カスタマーズボイス一覧

シャルヴェンカ: ピアノ協奏曲全集 / アレクサンドル・マルコヴィチ、他

クラシック音楽に傾倒して45年、当然名だたるピアノ協奏曲の名曲は耳にしてきたが、このシャルヴェンカの作品は、それまでのピアノ協奏曲の世界を一新してくれた。特にヴェルディのオペラを彷彿とさせる1、2番が素晴らしい。4曲とも短調作品で短調好きの私にはたまらない。無名なピアノ協奏曲の名曲としてはメトネルの3曲、ドホナーニの2曲、スタンフォードの2番、ステンハンマルの1番などが挙げられるが、改めて聴き直してみて、シャルヴェンカの4曲が有名な他のピアノ協奏曲を含め、最も素晴らしいと感じている。酷評をされる方もいらっしゃるようだが、感性は人それぞれ。まずは騙されたと思って聴いてみてほしい。

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クラシック王さんが書いたカスタマーズボイス

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2年ちょっと前から始めた室内楽曲探求も1000曲を超え、その中で特に短調作品の隠れた名曲を発掘してきた。だいぶ新しい出会いが少なくなった昨今、心ときめく名曲に出会えた。それがフィリップ・シャルヴェンカの2曲のヴァイオリンソナタだ。とにかく個性的で抒情的で痺れてしまった。シャルヴェンカは兄弟の作曲家で、3つ歳下のフランツ・クサヴァー・シャルヴェンカは素晴らしい4つの短調ピアノ協奏曲を残していて、私のコレクションでは同ジャンルのベスト10を形成している。一方の兄フィリップのヴァイオリンソナタも一気に名曲入りを果たした。複数の短調作品の名曲を残したのは、ゴダール、ブゾーニ、フックス、ボーエン、メトネル、ラフ、ルビンシテイン、レーガーが挙げられるが、そこにシャルヴェンカの2作品が堂々名を連ねてくれた。ヴァイオリンソナタ・ファンの方々、ベートーヴェン、ブラームスなどの有名曲に惑わされず、沢山の隠れた名曲を知ってほしいです。

天才指揮者という触れ込みに、どれどれと冷やかし半分に聴いてみた。春の祭典の冒頭、悩ましげなファゴットのソロがたっぷりと歌われていて、これは本物かと思いきや、弦の激しい返しのリズムで始まる乙女たちの踊りからテンポが上がり、ホルンの不協和音もありきたり。確かにほぼスコアを完璧に再生しているが、やや前のめりのリズム感、また指揮者の位置で聴いているような奥行き、広がりのない音質と、特に特別な演奏とは感じない。試しに私のベストであるコリン・デイヴィスとコンセルトヘボウ管の演奏を聴くと、ほぼ半世紀前のこちらの方が音の広がり、ヌケ、そしてパーカッションの圧倒的なダイナミックなどの点で優る。両者のタイミングは全曲で30秒しか違わないが、マケラの方がかなり早い感がする。その辺は指揮者の経験の違いではないか。他にシベリウスくらいしか世に出ていない段階で天才扱いは如何なものか。軽々しく天才というワードを使うのは本人のためにもならないのでは? むしろ音楽家に天才というワードは使うのべきではないと考えます。長く温かい目でその成長を見守るべきでしょう。成長なくして音楽家にあらず、これが私のモットーです。

グティエレスはあのボレットと同じキューバ出身のピアニスト。1970年のチャイコフスキーコンクールで2位になるも聴衆から彼こそ優勝だとブインーグが起こったとレコードの解説に書かれていた。その74年プレヴィンと録音したチャイコフスキーの第1番のCDが手元にあるが、未だに他の誰の演奏も寄せ付けない名演である。完璧なリズムとテクニック、そして硬質で透明なピアノにデリカシーたっぷりの曲想。ホロヴィッツ? アルゲリッチ? 全く比較にならない。世の中の殆どのクラシックファンがこの演奏の存在を知らないのだろう。45年のクラシックキャリアを持つ私にとってグティエレスは欠くことの出来ないピアニストなのだ。その彼と大好きなコンセルトヘボウ管の共演によるプロコフィエフとくれば言わずもがな。相変わらず硬質な響きとさえ渡るリズム。正にプロコフィエフの音楽こそグティエレスに相応しい。ピアノコンクールを題材にして話題を呼んだ小説(蜂蜜と遠雷)の本選課題曲にこの2曲が入っているので、プロコフィエフが苦手という人にも是非聴いてもらいたい名演である。

