曲入りで、「You Touched Me (with your heart)」の順番が、何故かオリジナルと逆になっているが、発売当時のボーナス曲もちゃんと両方聴ける。4分と5分があるが、5分の方がオリジナル当時のボーナス曲だ。

ウルトラ・ヴァイヴのものは、洋盤の2022 Remasterに帯を付けただけのものなので、オリジナル当時のボーナス曲のLong Versionしか無く、1トラック少ない全16曲だ。

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Script For A Jester's Tear (2020 Stereo Remix)

Marillion

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

英マリリオンのデビュー作『独り芝居の道化師』。前年に発売の豪華BOX SETから、本編1CDだけを抜き出したのが本作だ。代表作とされる3作目『過ち色の記憶』(1985)から、プロダクションの質が上がり、グッと音が良くなるが、1983年の当作品はドラマティックな演奏を上手く消化できておらず、全体的にドラムの重低音が強すぎる。ヴォーカルのフィッシュ(Fish)は、身長2mの巨体に似合わず、線が細い上に、高音部の多くに裏声を使う為、せっかくの歌詞が、演奏にかき消されがちだった。

1997年にもEMIよりリマスター2CDという形で出ているが、その時のリマスターも、ヴォーカルの籠もった音色がそのままで、「元が83年だし、これが限界なのかなぁ」と思っていた。しかし! 2020 STEREO REMIX は一味違うぞ!(by 石川五右衛門) …ヴォーカルがきちんと前面に出ており、音もクリアで、Fishが目の前で歌っているかの如く、歌詞がきちんと聞き取れる。

自殺をテーマにした、タイトル曲「Script for Jester's Tear」の向上度合いが特に凄い。他の曲は、ここまでの差は付いていないので、全体の労力の半分をこの曲に投入したのではないか? とさえ思う。

♪お前が花嫁衣装に身を包む頃 ♪俺は永遠の安らぎを手に入れる
♪屈折した微笑みを浮かべ ♪俺は殉教者を演じてみせる

まるでミュージカルの様に演奏もドラマティックだが、主役である歌 (特に歌詞) の完成度が凄い。「詩人」と賞されるFishの文学性の高さが、前期マリリオンの身上だ。8分40秒ある自殺の歌を、満員の観衆が、最初から最後まで大合唱する。この類を見ない光景が、日本には正確に伝わっていないと思う。

多数の作品をチャート上位に送り込んだ、大ヒットバンドであるマリリオン。デビューからたった5年で800万枚を売り上げた、彼らの実像は、この膨大な行数かつハイレベルな文学性を理解してこそ。この素晴らしい新リマスターは、是非、和訳付の日本盤を実現してもらいたいものだ。

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ブレイヴ

Marillion

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

現代的なサウンドのコンセプト・アルバム。

 イギリスのロック・バンド、マリリオンが1994年に発表したコンセプト・アルバム (7作目)。柔らかい中に芯の強さを備えた2代目ヴォーカル:スティーヴ・ホガース加入後を「後期」と呼ぶのだが、これはその後期の代表作である。
 イギリスの高速道路「M4」の橋の下で記憶を失い、錯乱した少女が発見された。この少女の情報を求めるラジオ放送を運転中に聞いたSteve Hogarth(vo)は、非常にショックを受けたと言う。「一体、今の社会で何が起きているのだろう?」そうしてこの実話を元に彼は詞を書き始めた…。初めは2、3曲のつもりだったそうだが、書いていくうちに、それはアルバム全体に及ぶ壮大な叙情詩となって行く。

 「無味乾燥なTV、垂れ流しの化学物質、学校ではいつも型に押し込まれていた…そんな世の中に慣れなくては!」と歌う “Living with the Big Lie”、「家に連れ戻された時、泣いたかい? 逃亡者…仕方ないね」と歌う “Runaway”、徐々に自分を失って壊れていく主人公の叫びを「Tell me I'm mad!」という言葉に込めた12分の大作 “Goodbye to All That” など、現代的なタッチのメロディーと、絡み合う効果音の中、シリアスかつ悲痛な詞が駆けめぐる。
 終盤、“The Great Escape” で逃避行のクライマックスを迎えたストーリーは、最後に “Made Again”(=生まれ変わる)で、ひとつの「救い」に到達する。アルバム中唯一の優しいナンバーであるこの “Made Again” のメロディーはとても美しく、主人公は朝の光の中で「希望」という新しい自分を見出すのだ。

 現代社会を「音楽」で見事に表現しきった素晴らしい作品で、自分はこれを超すアルバムは出てこないのではないか? とさえ思っている。番組の主題歌や、CM音楽には全く使えないタイプの音楽であるが、これがヒットチャートのトップ10に食い込んでくる所に、イギリスのシーンの奥深さを感じる。
 詞も、メロディーも、アレンジも、どこから聞いても素晴らしく、大作であるにも関わらず、無駄な展開が殆どない。ちょっと信じられないアルバムである。

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アフレイド・オブ・サンライト

Marillion

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

第8作目。UKロックを行き始めた最初のアルバム。

 完全主義から脱し、UKロックを思わせる穏やかで浮遊するメロディーを導入し始めた8作目。「ヒーローの光と影」をテーマにしたコンセプト・アルバムでもある。現代的なタッチは前作「Brave」同様だが、キャッチーなポップ・センスは減退。メロディーとバックが不協和音になっている曲が増えるなど、現代音楽の要素が強くなっている。

 Tr.1「ガスパチョ」のヴァース部分はまさにその典型。世界王者ボクサーの家庭内暴力を描いた曲で、♪服に付いたその染みは、本当にガスパチョ(スープの一種)ですか? という問いかけが深い余韻を残す。
 Tr.3「ビューティフル」は、UKロック・バラードの人気曲。2種類シングルが切られ、久しぶりにヒットを記録した。美しいものを踏みつけるこの世の中に、美しくある信念を持て、と歌う。
 Tr.5「アウト・オブ・ディス・ワールド」は高速艇で世界記録に挑戦し、湖に散ったレーサーを歌う。美しく漂う旋律の裏に、深い悲しみが宿っている、そんな曲だ。

 そしてハイライトがタイトル曲 Tr.6。ドラム・ループも使った電子的な曲だが、高い叙情性を持つメロディーにより、バンド最高傑作だ!と言う人もいる。栄光を掴んだヒーローが、何時しか日の光さえ恐れるようになる。華やかな舞台のすぐ向こうにある、人知れぬ孤独。このアルバムはそんな世界を描こうとしている様に思う。

