オーケストラでは巨匠たちが意図趣向を凝らした演奏を繰り広げ、時はまさにナチスの巨大志向の時代にこのような録音があるとは。もともと衒学的であまり演奏者の個性を出すべきではない曲だけに際立った特徴もないのですが、声部の描き分けや曲の終わりのまとめ方など実際の演奏としての表現は納得感のあるものです。
ノイズもほとんどなく表現の細部もしっかりと伝わってきます。この曲の校訂者ディーナーの自信のあふれる演奏、ガンバはブッシュSQのパオル・グリュンマー!
蛇足ながら解説にこの曲の和名があって、「遁走曲奥義」の由。ドイツ語ではKunstしかないが、これを「芸術」や「技術・技法」ではなく「奥義」とした先覚者の選択には感服。