取り分け短調作品が大好きな私にとって、ミャスコフスキーは短調作品の宝庫。27ある交響曲では18、13ある弦楽四重奏曲では10が短調だから驚いてしまう。ただ内容となると、交響曲は仄暗いばかりだし、弦楽四重奏曲はやや無調気味で如何にも現代音楽風で馴染めなかった。ところがである。このヴァイオリン協奏曲ときたら人が変わってしまったのかと思うほど共感出来るかっこいい音楽なのだ。20分を要する第1楽章は緩急変幻自在、ソロの技術も素晴らしく、あっという間に終わってしまう。最も印象深いのが第3楽章冒頭。これからオペラでも始まるかのような劇的な音楽。凄いぞ!何が始まるんだ?と思ったらいきなりコミカルな民族調音楽に移行。これって音楽としてちゃんと繋がってる?首をかしげるほどの変化に思わず笑ってしまった。ミャスコフスキーにしてやられたという感じだ。第3楽章のみ聴き心地が少々悪いものの、前の2つの楽章は数あるヴァイオリン協奏曲の中で最上級クラスの音楽に違いない。これぞ真の隠れた名曲である。

エベーヌ四重奏団は1999年に結成されたフランスの新星であり、当CDはイギリス・グラモフォン誌の年間最優秀レコード賞と最優秀室内楽賞を同時受賞した名盤である。ラヴェルとドビュッシーは沢山のCDが出ているが、ことフォーレについてはなぜか極端に少ない。フォーレの白鳥の歌であり、最高傑作と言っても過言ではないこの作品について、音楽之友社の名盤大全でも単独では触れていない。弦楽四重奏曲には勿論沢山の名曲があるが、フォーレの作品は唯一無二の個性だ。その秘密は巧みな対位法と神秘的な和声にある。増4度の響きなのかな。例えばシベリウスの交響曲第4番の響き。特に神秘的な雰囲気を醸し出す独特な響きである。私がこれまで聴いた400曲余りの弦楽四重奏曲の中で、個性的という点ではナンバー1であり、内容的にもベスト5に入る超傑作である。作品121ホ短調の弦楽四重奏曲を知らずしてフォーレを、そして弦楽四重奏曲を語ることなかれ!

本来ならば超有名な1番から聴くのがセオリーなのだが、納品のタイミングでこのディスクの2番3番が先になった。短調大好きの私にとって3曲共短調なのがとても嬉しい。現時点では1番も聴いたが、個人的にはこちら、特に3番が一番好きだ。1番との決定的違いはフィナーレが長調か短調の点。楽章間の調性の相性があるのことを無視して言うと、1番と3番のフィナーレが入れ替わったら最高だ。短調大好きな私の独り言です。2番3番共に同じ二短調というのは気になるものの、1番に引けを取らない名曲として自信を持って薦めたい。3作品共に第1楽章が取り分け素晴らしく、短調ヴァイオリン協奏曲の頂点に君臨する大人の哀愁溢れる素敵な音楽である。

800曲余り集めた室内楽曲から、短調作品の隠れた名曲をピックアップする作業が一段落し、次はヴァイオリン協奏曲の短調作品に移行。取り敢えずラフからヴァインベルクまで30作品を聴いた中、エルガーが飛び抜けて凄い。作曲当時、献呈したクライスラーから好まれなかったといういわく付きの作品だが、全曲通してあらゆる点で行き届いた文字通り隠れた名曲だ。ヴァイオリニストだった作曲者の新しい試みも散りばめられている。韓国出身のカン・ドンスクの演奏も素晴らしい。元々シベリウスとエルガーは別のCDだったのが1枚になった。ニールセン、サンサーンス、ウォルトンと、カンの演奏に興味は尽きない。有名所、いわゆる4大ヴァイオリン協奏曲に敢えて行かないカンの選曲にも好感が持てる。

身長2メートル、体重100キロ超、肥満と不摂生により43歳で急逝したレーガー。私は50分を越える大作、弦楽四重奏曲3番作品74から入り、ピアノ四重奏曲、ピアノ三重奏曲を経てヴァイオリンソナタの世界に到達。手持ちシェネーベルガーの8、9番が気に入り、残る作品全て知りたいとこの8枚組を思い切って購入。その結果レーガーはメトネル、ラフと共にヴァイオリンソナタ三大作曲家になった。取り分け短調の1、5、6番が素晴らしく、更に素敵なイ短調の組曲まである。更に更に長調の作品も聴き流せない。もしやレーガーがナンバー1なのではないか?! ところで、8番はウィキペディアやアマゾン、タワレコの解説ではホ長調になっているのに、シェネーベルガーとこのワーリンのCDではホ短調と表示されている。偶然のミスだろうか。音楽を聴く限り長調のような気がする。私が拘る理由は、近い将来800を越える室内楽コレクションから、隠れた短調作品の名曲を紹介する本を出版したく、8番はそれに載せたいので、CDの表示が正しい方がありがたいんです。最後に決まり文句、レーガーを知らずしてヴァイオリンソナタを語ること無かれ!!