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愛のままで… / 忘れもの

秋元順子

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

【シャンソンを思わせる大人のラヴ・ソング。2008年末紅白出場曲では随一の名曲だと思う。】


 音楽大学を目指していたものの、家庭の事情で一度は音楽の道を諦める。しかし音楽への憧れが捨てきれず、子育てが一段落した40歳で活動を再開。自主制作を経て58歳でデビュー。2008年1月発表の新曲「愛のままで…」がロング・ヒットを記録した「熟年の星」。――という紹介の後、還暦にして紅白初出場が決まった彼女の歌を、初めて耳にした。


 演歌ではない、普通の歌謡曲風に始まった「愛のままで…」。さほど期待もせずに聴き始めたのだが、コーラスに差し掛かったあたりで、俄然、画面に釘付けとなった。シャンソンを思わせる、陰りのあるメロディーは、今までに聴いたことのない、変わった展開を見せるのである。


 ♪そう キャンドルの灯が いつか消える時まで ♪愛が愛のままで…


 自分が選んだ愛を、最後まで貫く素晴らしさ。普遍のテーマを伸びやかに歌い上げるこの曲は、「大人の魅力」で溢れている。これだけの曲は、そう滅多に出ないだろう。音楽大学を目指しただけあり、唱法は完全な「正統派」。高橋真梨子を思わせる低音の声も、情熱的な歌詞に良く合っている。


 ミスチルとパフュームと水谷豊(=杉下右京)を目当てに2008年の紅白は珍しく全部見たが、何と、一番感動したのはこの曲であった。これだけ素晴らしい楽曲なら、若い世代が聴いても良さが分かる。2008年12月22日に総合第4位に上昇した後、2009年1月26日、遂に総合チャート1位を獲得。61歳7ヶ月での首位は最年長記録だそう。

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TOKYO OUTSIDER

ARB

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

【20作目のシングルは社会批判を込めたメッセージソング】

石橋凌、率いる ARB の20作目となるMaxi-Single。1998年作品。 どこか「壊れはじめた」日本を憂う歌で、Outsider (部外者)を装い、醒めた目で東京を映してみせる。 しかし、その中には強い危機感が宿っており、社会批判を込めたメッセージ・ソングとなっている。 シンプルなフレーズに乗せ、韻を踏んで繰り出される言葉は、心に深く刺さる秀逸な物…。 後期 ARB を代表する、「傑作」となった。

優れた歌詞がまず耳に入るが、メロディーもいい。 ストレートでシンプルだが、飽きの来ない優れた旋律だ。 ARB 自体は、もっと楽しい曲もたくさんあるが、これはシリアス一本で勝負している。 自分は、ARB でこの曲が一番好きだ。こんなカッコイイ大人に・・・なりたかった! イイ男だし、俳優やらせても、上手いもんねぇ。

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On Christmas Day<初回生産限定盤>

Magnum

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

【第1次世界対戦から100年、オリジナルから20年のリバイバル・シングル】

デジタル・シングル/LPレコードの2フォーマットで発売された2014年リバイバル・シングル。
1914年、第1次世界対戦から100年となる2014年、欧州各地で追悼行事が数多く開かれた。
クリスマス休戦を歌ったこの曲を収録する『Rock Art』は1994年作で、ちょうど20周年である。
そんな偶然からか、この反戦歌の「Radio Edit」ヴァージョンが制作され、リリースとなった物。

(1) On Christmas Day (Radio Edit) - 4:13
(2) Born To Be King (from album 'Goodnight L.A.') - 5:30
(3) On Christmas Day (from album 'Rock Art') - 7:17

表題曲の元ヴァージョンである (3) は『Rock Art』ラストを飾る大作だ。構成は大まかに:
(a)ゆったりした大らかな旋律3分、(b)テンポが早まり立体的に盛り上がり2分半、(a')元に戻り1分半。

(2), (3) は既発曲なので、(1) の新ラジオ・エディットがまぁ、目玉である。
一番カッコいい、中盤の(b)を中心に、コンパクト化されている。

長らく未CD化だった (1) だが、2021年にDVDのみの初回盤ボーナス曲らと共に編集盤に収録。
『Dance of the Black Tattoo』で入手可能となった。 (0886922680366).

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ザ・プライヴィレッジ・オブ・パワー

Riot

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

「Thundersteel」の次作は、実験的なコンセプト・アルバム。

1990年7thアルバム。正統派のメタル・アルバムだった前作「サンダースティール」と違い、大胆にもコンセプト・アルバムに挑戦。多数の大物ゲストも参加し、曲によっては社会的なベクトルも放射する。極めて実験的なアルバムに仕上がった。

かつては、哀愁を帯びた古風なHRバンドだったRIOTを、劇的に変化させたのは、超人的な高音を操る3代目シンガー:Tony Moore その人である。僅か1週間の来日で、ありとあらゆる日本語を片っ端から覚えてスタッフを驚かせるなど、音に対する感覚の鋭さでも知られた人物。その異常なまでに広い音楽観を存分に見せつけるアルバムだ。

まず「On Your Knees」からして、度肝を抜かれる。TOWER OF POWERのホーン・セクションを大胆に導入したナンバーで、薬物に依存して奴隷になっていく人間を痛烈に批判している。めまぐるしく展開する旋律は、摂取時の恍惚感を表現しており、ある種異常な世界観を持っている。ファンが付いて来られるかは別にして質は高い。

続くは、歌自体は格好いいミディアム・テンポ曲ながら、核戦争を歌う「Metal Soldiers」。NASAの探査船とおぼしきシップの交信の後、核ボタンが押され全てが灰になる… そんなSEに続いてスタートする。♪俺達は(生身の体を持たない)メタルの戦士だ!と歌うナンバーで、ライヴ映えするメタル・ソングながら、知的な威圧感も併せ持つ。

そして、前作の「Bloodstreets」を思わせる、悲痛なバラード「Runaway」。NYの都会的な失恋が歌われる。自分を捨てて、荒れた生活に身を投じる恋人を案じている風にも聞こえる。…という様に、頭3曲、全部名曲というとんでもないオープニングになっている。

ジョー・リン・ターナー(ex-RAINBOW)が参加した「Killer」では、狂ったような笑い声が3分も続くなど、イントロのSEが長すぎるという声は多く、拡散指向のアルバムだが、楽曲は前作に劣らぬ素晴らしいものばかり。モダンなナンバーでも縦横無尽に操る、Tony Mooreの鋭いセンスにより、切れ味は抜群だ。ジャンルの違う音楽でも平気で聴いてしまう幅がないと、このアルバムの良さは分からないであろう。

恐るべしTony Moore。

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ザ・プリヴィレッジ・オブ・パワー

Riot

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

ボーナス・トラックが付く、はずだったんですが。

SONY MUSICのサイトには、「日本盤ボーナス・トラック収録予定」と告知されていたのに、発売されてみたらボーナスは入りませんでした。オリジナルと同じ10曲です。バンド公式サイトに掲載の、“ラッパ無し”「On Your Knees」の収録を期待していたのですが…。

