まず最初に告白しますが、実は私は「浄夜」と「グレの歌」、「ワルシャワからの生き残り」を除いてシェーンベルクが苦手です。ベルクは好きで結構聴くのですが(ウェーベルンもシェーンベルクよりは聴きます)、シェーンベルクはどうもとっつきにくい。でも、ペトレンコとベルリン・フィルの演奏なら聴けるかもしれない、好きになれるかも、そう思い購入しました。そして聴いてみた結果、まだよくは分かりません。ですが、ベルリン・フィルの恐ろしいほど上手い演奏(本当にどれも恐ろしいほど上手いです!)に、終始唖然とさせられました。これは何度も聴くうちに間違いなく好きになれると確信しました。「浄夜」はカラヤンのものが一番のお気に入りですが、ペトレンコの演奏はカラヤンより、やはり硬派な演奏に聴こえました。聴きやすさはカラヤンの方が上かと思いますが、この演奏の響きは本当に透徹していて、その緊張感が凄まじい。本当は「浄夜」という作品は、こういう緊張感の伴った作品なのかもしれない、と思いました。カラヤンの演奏が大好きなのは変わりませんが、こちらも大好きになりました。このセット、本来の聴き物はインフォメーションにもあるように「ヤコブの梯子」なのかも知れませんが、全曲聴いてみて一番印象が強かったのはコパチンスカヤと一緒に演奏したヴァイオリン協奏曲でした。この緊張感は本当に半端ありません。そして、ヴァイオリンもオケも尋常ではない技量とテンションで演奏されています。ただただ唖然とするばかりでした。もちろん「ヤコブの梯子」も素晴らしかった。まだ作品理解は足りませんが、それでも恐らくこの組み合わせ以上にこの作品を上手く演奏できる組み合わせはないだろうと感じます。「管弦楽のための変奏曲」はフルトヴェングラーがベルリン・フィルと初演していて(1928年だそうです)、カラヤンとの録音もありますし、オケにとっては一番こなれた作品かと思いますが、こちらはカラヤンより聴きやすいと感じました。まずオケがとにかく上手いです。こういった難解な作品はやはり演奏が上手いということが極めて大切だと、つくづく実感しました。録音もこの自主レーベルらしく、秀逸な音質です。日本語解説も楽曲解説から読み物まで充実していて、大変読みごたえがあります。苦手なシェーンベルクをもっと理解したいと強く感じさせてもらえる大変充実した素晴らしいセットでした。