ジャンルを問わず短調作品を好む私にとってメトネルと言えばまず3つのピアノ協奏曲が思い浮かぶ。勿論全て短調。その魅力はトーザーとヤルヴィのCDでコメント済み。ヴァイオリンソナタ3曲のうち2曲が短調と知って物は試しと購入。この3番は演奏時間が46分とヴァイオリンソナタとしては異例の大作。取り分け室内楽の世界では大作にはかなりの確率で名曲が多い。40分越えは例えばリムスキー・コルサコフのピアノトリオやレーガーの作品74の弦楽四重奏曲。そして60分に迫るのがフローラン・シュミットの作品51のピアノ五重奏曲。勿論このメトネルの3番も素晴らしい名曲。冒頭何かに絶望したような悲しいスロー音楽。この作品はメトネルがお兄さんの死を悼んで作曲された。悲しみの中にロシアの民謡を思わせる旋律を融合させているため、とても親しみやすい。表題のエピカはお兄さんの名前ではなく、イタリア語で叙事詩という意味だそうだ。別のCDで同じカヤレイの弾く2番も40を越える大作で、珍しい変奏曲の形式を用いている。こちらは短調ではないが、1、3番に引けを取らない名曲である。ラフ同様にもっともっとヴァイオリニストの方々に取り上げてほしい真の名曲である。

昨年5月ベートーヴェンの弦楽四重奏曲14番との出会いから始まった室内楽収集もトータル800作品越え、うちヴァイオリンソナタは72。オネゲルやディーリアスまで取り寄せた。有名所ではバッハ、ブラームス、グリーグ、フランク、フォーレなどが印象に残るが、それら大家を圧倒するのがラフとメトネルだ。ずっと短調作品の名曲を探している私にとってラフの1、5番、メトネルの3番が現時点でのベスト3。ここに収録されているラフの1番ホ短調は冒頭いきなり悲しげなテーマで開始される。これだけで聴手を虜にしてしまう。この作品の前では先程述べた作曲家たちも黙ってしまうのではないか。ソロを弾く女流ヴァイオリニスト、カヤレイはラフの5曲とメトネルの3曲いずれも録音しているが、なぜほかのヴァイオリニストはこれらの名曲を取り上げないのだろう。もし作品自体を知らないとしたら、音楽家人生の半分いやそれ以上損をしているのではないか。損では済まないだろう。不幸と言い換えてもいい。ラフは弦楽四重奏曲、ピアノトリオなどにも短調の決定的名曲が多く、今私にとって最も重要な室内楽大家である。カヤレイに拍手!

スイス出身のラフは1822年生まれ。ほぼ同世代にはフランク、スメタナ、ブルックナーなどが名を連ねる。私の手元には弦楽四重奏曲8、ピアノトリオ4、ピアノ四重奏曲2、ピアノ五重奏曲1、ヴァイオリンソナタ5があり、量質共に大室内楽作曲家である。初めて手にしたのがこのディスク。短調好きの私はその半数が短調なので、その後すぐに8曲全曲を揃える。7番はシューベルトの歌曲と同じ美しき水車小屋の娘という名が付いている。このディスクの4曲のうち素晴らしいのはやはり短調の3番と4番だ。3番は冒頭から斬新な曲想に驚かされる。弦楽四重奏曲全体から見ても最も独創的な開始だ。アップテンポの陽気なフィナーレはモーツァルトが顔を出す。それを抑えて最高の名曲こそイ短調の4番。冒頭から疾走する悲しみの世界に惹き込まれる。フィナーレは叙情的なヴァイオリンソロで始まり、すぐに第1楽章冒頭の旋律が再現される。その後は長調と短調を絶妙に交錯させ、最後はハッピーエンドで幕を閉じる。別途投稿する予定のピアノトリオやヴァイオリンソナタにも短調の名曲が幾つもあり、かつてシューマンがショパンについて放った言葉、諸君、天才だ、脱帽したまえ!をラフにそのまま言い換えたい。諸君、天才だ、ラフを知らずして室内楽を語ることはなかれ!