日本でのライヴが予想外に早く決まったことから、来日公演(2009年10月24日・25日)に間に合わせる為、見送った可能性が高いです。歌詞・対訳・解説は付いています。

但し、ボーナスが収録されなかっただけで、リマスターは実現しています。M-2.「Metal Soldiers」では、平均音量が -17.45dB から -14.98dB となり、ほぼレンジ一杯にアップされています。波形も確かに変化していますので、音量を上げただけではないと思われます。

1990年の音源であるため、差は少ないですが、ドラムスのキックの音がよりシャープになっているのが分かると思います。潰れたような音ではなく、輪郭のある衝突音になっているはずです。ただ、オリジナルの音量を上げて、リマスターと比べた場合、すぐに差を見破れる耳を持つ人は多くないでしょう。

社会派の詞に拡散指向のサウンド。クオリティは高いですが、正統派メタルの作品としては異色の本作です。しかし曲は文句なしに良い。Tony Moore の書く歌メロは、歴代シンガーの平均点を大きく上回っていると思います。D.V.S. も曲が書けるので、やはり Thundersteel Riot 編成は最強です。初期とどっちが好きかじゃなく、品質で見て、黄金期だったと思います。

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スラック

King Crimson

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

「宮殿」、「レッド」 に続く3つ目の名作誕生。

1995年作品。スタジオライヴ・ミニ・アルバム「VROOOM」(1994年)に続いて遂に姿を現したフル・アルバム「THRAK(スラック)」。エイドリアン・ブリューがリードを務める、1980年代クリムゾンに近い編成での復活で、前評判では期待と不安が交錯していたが、結果として、非常に満足行くアルバムに仕上がった。

最大のポイントは、初期の叙情性がある程度復活していること。特に歌モノでメロウな旋律がふんだんに使われている。エイドリアン・ブリューは歴代シンガーの中で一番キーが高く、普通に歌えばクリアな高音の美声シンガー。それがキャッチーで素直なメロディーを歌うため、ポップですらある。

ドラマーとベースが2人居る「ダブル・トリオ」という荒々しい編成はこの際、あまり意識しなくていい。インスト曲のバトルではうなりを上げるリズム隊だが、ヴォーカル曲では意外と大人しくまとめられており、リズムばかりが尖っていた1980年代の姿はない。

ジャズの影響を感じさせる不協和音を効果的に使ったインスト曲は、前評判通りのメタル・クリムゾン振りだし、一転してヴォーカル曲は、描写力の高いメロディーで、どれも良い曲に仕上がっている。のっし、のっしと歩く恐竜を見事にサウンドにした「ダイナソー」、この世の中を動かす歯車=人間を醒めた目で眺める「People」、「宮殿」のダークさをちょっと思わせる小曲「Inner Garden I & II」、浮遊するメロディーがフロイドっぽい「Walking On Air」、そして相反する物を対比した、不思議な歌詞の切ないバラード「One Time」…。

インストだけじゃダメという人でも、これだけポップ・ソングとして良い曲が揃っていれば納得するであろう。既存の壁を常に打ち破ってきたクリムゾンにしては優等生すぎる… 批判したがるファンはそう言うかも知れないが、素直に、良い曲が多い作品だと思う。「宮殿」、「レッド」に続く3つ目の名作が誕生した!と言わせてもらおう。

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You're My Only Shinin' Star

角松敏生

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

 中山美穂に提供された「You're My Only Shinin' Star」は、当初、アルバム中のみの曲で、シングルにはなっていなかった。ところが、「今回のNEWアルバムで一番好きな曲は?」という投票を行ったところ、何とシングル曲を押さえて、この曲が No.1 に輝いた。驚いたレコード会社は、急遽この曲をシングル化した。すると、これが記録的なヒットになり、紅白歌合戦にもこの曲で出場を果たしている。

 圧倒的に知名度の高いシングル曲を抑えて、アルバム中の曲がトップに立つというのは、邦楽ではあまり聞いたことがない。それだけ優れた曲だったということだろう。ただし、中山美穂の歌唱力はあまり素晴らしいと言えるものではなく、もっと上手い人に歌って欲しいなぁ、と思わないでもなかった。

 角松敏生の歌は、非常に上手いし、しなやかで女性の歌を歌ってもおかしくない声質をしている。セルフ・カヴァーの「ティアーズ・バラード」が発売された時、「You're My Only Shinin' Star」も収録され、期待したのだが、ガラリとアレンジを変えた上に英語詞。歌は上手いのに、何故かイマイチの出来だった。

 この曲の良さは、繊細な「詞」によるところが大きい。コーラスは英語だが、ヴァース部分の優しさに溢れた言葉が、とにかく素晴らしいのだ。だから英語詞だと、魅力が半減してしまう。何故日本語でカヴァーしてくれなかったのか・・・と随分がっかりしたものだ。このシングルの発売を聞いた時、「待ってました!」と思った。前回の失敗があるので、一応、レンタルで聞いてチェックし、期待通りの作品に仕上がったことを確認して、買ってきた。

 収録曲を見ると分かるように、日本語だけでなく、英語詞でも収録されている。アレンジが原曲に近いこともあり、例え英語でも、今回の方が印象が良い。更にカラオケも付いて(これも重要)、かつ、これまた名曲として知られる「花瓶」のアルバム未収録ヴァージョンも付いて、更にもう1曲入って1,260円というのは非常にお買い得だ。

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ザ・ヴィジョン・ピット

Landmarq

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

緊迫感のある1曲目がGOOD。

 イギリスのポップ寄りシンフォ・バンドの3作目。本国での発売は1995年11月だが、日本では1996年になってから。ヴォーカルはダミアン・ウィルソン。柔らかな高音で、堅実な曲作りにも定評があるが、参加はこの作品が最後となる。次作からはセクシーな外見にハスキー声の女性ヴォーカルに交代する。

 中堅バンドの地味な作品だが、毎作、1曲は目玉となる必殺の曲があるので、今まで買ってきたという感じだ。大作に喜ぶプログレッシヴ系ファンをよそに、必殺の曲はもっと短い曲に存在していたりする。

 今回の目玉は、1曲目のアップテンポ・ナンバーだ。緊迫感のあるシンセが効果的な曲で、簡潔ながらメッセージ・ソングになっている。「編集室の床には血が流れる」というリフレインは、映像が編集によってねじ曲げられる危険を表したもの。この曲が目立って良い。

 凝った展開と、気品のある英国らしい曲は、ある程度のクオリティを備えており、マイナーな作品を発掘するのに熱心なファンは押えておいてもいいだろう。尚、全9曲と表示されているが、10曲目に「To Do Or Die」というシークレット・トラックを収録している。シンセによるインストだが、弦楽演奏のようなサウンドになっていて、且つ、悲しげな旋律の良い曲だ。「おまけ」というレベルを超えている。メロディーは何となくアニメ「火の鳥 2772」に似ている。

