最初、さてペトレンコのブラームス解釈はどんなものかな、と思いながら聴き始めたのですが、聴いているうちにそういったことよりも、ベルリン・フィルの素晴らしいブラームスに酔わされて一気に最後まで聴かされました。このオケは昔から本当にブラームスが上手いですよね。団員もインターナショナルになり、昔より無個性になったと言われるようになりましたが、それでもブラームスをやるとやはり「ベルリン・フィルのブラームス」だなと分かる。変わったところも沢山ありますが、変わらないものもある。伝統は今もしっかり受け継がれているのだと。ペトレンコ独自のブラームス解釈、個性といったものはそれほど強くは感じませんでした。かと言ってオケ任せかというとそうではない。一瞬たりとも緩むことなくしっかりと手綱は引かれ、高いテンションと強い緊張感のあるブラームス。きっちりとしたテンポでの古典的解釈の大枠の中で、息づくフレーズに対して呼吸するかの如くテンポが微細に伸縮する様には酔わされました。演奏は尻上がりに強い緊張感を帯びて、終楽章は大変充実したものになっているのもライブならではといった感じです。ホルンを除いた金管、トランペットとトロンボーンが完全にオケに溶け込んでいるところなどは神技的なバランス。終楽章最後のコラールで初めてその存在感を表すところには鳥肌が立ちました。1楽章の提示部の繰り返しはなく、オケの配置は古典配置です。解説書にある「マイニンゲンとベルリンにおけるブラームスの伝統」はとても興味深い読み物でした。録音も分離良く各楽器をしっかりと捉えていて秀逸。ベルリン・フィルならではの迫力あるサウンドが楽しめます。私は今年の来日公演のチケットは取れなかったので、このブラームスを実演で聴けた方々が羨ましいです。