スクリャービンやプロコフィエフなど、ピアノが弾けない単なる愛好家には難解なピアノソナタまで収集する私にとって、シューベルトについてはブレンデル、シフ、ペライアなど一流の演奏を聴いてもはまらず、正直死ぬまでシューベルトはいいやと感じていた。5年ほど前、まだネットを利用していなかった私は年に数回千葉の田舎から御茶ノ水のディスクユニオンに通い、不要なCDを処分したお金で新たな中古CDを購入していた。その日の目当てはバレンボイムでベードーヴェンの前半のソナタ。後半のソナタは名曲ばかりなので所有しているが、前半はかなり前に処分してしまったので買い戻しになる。するとバレンボイムの分厚いCDボックスを発見。何とバレンボイム75歳を記念してリリースされた39枚組のCDだった。勿論ベートーヴェンのソナタも全曲入っている。手持ちと重複するが輸入盤でかなり安かったので購入。そこにこれら一連のシューベルトも収録されていたのだつた。つまり聴こうと思って購入したわけではなかったのだ。何の思い入れも期待もなく聴いてみると目からウロコ、すっかりはまってしまい、その後1ヶ月以上も毎日聴き続けてしまった。特に初めて聴いた7、9、14、16番は超気に入ってしまい、逆にベートーヴェンに全く関心がなくなってしまったほど。更に20番の第2楽章はモーツァルトの幻想曲を思わせるドラマチックな展開でピアノソナタの枠を超えてしまった感さえある。これをきっかけに他の作品も収集。すると11番という名曲を発見。フィナーレはベートーヴェンの月光のフィナーレのアンサー音楽だ。それはともかくバレンボイム71歳の録音は細部まで神経の行き届いた、彼の思い入れのたっぷり詰まった最高の演奏だ。心から全曲録音してほしかったと思う。個人的にはバレンボイムのベストCDと感じています。

高校2年、コンドラシンのシェエラザード、デイヴィスの春の祭典を聴いてベルリン・フィル、ウィーン・フィル、シカゴ響に続く第4のオーケストラとして私のコレクションに定着したコンセルトヘボウ管とデイヴィスの初録音と認識している。私自身幻想交響曲は初めてだったのでこの演奏の良さが今一解らなかった。当時私は吹奏楽部でトロンボーンを担当していたので関心は第4楽章断頭台への行進のトロンボーンの超低音の出し方。本来下のB音より下の低音は理論上は存在しない音域だが、トロンボーンは自分がイメージすれば音域外の音もある程度は出せるという不思議な楽器だ。逆にイメージできなければ出せないわけ。このディスクではその超低音が良く聴き取れる。評論家兼作曲家の諸井誠さんが著書交響曲名曲名盤100で、バーンスタイン達の上を行く演奏と称えている通り、聴けは聴くほど味わい深くなる。さすがに春の祭典やシェエラザードと比較すると音質的には及ばないものの、だいぶ後にフランス音楽で売り出したデュトワとモントリオール響のスタイリッシュな演奏と対極にある骨太な演奏である。

シカゴ響の第9はレコードアカデミー賞を受賞した76年録音のジュリーニ盤が有名で、レコード入手当時高校2年だった私の愛聴盤だった。作曲家でもある諸井誠さんが著書交響曲名曲名盤100で絶賛していたのがきっかけ。しかし、私自身トロンボーンパートで全日本吹奏楽コンクールに出場した年で、早々にスコアを入手して練習材料にすると、案外金管セクションの音が聴こえない部分があり、やや欲求不満気味だった。後の82年録音のショルティ盤はジュリーニ盤を意識したと思えるほど金管セクションは完璧。一気に不満を消し去ってくれた。柔のジュリーニ、剛のショルティという印象か。但しショルティ盤は第1楽章はベストだが、ほかの楽章が散々。評論家のどなたかが第1楽章だけなら誰でも成功すると仰有ってらした通り第9の呪縛にかかってしまった。従ってここでの満点評価は第1楽章のみとします。蛇足だが第1楽章のテンポについて一言。最長のジュリーニが32分弱、ショルティとシャイーとテンシュテットが30分台。時々滅茶苦茶遅いテンポをとるマゼールとバーンスタインが珍しく29分台、ほかはもっと短い。これは完全に私の偏見だが、第1楽章が30分を越える演奏はまず外れはないです。