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ワン・セカンド

Paradise Lost

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

【英パラダイス・ロストの最高傑作】

 英国ゴシック・メタルの雄、PARADISE LOSTの1997年作品。デス・メタル系バンドとして出発し、徐々にポップなメロディーを導入しながらここまで来た彼ら。前作「Draconian Times」では初めて普通に歌うパートも導入。陰りのある美旋律とヘヴィなヴォーカルの組み合わせで大ヒットした。

 本作は、更にそれを延長し、遂に「咆哮する」デス声を捨て去った。ヴォーカル:ニック・ホルムズのディープな低音とラウドなコーラスの対比を以て、「歌」で聞かせる新路線である。ハードに歌うパートはたくさんあるが、いわゆるデス声は一ヶ所もない。コアなデスのファンは不満に感じるかも知れないが、これでリスナーの幅は大きく広がったと言える。

 ニルヴァーナも手掛けたスウェーデン人プロデューサー:サンクの元、非常にキャッチーかつダークなポップ・ソングを展開している。静かなピアノのイントロで始まる 1. One Second(「一瞬」の意) からハード・ナンバー 2. Say Just Words への流れは、あまりにも素晴らしく、まさしく鳥肌が立つ感覚。

 暗黒一色のアートワークとは対照的に、様々な色合いを見せる楽曲群はどれも良く、これまでのキャリアが一気に爆発した感じがする。それぐらい曲が揃っている。キーボードが結構使われているのも本作の際立った特徴で、広がりのある音空間が心地よい。後半の目玉はプログレッシヴな展開も見せる 9. Blood Of Another。静と動を表現し切った名曲だ。

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フィッシュ(vo)の壮大な詩を中心に据えた、歌重視の新プログレッシヴ。

♪お前が花嫁衣装に身を包む頃、俺は永遠の安らぎを手に入れる

自殺をテーマにした衝撃的な大作「Script For A Jester's Tear」(邦題:独り芝居の道化師)で幕を開ける MARILLION、1983年1stアルバムだ。

「詩人」と賞されるフロントマン:フィッシュ(vo)。彼の壮大な詞を中心にした、歌重視のプログレッシヴ・ロックで、産業ロック的な聴きやすさも併せ持つ。GENESISと比較し「二番煎じ」と非難する向きもあるが、NWOBHMの若いファンには圧倒的に支持され、伝統あるMARQUEEクラブを14日間連続ソールドアウトにするなど、一気にブレイクした。

1970年代プログレッシヴ・ロックの悪しき伝統として、歌はパラッとしかないのに、演奏がやたら長い、という点が挙げられるが、MARILLIONにはそれがない。長い歌は本当に物凄い行数の詞が付いている。無駄な展開のない、珍しいタイプのプログレッシヴ・ロックだと言える。

♪屈折した微笑みを浮かべ、俺は殉教者を演じてみせる

…など、とにかく詞の素晴らしさが聴き所なので、絶対に対訳付きの日本盤をお勧めする。それでいて、メロディーもハイレベルで、演奏も上手い。

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中山美穂&WANDSのカヴァーを含む、後期ベストの初回盤。

シングル「世界中の誰よりきっと」のB面は「碧いうさぎ(2007 version)」ですが、ここで聴けるのは、1995年ドラマ「星の金貨」に使われたオリジナルの「碧いうさぎ」です。

初回盤の目玉は、香港のテレビでたった1回放送されただけの、ライヴ映像DVD 1.~12.でしょう。北京語ではありますが、格段に上手くなった「夢冒険」が聴け、リアルタイム体験者は感慨深いです。

外装シールの記述内容。

TOYOTA [愛を、はこぶね] 新型 NOAH [ノア] 誕生 CMソング『世界中の誰よりきっと』、『碧いうさぎ』『鏡のドレス』を含む全17曲収録。VICL-62592。

初回限定盤DVD収録内容: "ASIAN TOUR IN HONG KONG~work out fine~" 1998年11月に香港で行われ、2万4千人を動員したコンサート映像。日本未発表。61分収録。『世界中の誰よりきっと』ビデオクリップ。VIZL-261。

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アストラ

Asia

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

スティーヴ・ハウ脱退の影響なし

 元YESのギタリストで人気者だったスティーヴ・ハウが脱退。プログレ・ファンの一部が離れたため、セールス的には前2作(「Asia」「Alpha」)には及ばなかった本作。しかし、このバンドでスティーヴ・ハウが果たしていた役割は「単なるギタリスト」。重要曲の殆どをジョン・ウェットン/ジェフ・ダウンズの2人で作っていたため、曲のクオリティに於いて、スティーヴ・ハウ脱退の影響は全くない。ハード・ロッカーの新ギタリスト、マンディ・メイヤーの加入により、ハードさが増し、切れがあってカッコいいポップ・ソング群に仕上がっている。

 クラシカルなキーボードのイントロに続いてスタートするオープニング曲「Go」は、コーラス(日本で言うサビ)が Go! 一言しかないのだが、とても良い曲に仕上がっている。ヴァースをじっくり引っ張って、コーラスは Go! と裏メロだけに留めている、ちょっと変わった構成の曲だ。DEEP PURPLEの「Anya」あたりに近い。軍隊が行進するような連続音のバックもハードで◎。

 「ラジオから懐かし声が流れてきた」と歌う「Voice Of America」も優しい中に力強さのある名曲だし、何となくアニメの戦闘モノに出てきそうな「After The War」のメロディーも、描写力抜群で◎。イントロの部分はTVのBGMとかでも良く耳にする。

 キャッチーで、はっきりしたメロディーは元BUGGLESのジェフ・ダウンズの得意技で、ジョン・ウェットンがソロで書くメロディーより、もう少し瑞々(みずみず)しい。ウェットンだけのソロだとちょっと渋すぎてASIAのワクワクするような感動に薄い。人間的にはソリの合わないこの2人だが、やっぱり2人セットじゃないとASIAじゃないなぁ、と改めて思った。

0

F E A R

Marillion

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

後期マリリオン、久々の快作 (2016年、18作目)

 『ブレイヴ』の再来! 多くの人はそう評すだろう。ドライで現代的ながら、叙情的で美しい。そのサウンドは聴いた瞬間から、後期の代表作『ブレイヴ』を想起させる。イントロの電子音が極めて近い音色になっているのは、きっと意図的だろう。

 本作のテーマは「新自由主義」と呼ばれる、「持てる者・権力の暴走」である。「エルドラド」「ゴールド」が歌うのは、錬金術でも、ゴールド・ラッシュでもない。「経済」や「資本主義」そして「格差」である。

