私はクリスマスにはいつもカラヤンの曲集を聴くのですが、これをみつけた時には絶句しました。よくもまあ、こんなキラ星のような名歌手たちの、しかもクリスマス曲ばかりを集めたものだと(録音したこと自体も素晴らしい)。そして予定されていたかのようにダブった曲は一つもないばかりか、定番曲はほとんど含まれている。
マコーマックの甘い声から始まり、もうすでに雰囲気満点。途中からコーラスが入り、どんどん変奏されていく。ちょっと調子っぱずれの鐘が短調ぽく鳴るのはご愛嬌。カルーソーはワーグナーを歌わないので私の守備範囲外のため、このCDで初めて聴きました。よく通る甘い美声はいかにもイタオペ向きです。ここでもアダムの名曲を披露。グノーのアヴェ・マリアは甘々のヴァイオリン独奏付き。レーマンの歌唱は女の愛と生涯を思わせる声でニヤニヤしました。カラヤン盤では最後にあって、ローソクの明かりから蛍光灯が点いたみたいになって現実に引き戻されるアレルヤが、このCDではちょうど真ん中に来て、ひと休みする感じ。オネーギンの深いアルトが素晴らしい。ポンセルのアヴェ・マリアもヴァイオリン付き。こちらも美声に絶妙な音域でヴァイオリンがからみ、テナー歌手がいっしょに歌っているみたい。ジングルベルはしゃべりばかりでちょっと興ざめ。最後はグルーバーで静かに締めくくるのですが、フレーズが切れすぎるのと鐘の音程が悪くて少し残念でした。しかし全体としてはホントに驚くべき内容でした。