私個人としてはこれがアバドのベスト演奏だと認識している。アバドのマーラーはシカゴ響で76年の2番に始まり、79年の6番、80年の5番、81年の1番、84年の7番と続き、その後はウィーン・フィル、ベルリン・フィルとライブによるセッションを重ねた。3番はシカゴ響とのセッションの合間、80年9月に録音された。当時私は高校卒業後国家公務員の寮に住んでいて、輸入盤LPを今はなき秋葉原の石丸電気でいち早く購入。レコードを縦型にセットするステレオで聴いていた。第1楽章の途中で音質が変わるプレスミスがあったのを覚えている。とにかく演奏が素晴らしい。細部まで神経の行き届いた、オケの能力を最大限引き出した名演奏だ。当時アバドは47歳という若手。良くも猛者揃いのウィーン・フィルをここまでコントロール出来たと感心する。長い間この演奏に対抗出来るものは現れなかったが、私が世界一好きなロイヤルスコティッシュナショナル管弦楽団とヤルヴィのコンビが対等な演奏を聴かせてくれる。冒頭のテンポも響きも酷似していて初めて聴いた時驚いた。それはともかくデジタル録音最初期の名演奏名録音であるこのディスクは一生手放せない1枚である。

ピアニストでもあったメトネルが残したピアノソナタは14、同世代同郷のスクリャービンが9、プロコフィエフが10。数だけでなく、わかり易さも2人を凌駕している。5、7番が傑作として知られているが、私は最も古典的なスタイルの1番がお気に入りだ。本題のピアノ協奏曲はスクリャービン1、プロコフィエフ5。数はプロコフィエフが多いが規模としてはメトネルが上を行く。1、2番共に鮮やかなピアノソロで開始され、聴き手の心を鷲掴みする。シャルヴェンカと同じく3曲全てが短調作品。短調作品に名曲多し、室内楽だけでなくピアノ協奏曲でも私のコンセプトが証明された。現時点でピアノ協奏曲作曲家の最高峰を挙げよと問われたら、迷わずシャルヴェンカとメトネルの名を挙げる。これぞ隠れた名曲の真髄である。それらを取り上げる指揮者、ピアニストに敬意と拍手を送ります。

ヤルヴィはエーデポリ交響楽団と全集を録音しているが、私はスコティッシュナショナル管が大好きなので早々に4〜7番を購入。8番は中々入手できず、タワレコもHMVも注文と期限切れキャンセルを繰り返し、ヤフオクで漸く購入。7番レニングラードに続く戦争交響曲、スターリングラード攻防戦の犠牲者を追悼して書かれた。エド・ハリス、ジュード・ロー主演の映画スターリングラードは私が最も衝撃を受けた映画だ。そのイメージがそのまま音楽になったような暗く激しい内容。第3楽章はトロンボーンとティンパニーの協奏曲。愛聴しているハイティンクとコンセルトヘボウ管はさすがにトロンボーンはアップアップ。ヤルヴィはそれを意識したのかトロンボーンは完璧。私も高校2年トロンボーンパートで全日本吹奏楽コンクールの舞台に立っているので目まぐるしいスライドの動きが容易に想像できる。ヤルヴィに相当絞られたろう。造形的にはハイティンクの方が好みだが、技術的にはヤルヴィの方が完璧だ。私が世界一信頼するオケの実力を知る見本のような演奏である。

20年以上ベルナルト・ハイティンクによって世界屈指に育て上げられたオーケストラをイタリア人として初めて引き継いたリッカルド・シャイー。当初は賛否両論様々な話題を呼んた。私自身も特に76年以降のハイティンクの録音を最高峰と認識していたので、シャイーの演奏については懐疑的で、ハイティンクほど印象に残る演奏はない。そんな中私がベスト演奏と認識しているのがこの5番だ。第1楽章冒頭静寂を切り裂く金管セクションのコラール。バランスもハーモニーも完璧。ハイティンクの元ではこうはならない。ハイティンクの演奏、デジタル再録音の8、9番はコンセルトヘボウ管の特色を活かした重圧で生真面目な演奏なので、この2曲についてはシャイーよりも好きなのに、5番はやや角の取れたマイルドなシャイーがしっくり来る。ハイティンクは5番をウィーン・フィルとデジタル再録音していて、同じオケとしての聴き比べはできないが、私の記憶ではウィーン・フィルの演奏は特に印象には残っていない。シャイーの演奏は録音時期によって音質にバラツキがある。この5番や比較的録音時期が近いリストのファウスト交響曲などは素晴らしいのに、マーラーの2、3、5、6番などは違和感がある。特に5番の第3楽章のソロホルンは明らかにいつもと音色が違い、浮いてしまっている。同じマーラーでも7、9番は違和感のない演奏だ。シャイーの勇退後、ヤンソンスなどのライブ録音ばかりでコンセルトヘボウ管に全く関心がなくなり、その後同じロイヤルの称号の付いたスコティッシュ・ナショナル管を世界一のオケとして認識し、可能な限りのCDを収集。やはりハイティンク時代のコンセルトヘボウ管が懐かしい。現在は誰が音楽監督なのだろう。