 社会批判を交えながらも、少女の逃避行に焦点を当てた『ブレイヴ』は、ある面、「Don't Cry」的で、ラヴ・ソングに近い描き方も使えたのに対し、社会情勢の描写をメインに据えた本作は、歌詞が難しく、覚えやすいフレーズは少なめである。歌詞がメロディーに乗り切れていない部分も結構ある。だが、ピケティが「21世紀の資本」で証明した、1%の大富豪と99%の貧困層を生む、資本の継承問題を、きちんと歌で描いている点に、このバンドの意識の高さを感じる。

 単品独立で、素晴らしいソング集として成り立っていた『美しき季節(とき)の終焉』、『楽園への憧憬』の方が、肩肘張らずに聴けて個人的には好きなのだが、こうした壮大なテーマに挑むのも、また、マリリオンである。スティーヴ・ロザリーのギターが、久々にロックしているのもポイント。比類無き完成度だった『ブレイヴ』には流石に及ばないが、『F E A R』は、後期マリリオン、久々の快作であると思う。

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RADIATION

Marillion

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

「レイディエーション」。1998年、10作目。ドライで、モダンで、キャッチー。

 1998年10作目。前作「This Strange Engine」はホガースの幼少期を描いていたため、どこか懐かしさがあったが、本作は一転して、徹底的にモダンなサウンドになっている。邦題は「レイディエーション」。放射線という意味で、イントロに続く「Under the Sun」のテーマである。歪んだギターによる短いハード・ナンバーで ♪僕たちは放射線の下で転げ回り、愛し合う と歌っている。

 離婚を描いた「These Chains」がシングル。同じテーマでもFish時代のユーモラスな「Punch&Judy」とは随分違う。パートナーが去り、静まりかえった室内を描く。♪鎖は切れ、全てが崩れ去った と歌う。

 彼女に会うために戻ってきたら、待っていたのは留守番電話の声だった…。「Answering Machine」は乾いた笑いを誘うナンバーで、Promo用に配布された曲。一発屋をテーマにした「3 Minutes Boy」も絶望感ある風刺曲。いずれもGood。

 「Cathedral Wall」に至り、遂に主人公は全てに疲れて、眠りに逃げたようである(苦笑)。繊細なヴァースと、やたらラウドなコーラスが不気味だ。ドライな現代社会を歌う各曲は商業向きではないが、クオリティは結構高い。また、割とキャッチーで、音像は代表作「Brave」を思わせるところも。

 ボーナス・トラックの内、注目すべきは米盤収録の「Memory of Water (Big Beat Mix)」。元は簡素なアコースティック曲だったのだが、ここでは物凄いビートをバックにした8分の大作に変身している。

 尚、2013年に、レギュラー・トラックを丸ごとリミックスし、オリジナルと2枚セットにしたデラックス盤が突如リリースされた。

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センスの良さが光る挿入歌群。ドラマ「アナザヘヴン」サウンドトラック1。

「月」をテーマにした超現実ドラマ「アナザヘヴン」のサウンドトラック。テレビ版の出演は大沢たかお、加藤晴彦、室井滋、本上まなみ他。テーマBGMは作曲家:岩代太郎が担当。シンセサイザーによる都会的なBGMは、旋律も良いし音色も美しい。

通常、サウンドトラックというと、オープニング/エンディングが目立つ程度で、あとは雰囲気だけのBGMというケースが多いが、このアルバムは違う。インストも良い曲なのだが、各場面で使われる様々なタイプの挿入歌が豪華である。SAKURA、ワイヨリカ、MIO、UNITED JAZZYなど、知名度は決して高くないが、モダンでセンスのいいナンバーが集まっている。インストは5曲のみで、残りの8曲は計7アーティストの曲を収録。

歌モノの筆頭格はLUNA SEAの「gravity」。所謂メイン・タイトル(=主題曲)として扱われており、主旋律はBGMでも頻繁に登場する。16ビートのゆったりしたミディアム曲で、珍しくあまり高音を使わないのだが、神秘的で良い曲だ。

「月蝕」を意味する吉田美奈子の「LUNA ECLIPSE」も、ミステリアスなシーンで多く使われており、主題歌の一つと見なしていいだろう。歪んだギターのノイズで始まり、規則的なビートの中、低音の女性ヴォーカルが、呟くように退廃世界を唄う。

コーラスはたった1回しかないのだが、この迫力はどうだ?! ♪次第に/欠落(か)けてゆく/満月の夜空 太陽に縁取られた/光輪(ひかり)の中で…

このサウンドトラックは、曲もさることながら、歌詞のレベルが高い。甘えるようなアダルト・チルドレン声で唄うワイヨリカの「さあいこう」も歌詞が強く印象に残った。♪僕たちは隙間を見つけ/その壁を乗り越えながら/誰かに謝りたいこと/素直になるべきときを

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「アイルランドの悲劇」をテーマにした1996年作。

 キャメル・復活第2作・1996年作品は、全人口の43%もが移住を余儀なくされた「アイルランドの悲劇」をテーマにしたコンセプト・アルバムです。「キャメル復活の名作」と言われた前作 「Dust and Dreams」 に劣らぬ素晴らしい作品に仕上がっています。亡き父の出自に興味を持ち、故郷に降り立ったアンドリュー・ラティマーが、ケルトの歴史をテーマに渾身の1作を書き上げました。

 ケルトのトラッドで幕を開けたアルバムは、間々にインストの小品を挟みながらサウンドトラックのように展開していきます。メイン・テーマ [3] Harbour of Tears では、7人兄弟の5人までが故郷を離れていく「別れ」のシーンが歌われます。アンドリューが息子、コリン(ベース)が父親のパートを担当しています。息子・娘達を黙って見送る父親の、深い愛情が伝わる名曲です。

 [5] Send Home the Slates は、西部の鉄道建設の仕事に就いた息子が、仕送りと共に添えた手紙の内容になっています。「日当は悪くありません、元気です」物悲しいリフが素晴らしいです。

 一方、娘達は縫製工場での労働に就いていました。ミシンを踏み1日10時間、上下する [7] Watching the Bobbins (糸巻きを見つめる) 毎日。アンドリューのくぐもった声が歌うのは、日々の生活です。離ればなれになった家族が思うのは、故郷のこと…。[9] Eyes of Ireland では、残された老人が、遠くへ行った娘・息子たちを歌います。「あの港から旅立つなら、故郷は見納めなのさ」。

 天国=アイルランドを後にして、新しい土地でそれぞれの生き甲斐を見つける家族。弾む旋律の5分のインストを挟んで、一日の終わりが歌われます。時代を越えて継いでいくもの ― アンドリューの家では、1時間の燃える蝋燭を囲んで、故人の想い出を語り合ったそうです。最後は、船に揺られる波の音がいつまでも続き、そして消えていきます。

