この交響曲の出だしをこんな風に奏でる演奏は聴いたことがありません。すべての声部が完全に均一、そしてアタックがあるわけでもないがふわっと入るわけでもない、まるで水の塊ではなく濃い気体が一度に押し寄せてくるような、そしてその色は白ではなく複雑な色をしている(何色とは言えないけれども)。第1印象が強烈でした。続く本編の演奏は正統派そのもの。ロンドンフィルはホルンもコンサートマスターも素晴らしいソロを聴かせる。どのセクションも調和がとれた安定感のある演奏を繰り広げている。一箇所だけ音量を落としてニュアンスをつけるところがあるけれども、それもきちんと文脈に収まって違和感を与えない。いい録音でかつ王者の威厳で辺りを祓うかのような名演奏でした。