1980年全日本吹奏楽コンクールを3ヶ月後に控えた高校2年の夏、書店でレコード芸術という雑誌に出会った。そこに大々的に取り上げられていたのがこのレコードだった。コンドラシンもシェエラザードもコンセルトヘボウ管も初めて知った。以来私のベスト演奏として揺るぎない。重圧な金管セクションのユニゾン、木管セクションの不安気なハーモニーに導かれるクレバースのヴァイオリンソロが聴き手をアラビアンナイトの世界ヘいざなう。こんな愛らしいヴァイオリン聴いたことがない。最も印象的で圧倒的なのが第2楽章3分半のトロンボーンソロ。3連符を連続ではなく、音の間を少し開けているのがセンス抜群。続くトゥッティもトランペットを食ってしまう凄さ。いつもは粘りがちな癖のあるトロンボーンセクションが別人のようなキレのある演奏を繰り広げる。この部分については私が知る限りの他の全ての演奏に見えないくらい水を開けている。正に圧倒的だ。唯一ゲルギエフが同じ方法を試みているが、ゆっくり過ぎてわざとらしい。コンドラシンの演奏で唯一の不満はフィナーレ。中間で一旦静かになるシーンでスネアのリズムが走ってテンポを外してしまい、ほかの楽器がどれに合わせようかチグハグな演奏になっていること。ライブではないのだから録り直して欲しかった。コンドラシンは78年旧ソビエトから亡命、それ以前にもコンセルトヘボウ管とライブ録音を残している。ラヴェルのダフニスとクロエやボロディンの交響曲第2番などが有名で、これからコンセルトヘボウ管を始め、他の西側のオーケストラとの共演が期待された。しかし81年3月7日、クラウス・テンシュテットとのトラブルで指揮者なしでアムステルダム空港に降り立ったハンブルク北ドイツ放送交響楽団からの突然の要請を受け、リハーサルなしでマーラーの交響曲第1番を指揮、その帰宅後心臓発作で急逝している。何とも残念な運命である。シェエラザードの出来からすれば、その後もコンセルトヘボウ管と沢山の名盤が生まれただろう。レコードの解説は諸井誠さん。氏の交響曲名曲名盤100、ピアノ曲名曲名盤100は、10代後半私のクラシック探究のバイブルだった。それから10数年後私が神奈川フィルハーモニー管弦楽団事務局に勤務した際、作曲家でもある諸井さんの作品が定期演奏会で取り上げられ、氏は神奈川県立音楽堂まで足を運ばれるという不思議なご縁があった。

アナログ時代の超名盤。デイヴィスとコンセルトヘボウ管は74年録音の幻想交響曲が初顔合わせと記憶している。これもかなり話題を呼んだようだが、その2年後の春の祭典は指揮者もオケも別物になった。勿論いい意味で。春の祭典は指揮者とオケの実力を知るベストな作品だが、ブーレーズ然り、ゲルギエフ然り、どこが凄いのかさっぱりわからない。音楽評論家の方々、デイヴィスの演奏を知らないのたろうか。初め聴いた時、冒頭のソロがファゴットだとはわからなかった。コンセルトヘボウ管のファゴットは独特の響きだ。高校2年の頃早速ブージー&ホークスのスコアを入手。冒頭から世界一の木管セクションが完璧なアンサンブルを奏でる。そして乙女たちの踊りの強烈な8分音符のリズム。コンセルトヘボウ管の8本のホルンは不協和音を完全なハーモニーとして成立させている。こんな響きほかに聴いたことがない。ゲルギエフですらグシャっと響きが潰れている。デイヴィスの理解の深さは比類ない。練習番号32番、ヴァイオリンの3拍目休符の16分音符、ホルンその他の8分音符のリズムが完璧で何度聴いても鳥肌が立つ。その後も完璧なリズムとオケの潜在能力に圧倒される。全体的な遅めのテンポもこの演奏の成功に大きく寄与している。テンポが遅いと細部のごまかしが効かないからだ。今改めて第一部を聴いているが、ホルンセクションは信じられないほど凄く、限界を超えている。75番から終結部へホルンの3連符の嵐が続くが、これもコンセルトヘボウ管ですらアップアップ。特に1stの高音が聴こえずこの演奏の唯一の不満だ。しかし他の演奏はほぼ全体に聴こえない。そしてもう一つの魅力が音の素晴らしさ。今から46年前の録音だが、これほど明瞭でダイナミックな演奏は他にない。3年後に録音されたキリル・コンドラシンのシェエラザードと共に、クラシック演奏史に燦然と輝く名演奏名録音である。ほかにも同じ収録曲のCDが数種類あるが、敢えてこのディスクにした理由は春の祭典が2トラック、つまり第1部、第2部以外余分なトラックがないため。MDは何ともないのに、ソニーのデジタルウォークマンはダイレクト録音するとトラックごとに一瞬音楽が切れてしまう。オペラもマーラーも未だMDに頼る始末。ペトルーシュカも15トラック、火の鳥は22トラック。デジタルウォークマン発売以来10年以上音楽のぶつ切れに悩まされている。