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黒い安息日

Black Sabbath

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

1970年2月13日の金曜日に発表されたデビュー作。

 1960年代サイケ・ロックをベースに、暗黒性と重量感を、異様に増大させたサウンドを構築。後に「ヘヴィ・メタル」と呼ばれる音楽の、礎となった作品だ。

 土砂降りのSE、鐘の音。「俺の背後に立つ影は何者ぞ?」 「赤い目をしたサタンが俺に狙いを定めた!」…黒魔術をイメージに取った、雰囲気抜群の詞。重いだけでなく、極めて覚えやすいギター・リフ。バンド名を冠したオープニング曲は、現在も代表曲であり続ける。

 天才リフ・メイカーと賞されるアイオミのギター。甲高い「悪魔の叫び」のような特徴的なオジーの声。当時「Doom Rock」と呼ばれた、鉛色の質感を生む、重量級のリズム隊。実は優れた作詞家でもあるオジーの存在は、バンドにとって欠かせない要素である。その後、様々なメンバー変遷を経ながら、多数の優れた作品を残すが、「結成時の編成」=オリジナル・サバスを一番と評す人が多いのも納得である。

 アルバム全体を見渡すと、まだ普通のブルーズ・ロック曲が残っていたりもするが、バンドのイメージを決定付けた「黒い安息日」を聴けば、もう言葉はいらない。優れた音楽集団であるから、「魔法使い」「N.I.B.」など、後のライヴ定番曲もあるし、シングルB面だったボーナス曲「悪魔の世界」でさえ、十分に聴き応えがある。同年9月には、もう次作「パラノイド」がリリースされるのだから、この完成度は奇跡的。ロック史上に残る、不朽の名作である。

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The Spirit: Live

Magnum

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

代表曲「Sacred Hour」の現アレンジが聴けるライヴ盤。

1991年のライヴ盤。内容は、19年間の集大成とも言える「Best Live」。

初期の名曲が集中する 1978~1983年のスタジオ音源は、残念ながら音質がそれほど良くない。このため、ヨーロッパではベスト盤代わりにこれ買う人が多いそうで、ライヴ盤としては珍しく売れている。

このベスト盤のハイライトは最後から2番目(M-14)の代表曲「Sacred Hour」だろう。感動的なキーボードのイントロでバンドの顔とも言える曲だ。

楽曲の構造が複雑なため、今までに何度かアレンジが変わっていて、完全に固まったのが、発売から9年後のこの時期である。オリジナルよりも若干速度を落として、雄大な雰囲気を出し、ヴォーカル・ラインも多少変わった。効果は劇的で、オリジナルよりも数段上を行くものに仕上がっている。メンバーも気に入ったようで、以後、一度もアレンジに変化は起きていない。

荘厳・ヨーロッパ的・ドラマティックな名曲で、特にイントロのキーボードの調べが素晴らしい。スピリチュアルな歌詞も◎。今までにCDを1,000枚以上聴いてきたが、「世界で一番好きな曲は何か?」と訊かれたら、僕は、間髪を入れず「Sacred Hour (The Spirit-live)」だと答えるだろう。

その他にも、ファンの大合唱が聴けるタイトル曲「The Spirit」、オープニングを飾る緊迫感に溢れた「Vigilante」、デビュー曲「Kingdom Of Madness」など、名曲がずらりと顔を揃える。ベテランらしい呼吸の合った演奏で、くり返し聴ける名盤である。

スタジオ盤の代表作「On a Storyteller's Night」と並んで、ロック・ファン必聴!

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ブランド・ニュー・モーニング

Magnum

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

復活第二弾は、『Sleepwalking』 を思わせる重厚な秀作。

 HARD RAIN を経て再結成された MAGNUM。復活第二弾・2004年作品がこれ。通算では12枚目に当たるが、HARD RAIN も実質 MAGNUM と考えれば14枚目、ということになる。日本盤は、非常に貴重な Bonus Track [10] Dreamland (4:37) を収録。

 作風だが、やや明るいめだった前作よりはダークで MAGNUM らしい。Music For Nations からリリースされた9枚目『Sleepwalking』に近い感じだ。英国のストーリー・テラーことボブ・カトレイの男性的な声も健在。

 以前よりマーク・スタンウェイのキーボードが強調される曲もあり、初期の華麗なプログレ・ハードまでは行かないが、古くからのファンもある程度納得するであろう音作りになっている。

 1曲目のタイトル・トラックが非常に良い曲なので、久々に満足行く作品だ。結構スローなナンバーなのだが、緊迫感のある歌い上げは、「あの」 MAGNUM そのもの。頭3曲はどれもなかなか良いので、前作よりも明らかにクオリティは高いと言える。

 また、9曲目には10分近い大作もあるなど、じっくり作り込んだ内容となっている。ボーナス曲を含めても全10曲は少ない感じもするが、1曲1曲の完成度が高いため、物足りないということはない。

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ジ・イレヴンス・アワー!

Magnum

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

コンパクトかつハードになった、スタジオ・アルバム第4作。

 1983年発表のオリジナル・アルバム第4作。前作は「Sacred Hour」など壮大なオーケストレーションが印象的だったが、本作はそれに比べるとコンパクト且つハードになっている。

 楽曲の目玉は1曲目の「The Prize」。アコースティック・ギターの速弾きで始まり、2ndヴァースからバンド演奏が加わって一気に盛り上がる。♪太陽の下では秘密など持てないと歌うスピリチュアルな詞が印象的。メイン・メロディーも良いが、何と言ってもイントロのA.Guitarのフレーズが素晴らしい。トニー・クラーキンが本当に優れた作曲者であることが分かるだろう。

 アルバム・タイトルの「11時」は、世界が終わり(12時)に近づいているという意味を込めたそう。核戦争の「カウントダウン時計」の様なものだろう。ハードな曲が多いと書いたが、メロディーは決して疎かになっていない。代表作と言われる次作「On a Storyteller's Night」へ通じる、英国的かつ勇壮なマグナムの「ブレイク前夜」が聴ける。

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ドラコニアン・タイムズ

Paradise Lost

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

英パラダイス・ロストの5作目、1995年作品。

 Vo - ニック・ホームズ率いる英国ゴシック・メタル・バンドの5作目。1995年作品。ポニーキャニオンから出ていた日本盤は、2011年現在でも、THE SISTERS OF MERCYのカヴァー「Walk Away」を収録する唯一のエディションだ。

 G - グレゴア・マッキントッシュによる陰りのある旋律に、「吼える」デス・ヴォイスが乗る。デス系・ゴシック・メタルの一つの完成形と云われる。「咆哮」がダメな人は、普通に歌う次作 『One Second』 をお勧めするが、この荒々しい雰囲気と美旋律の融合はこのアルバムならではの物。

