このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。
英米において、ビー・ジーズのオリジナル・アルバムでただ一つのNo.1を達成したのが本作だ。『SNF』のメガヒットの後に、重度のプレッシャーを感じながら作られたことは昔から言われていた。彼らの最高傑作とみる人もいるだろう。事実、サウンドは完璧だ。文句のつけようがない。シングルになった3曲もビルボードでNo.1になった。これ以上の結果はないだろう。
しかし、1979年2月の発売から44年になろうとしている現在、私がこのアルバムを通しで聴くことはほとんどなくなった。理由は、聴くと疲れるからだ。もちろん、年齢を重ねて耳も悪くなったことも一因だろう。1曲、1曲は実によくできているが、全部聴くとお腹がいっぱいになる感じだ。それは、バリーのファルセットのやり過ぎにある。3人ともファルセットで歌うことはできるはずだが、「失われた愛の世界」などは、私にはバリーの声しか聴こえない。3人で歌うスリー・パート・ハーモニーではなくなっているのだ。
当然、ライブでの再現も不可能だ。ユニセフ・コンサートでの「失われた愛の世界」は、レコードと同じにしか聴こえなかった。79年の6月から行われた『ノース・アメリカン・ツアー』では、「失われた愛の世界」はメドレーの中で一番だけ歌われたが、素晴らしいナチュラル・ヴォイスのハーモニーだった。アメリカで最後のNo.1シングルの「ラブ・ユー・インサイド・アウト」はついにライブで歌われることはなかった。No.1の曲なのにだ。
かつて大喧嘩の末に解散した彼らだが、原因は「エゴ」だったと発言している。リード・ヴォーカルをめぐってバリーと争ったロビンは、納得しているのか?と心配していたが、新しくなった解説には、『「この成功をみんなで喜んでいた。僕のソロ曲が入っているかどうかなんて問題じゃない」とモーリスは発言しているし、ロビンも同様のことを言っている』とあった。10年の月日は彼らをすっかり大人にしていたのだ。
最後に、一番のお気に入りは「哀愁のトラジディ」だ。STEPSのカバーも良かった。彼らの曲のなかでも間違いなく5本の指に入る。