ドレーゼケの名前はハイペリオンレーベルで無名なピアノ協奏曲を200曲余り収集した際に知ったものの、手元に残るほどの作品ではなかった。今回は3作品とも短調作品なので1集2集両方を購入。短調作品に名曲多しという私のコンセプトを裏付ける結果になった。ベートーヴェンの作風を引き合いに出されているが、そんなことはなく、ドレーゼケの個性が完全に花咲いた名曲たちである。弦楽四重奏曲を集め出した当初は有名な作曲家の作品ばかり聴いていたが、現在は名前すら聞いたことがない作曲家の名曲を見つけるのが最高の楽しみである。ゲルンスハイム、スマイス、バルギール、プフィッツナー、ヘルツォーゲンベルク、モリーク、ラフ、レズニチェク。いずれも短調作品は100%名曲保証します。新しく広大な弦楽四重奏曲の世界が開けるでしょう。

聴き慣れたエベーヌ四重奏団の演奏は音響的にやや不満があったために購入。ファインアーツ四重奏団の演奏はこれまでにも幾つか聴いていて信頼が置ける。これも期待通り素敵な演奏だ。フォーレの室内楽作品はヴァイオリンソナタ1番以外全て短調作品であり、取り分け作品100番以降は名曲揃い。ラスト唯一の弦楽四重奏曲こそそれらの頂点に立つ不朽の名曲だ。室内楽ファンにとってフォーレは最高ランクの作曲家である。

この演奏冒頭のホルンの音を聴いた瞬間、私の中のオーケストラ序列を変えた名盤である。それ以来可能な限りのCDを購入。何しろレパートリーが広い! シベリウス、ブルックナー、マーラー、グラズノフ、ニールセン、プロコフィエフ、R.シュトラウス、ラフマニノフ、ショスタコーヴィチ。マイナーな作曲家を挙げれば切りがない。ドヴォルザークは7、8、9ばかり極端に有名だが、ロイヤルスコティッシュナショナル管弦楽団は全集で全曲に全力で取り組み、1、2、4、5番といった隠れた名曲を世に認知させてくれた。

昨年92歳で亡くなったハイティンクとコンセルトヘボウ管の代表的名盤である。70年代半ばから後半にかけてのアナログ録音の全盛期の録音。私は牧神の午後への前奏曲を聴くと今でもその天国的な美しい響きに鳥肌が立つ。更に管弦楽のための映像で自由自在に奏でる世界一の木管セクションにも脱帽する。コンセルトヘボウ管が世界最高峰のオケと世間に認識されたのは今世紀に入ってからのこと。みんなコリン・デイヴィスの春の祭典や、キリル・コンドラシンのシェエラザードを知らないのだろうか。これらの録音と共に、コンセルトヘボウ管の3大名盤と言い切ってしまおう。

若い頃からヴェルディのオペラに幅広く親しんできた私が、唯一の弦楽四重奏曲、しかも収集のコンセプトである短調作品と聞けば反射的に購入。冒頭悲劇的なオペラを彷彿とさせる旋律に秒で心を掴まれる。他にも2種類CDを購入したが、このエンソ四重奏団の演奏が最高だ。第1楽章の初め、主題提示のあと8分音符によるハーモニー進行。ここのアーティキュレーションと響きのバランス。全然違う! 全体的に楽器間のバランス、豊かなニュアンスなど、他の演奏はいらないとさえ感じる名演奏。この作品への思い入れの深さが伝わってくる。出会った頃、ステンハンマルの2、4、6番、グラズノフの4番、カバレフスキーの1番、サンサーンスの1番、フォーレのホ短調、シベリウスの短調2曲と共にベスト10に君臨した名曲である。因みに現在弦楽四重奏曲のコレクションは400以上あり、むしろ無名な名曲の発見に力を入れています。