 美しいピアノのイントロでスタートするオープニング曲 1.「Enchantment」 はファン、プレスに絶賛された目玉曲。苦悩する声で「Oooh... Like a fever! fever!」 と咆哮する歌い出しに、メタル・ファンなら聞き覚えがあるだろう。分厚いヘヴィ・リフは、爆音系ファンに受けそうだ。キャッチーな 3.「The Last Time」 はシングルにもなった。

 日本で人気を博したのは 8.「Yearn For Change」。ラジオCMでもBGMとして使われた。ラウドに吼える箇所と、ディストーションの掛った低音で ♪Life is all the pain we endeavour... と歌うメロウな箇所が交互に訪れる曲だ。個人的に好きなのは 6.「Shadowkings」。狂気に支配されていく曲で、♪脳の中で声がする、自由を求めている ♪探索が始まる、それは闇の王を燃やす燃料となる… と歌う。歪み切った咆哮で迫るヴォーカルがイイ。

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マンディリオン

The Gathering

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

女性ヴォーカルを擁するゴシック・メタル。

 オランダのゴシック・バンド:The Gathering。1995年3rd.アルバム。1st.「Always...」、2nd「Almost A Dance」ではそれぞれ別の男性Vo.及び女性Back Vo.が歌っていたが、本作より女性Lead Vo. 1人に固定された。「暗黒の歌姫」アネク・ファン・ガースバーゲンの伸びのある歌唱と、ヘヴィかつクリアなリフ、そして空間的なキーボードを以て、全く新しいゴシック・メタルを構築。ヨーロッパにセンセイションを巻き起こした。宗教儀式のようなそのサウンドは独特の魅力があり、ハマると抜け出せない。

編成はGuitar×2、Bass、Keyboards、Drums+Vocal の6人編成。リフはBlack Sabbath型でヘヴィなのだが、Key.が帯同するためクリアで、耳障りな感じは全然ない。ゴシックゆえ、基本的にスピードの遅い曲が多いのだが、アネクの手によるヴォーカル・ラインが多彩で飽きさせない。それと、曲によっては後半倍速になって盛り上がるものもある。インスト曲では民族的なリズムにチャレンジしたりして、カラーは同一だがバリエーションは豊富だ。妖しさと女性らしさを兼ね備えるアネクの歌唱は見事で、ヘヴィなバッキングを堂々と引っ張る。

楽曲のクオリティはほぼ完璧で、代表曲となった「Strange Machine」、「Eleanor」、カウベルのようなKey.のイントロが印象的な「In Motion #1」など、名曲多数。大作「Sand and Mercury」ではプログレッシヴ系バンド顔負けの構成美も見せる。

この、ビクターから発売の日本盤には、レアなシングル・オンリーの曲が2曲追加されている。「Adrenaline」、「Third Chance」のSingle Versionがそれ。どちらも非常に良い曲なので、買うなら是非日本盤をお勧めしたい。

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米テクニカル・メタル・バンドのデビュー作。1989年作品。

 しばらく邦楽ばかり聴いていて、久しぶりに知的な洋楽ロックが聴きたくなってきた頃だった…。90125 YESの再結成盤「TALK」のライナーノーツに、面白そうなバンド名・作品を発見した。マリリオン、クイーンズライチ、そしてこのドリーム・シアターだ。いずれも全く知らないバンドだったのだが、勧められるままに買ってみた「Brave」、「A Singles Collection」、「Empire」がいずれも驚くような名作だったので、それならば!とドリーム・シアターのコーナーに出向いたわけだった。「Images and Words」と「When Dream and Day Unite」の2作が並んでいたのだが、まぁ、年代順に、ということで、この作品を買ってきた。

 次作を聴くと霞んでしまうのは事実だが、この作品にはこの作品の良さがある、と言わせてもらおう!! ラブリエほど圧倒的な声量+声域があるわけではないが、オクターブ跳躍くらいは楽にこなすこのヴォーカルも、普通のシンガーよりはずっと音域が広い。伸びのある、クリーンな高音ヴォイスで、金属質の声が好きな人には、暖かいラブリエの声よりメタルらしくてお勧めだ。

 演奏隊は変わっていないのだが、次作とは作風がかなり違う。当初、 RUSHの後継者と紹介されたくらいで、割と詞がアメリカっぽい。お金や政治の話が出てきたり、名声を掴め!というお決まりの競争主義が出てきたり。 RUSH顔負けの哲学的な曲もある。全体的にスピード・ナンバーが多く、正確無比の高速カッティングなど、ギター・ヒーロー的なプレイが目白押しだ。歌メロに関しては、次作が凄すぎるので比べるまでもないが、黎明期の作品としては結構楽しめる。特にこのヴォーカル(チャーリー・ドミニシ)の声は個人的にかなり好きだ。

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スーツ

Fish

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

ケニヤの博物館に展示された、遺構1470番(※)には、3000年前とも言われる最古の人類の頭蓋骨が収められている。その数字を冠した Mr.1470 でアルバムはスタートする。狩りをし、森で食べ物を探していた人類が、今はスーツを誂(あつら)え、文明社会を生きている。♪僕らは愛することを学んだが ♪殺すことも学んだ ♪君はスーツを夢見るかい? ♪僕らは皆1470番の息子なんだ。……遥か3000年に思いを馳せる詞は、ポップになったとは言え、やはり文学を志向する元マリリオンのリードシンガーそのものである。

脱退した古巣・マリリオン時代に残した作品数に並ぶ、4作目。曲長は5分から7分。詞の量も変わっていないのだが、バックバンドが居なくなったからか、緩急の付いた展開は減った。似たキャリアを辿るフィル・コリンズに準(なぞら)える声も出るぐらい、ソロ・シンガー振りが板に付いて来たフィッシュである。

オープニング曲以外の目玉は2曲のバラード。[2]「Lady Let It Lie」と、[10]「Raw Meat」だ。「[[ASIN:B0000922EG Lady Let It Lie]]」はソロ・シングル最大のヒット曲となり、本国では名曲と讃えられる。静かで叙情的なヴァースと、陽気なスコットランド節のコーラスが組み合わさった曲だ。♪少年は皆少女に憧れ ♪少女は皆少年に憧れる ♪誰も自分になりたくないんだ、と歌う曲。思春期の真理を描いている?のかも知れない。

難しいのは「Raw Meat」である。生肉?!直訳の日本語なら曲のタイトルには成り得ない言葉だが、やはり言語が違うと、感覚が異なるな、と思う。「僕は生肉だ!」(さぁ料理してくれ) とでも言おうか。ステージに立って、常に批評され、評価を受ける側の葛藤を暗に歌にしている様子だが、比喩表現が余りに難しく、英語圏に3年住んでいた自分も、このレベルの英語になると太刀打ちできない。ライヴに招待されたインタビュアーが「今日の公演では『Raw Meat』が聴けなかった。あれは最高なのに!」と残念がる様子が公式サイトに掲載されている。「最後を飾るに相応しい、ハイライト」な曲だそうだ。