若い頃からウィーン、ベルリン、コンセルトヘボウ、シカゴなど世界一流のオケの演奏に幅広く親しんでした私が、数年前からこのロイヤルスコティッシュナショナル管弦楽団を世界一と認識してきた。とてつもなく幅広いレパートリーと適応性、バランスと正確性を兼ね備えた品位ある金管セクション、無名な作品にも全力投球する姿勢等々、全てのオケが手本目標とすべき素晴らしいオーケストラだ。CDも滅多に聴かないバックスやルーセルまで取り寄せた。そこで出会ったドビュッシー。オケの実力はしっかり発揮されていてさすがとは思うが、更にその先を求めてしまうのはファンとしての厳しさか。実はドビュッシーについては、70年代後半に録音されたハイティンクとコンセルトヘボウによる名盤がある。取り分け牧神の午後への前奏曲と管弦楽のための映像は圧倒的な演奏だ。それらと比較すると、正確性ではこちらが優っているが、その分優等生的で面白さが不足する。その原因はオケと指揮者の距離。長年ハイティンクが育て上げたオケに対し、短期間に指揮者が変わるオケ、更にレコーディングで忙しいオケでは練習時間も限られるだろう。数年で指揮者が交代しても高い水準が維持できること自体凄いと思う。

80年代初め、ちょうどCDが世に出始めた頃、バレンボイムが今回と同じグラモフォンで録音したディスクを長年愛聴してきた私。数年前に録音されたシューベルトの一連のピアノソナタを聴いてシューベルト嫌いが一転、大好きに変身したので、期待大で予約までして購入したのだが。さすがに80歳と40歳の演奏を比較するのは酷というもの。願わくば油の乗り切っていたシューベルトと同時期に録音されていたら、旧盤を凌いでいたかも知れない。ともあれ、ピアニストと指揮者の二刀流で最も成功したバレンボイムに敬意を評します。

クラシック音楽に傾倒して45年、当然名だたるピアノ協奏曲の名曲は耳にしてきたが、このシャルヴェンカの作品は、それまでのピアノ協奏曲の世界を一新してくれた。特にヴェルディのオペラを彷彿とさせる1、2番が素晴らしい。4曲とも短調作品で短調好きの私にはたまらない。無名なピアノ協奏曲の名曲としてはメトネルの3曲、ドホナーニの2曲、スタンフォードの2番、ステンハンマルの1番などが挙げられるが、改めて聴き直してみて、シャルヴェンカの4曲が有名な他のピアノ協奏曲を含め、最も素晴らしいと感じている。酷評をされる方もいらっしゃるようだが、感性は人それぞれ。まずは騙されたと思って聴いてみてほしい。

私は短調作品を中心に室内楽を収集している。経験的に名曲が多いためで、ヨアヒム・ラフも8つの弦楽四重奏曲のうち4曲が短調。最も素晴らしいと思うのはイ短調の4番だが、この1番ニ短調は最も個性的で情熱的な名曲だ。緩徐楽章を除く3つの楽章はどれも速いテンポで一気に聴かせてくれる。ラフは他にもピアノトリオやヴァイオリンソナタなどに短調の名曲が目白押し。もっともっと人気が出て良い室内楽大作である。

中学2年でクラシック音楽に傾倒して以来45年。ピアノ、オーケストラ、オペラとかなりの作品を耳にしてきたが、レーガーという作曲家はおよそ1年前突然室内楽に熱中して初めて知った。ピアノトリオ以外にも6つの弦楽四重奏曲、2つのピアノ四重奏曲、複数のヴァイオリンソナタ、チェロソナタなど、室内楽の大家と言える。その中で一番好きな作品がこの作品2のピアノトリオ。後期作品のようなクセがなく、チャイコフスキーやサンサーンスの2番など正統的な名曲に肩を並べる名作。ヴィラ=ロボスと共に私が妙にこだわり続ける摩訶不思議な室内楽作家である。

42年前、コンドラシンとコンセルトヘボウ管のシェエラザードを聴いて以来、大好きになったR.コルサコフ。殆ど室内楽作品を残しておらず、このピアノトリオも失敗作として未完成。その後弟子によって完成される。第1楽章冒頭ほの暗い印象的なチェロの旋律に惹き込まれる。一番好きなのは15分を要するフィナーレ。バッハのクラヴィーア作品を思わせるピアノに導かれるチェロ、そしてテンポを少しずつ上げるヴァイオリンが情熱的な主題を奏でる。失敗作なんてとんでもない! 現在私の手元には117曲のピアノトリオがコレクションされているが、オンスロウ、ラフ、ラロ、ヘルツォーゲンベルク、フォーレ、アレンスキー、ラフマニノフ、レーガーなどの名曲を抑えて、ベスト1に君臨する。全曲で異例の40分を要する大作。この作品を知らずしてピアノトリオを語ることなかれ!!

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