(※)KNM-ER 1470 (Kenya National Museum-East Rudolf): 1972年にリーキー博士夫妻が、ケニアのトゥルカナ湖東

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ID

ASKA

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

ダークでミステリアスなソロ・シングル。

チャゲ&飛鳥のASKA。1997年、ソロ4作目 『ONE』 からの先行シングル。木曜の怪談ファイナル「タイムキーパーズ」テーマ。

夜の街で、ミラーに映った顔が、ふと別の誰かに見える。人波の中で、自分自身が少しずつ失われていく… そんな現代社会が歌われる。ID=identification。「自分とは何か」を描く、高品質な旋律が印象的。

録音はイギリス、プロモ撮影はベトナムで、行われるなど、国際的な感覚で作られた作品でもあるという。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

ASKA (飛鳥涼) - 「ID (identification)」
1. ID (identification) - フジテレビ系『木曜の怪談ファイナル「タイムキーパーズ」』テーマソング
2. 風の引力 - JAL STORY '97 沖縄キャンペーン イメージソング
3. ID (Instrumental)
EMI Music Japan | TODT-3923 | 971Yen | 1997-02-05 | 4988006140332

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Recollections: A Tribute to British Prog

Asia、他

3:
☆☆☆☆☆
★★★★★

ペイン本人はPop/Progが大好きみたいで、エレガントな王道ソングとポップなシングル・ヒットが半々の選曲だ。ただ、カスレたパワー・ヴォイスの為、ダンディな英国声が多いProg-rockに、必ずしも合っていない。また、YES・アンダーソンのボーイソプラノはシャルロッテ・ギブソンという女性シンガーに助っ人を頼んでいる。低予算企画盤なので、「宮殿」のオーケストラ部分は淡々とキーボードで再現。ペイン派の間でも評判は程々だ(笑)。

太い声なので、元曲が高音の曲は抑も感じが出ない。低音で力まずに歌う曲の方が、元曲に似ている。一番良いのは、ひたすらメロウに歌うAlan Parsons Projectの「Eye In The Sky」だが、これはまぁ元が名曲だから。UKの「Nothing To Lose」は本人が好きだと何処かで言っていたので、順当か。

この人は、本人がやりたい音楽と、本人に合う音楽が、ちょっとズレてるんだよなぁ。Lana Laneの所のノーランダーと組んだ「Dukes of the Orient」も華麗で悪く無いが、楽曲の完成度と本人の熱いシャウトが見事にマッチした「GPS」の再結成を、自分は望みたい。

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ザ・ダーク<タワーレコード限定>

Metal Church

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

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ロックNIPPON 東海林のり子 Selection

Various Artists

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

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サイレント・ネイション

Asia

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

ウェットン「ぢゃない方」のエイジアと言われて来たこの編成だが、秀才ギタリスト:ガスリー・ゴーヴァンの参加により、アレンジに動きが加わり、意外な秀作に仕上がっている。ゴーヴァンは、続くプロジェクト「GPS」にも参加。ヘヴィ・メタル寄りに作風を変えるも、同じく優れた作品に仕上げている。勉強で行くか、音楽で行くか悩んだという彼のプレイに注目である。

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3rd「Blessing In Disguise」初のリマスターとなったタワー限定盤。オリジナル・マスターは、ヴォーカルが奥に引っ込んで、演奏が手前に聞こえる代物だったが。

リマスター盤は「これが同じ音源か?!」と驚く程、音質が向上している。

その後、3枚セットでもリマスターされているが、音質はタワー限定盤の方が一歩上だ。

マイク・ハウが加入し、社会的なベクトルも持つ歌詞を導入。テクニカル度を一歩進めたパワー・メタルは、一聴の価値あり。名曲「Badlands」を収録する他、9分の大作バラード「Anthem To The Estranged」も素晴らしい。

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Can't Hide [CD+DVD]

佐藤寛子 (タレント)

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

【グラビア・アイドル随一の歌唱力】ですね。Misia を思わせる、素晴らしい高音。こんなに上手いとは思わなかった…びっくりです。話し声は少しカスレているくらいですが、歌うとほぼ完全透明。同梱のPVでは余裕を持って歌っている様子が分かります。これは本気で予算を掛けてプロモーションすべき!!

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スタートライン

黒川芽以

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

本人主演の映画「学校の階段」主題歌。レーベルが変わっていますが、ケータイ刑事で秀逸なメロディーを提供していた遠藤浩二さんは無事続投。懐かしい音色のシンセと、目立ちすぎない16ビートが良い感じ。作詞は3曲とも黒川芽以本人ですが、結構センスが良く、クオリティは全く問題なし。元気に階段を疾走する感じが良く出ています。暖かい中に所々出てくる哀愁を帯びたパートが好きです。

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泪の海

黒川芽以

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

「ケータイ刑事 銭形泪」のOP曲「泪の海」のストリングス・バラード・ヴァージョンです。やや子供っぽくて暖かい歌声で、癒し系です。TVで使われたスピード感のあるヴァージョンは2曲目に収録。ただしホントにTVサイズで1分17秒。欲を言えばフル・ヴァージョンも作って欲しかったナ。アイドルの歌手デビューとしては予想以上に上手いです。

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スケルトン・スケルトロン

Tiamat

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

「北欧の暗黒星」ティアマットの1999年、6作目。Keyをフィーチャーしたメロウな「Brighter than the Sun」が出色だが、それ以外の曲はギター中心。前作より叙情性は抑えめだ。シンプルなアレンジが多くマニアック度は更に増したかも。日本盤ボーナス曲1曲追加。

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FREE [CD+DVD]<初回生産限定盤>

ERIKA (J-Pop)

4:
☆☆☆☆☆
★★★★★

スバル・軽「STELLA R2」のCMにヤられて、ERIKA≠沢尻エリカのシングル「FREE」を買ってしまいました。フランス美女がバッチリはまる、お姫様全開の衣装のせいです。美人なら、性格強気でも全然OKの、ただの面食いです。「♪君がいるだけで 僕は飛べるよ~」 の所がとにかく好きです。曲は、割とギター・ロックですね。C/Wはmusic.jpの曲。浮遊する不思議なメロディーでこちらもなかなか。

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テルーの唄<通常盤>

手嶌葵

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

「テルーの唄」には3タイプのアレンジが存在する。(1)つ目がこの“シングル”。シンセサイザーによる高揚感のあるバッキングで、約4分50秒。
(2)つ目が手嶌葵「ゲド戦記歌集」に収録の“歌集”。アカペラの比率がやや多く、ピアノのみの簡素なバッキングで、約4分20秒。
(3)つ目が「ゲド戦記サウンドトラック」に収録の“アカペラ”。演奏がなく、歌詞も1番と3番しかないのでその分短く、約2分30秒。

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