カスタマーズボイス一覧

トゥ・フーム・イット・メイ・コンサーン / Bee Gees

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

世界デビュー後のビー・ジーズのオリジナル・アルバムは20枚(他にライブ・アルバムが2枚)になる。その中で自分にとって気に入らないアルバムの筆頭がこれだ。再結成後『2イヤーズ・オン』『トラファルガー』という充実したアルバムを発表してきた彼らが、まるで契約のために急いで完成させたような印象を受けるからだ。アメリカでの発売は、72年10月でポリドール最後のアルバム、RSOに移籍後の次作が73年1月である。今回新しくなった解説には、『書きためていた曲に手を入れて一挙に仕上げた』とあり、スケジュール優先で完成させたことを物語る。

シングルになった「ラン・トゥ・ミー」は、日本では前作「マイ・ワールド」ほどヒットしなかったが、その後のコンサートでは必ず歌われている。解説では『ロビンお気に入りの曲でビー・ジーズ版「フォーエバー・ヤング」といえる』とある。私にとっても時間が経つほど大好きになる曲だ。
「アライブ」はバリーのシンガーとしての実力を示す力作だが、バリー単独作品の「恋するボク」はいただけない。邦題もひどいが甘ったるすぎる。リンダの前でだけ歌っていればよいと言ったら怒られるか。3人の単独作品では、モーリスの「キメのために」が一番好きだ。モーリスらしい淡泊だが美しい曲だ。このセッションで去るジェフ・ブリッジフォードのドラムも良い。
その他「ほほえみの海」「アイ・ヘルド・ア・パーティ」「光を消さないで」等美しいハーモニーが聴けるが、どこか物足りない。彼らのサウンドは美しいだけではないはずだ。一方で「悪い夢」や「アラスカへの道」、「紙のチサとキャベツと王様」はリズミックで楽しくはあるが、決して傑作ではない。最後に「スウィート・ソング・オブ・サマー」のような曲は彼ら向きではないと思う。

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富士のくり丸さんが書いたカスタマーズボイス

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(全21件)

1968年以来のダイハードファンとしては、内容は珍しいものではなかったが、反ディスコ運動でのレコードの爆破は初見で腹立たしかった。しかし、全体的に非常に楽しめた内容だった。

ビー・ジーズの歴史を俯瞰してみると、彼等は成功の後に逆境が来るという経験を少なくとも三回繰り返している。世界デビューして大人気だったが若さゆえの69年の解散、再結成して復活したがヒットに恵まれなかった73、74年の静かな時代、75年からのアメリカでの快進撃を皮切りに時代の寵児となったフィーヴァー時代を経て、反ディスコ運動を端緒とした82~86年のグループ活動休止時代。

つまり彼等程浮き沈みが激しかったアーティストは稀であり、邦題の『栄光の軌跡』というタイトルは正直ふさわしくないと思う。

原題『How Can You Mend A Broken Heart』は解散時の悲しみを歌った曲のタイトルだが、弟たちを若い順に失い、一人残されたバリーの現在の心境を表したものだと言える。映画を観てそれがよくわかった。

ビー・ジーズが偉いのは、ロバート・スティグウッドやアリフ・マーディンといった周囲の援助を得ながらも、自分たちの曲創り、自らプロデュースする力で逆境を克服してきたことである。
彼等を知らない若い世代の方に是非ともこのBlu-rayを観て頂き、彼等の曲を聴いて頂きたいと思う。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

本作は、1991年に発売された。1987年に再活動してから2年ごとにアルバムを発表してきた。しかも89年はツアーも行っており、まるでアンディの死の悲しみを忘れるために仕事に没頭してきたように感じる。
本作の印象を一言でいうと、固いリズムに支えられた鋼鉄のアルバムというと言い過ぎだろうか。正直、全ビー・ジーズのオリジナル・アルバムで最も聴かなかった筆頭だろう。3人の中でバリーは最もR&B寄りの曲を好んで、また書いてきていると思うが、本作は最もバリーの好みが出ていると考える。

まず、タイトル曲「ハイ・シヴィライゼーション」だが、まるでヘリコプターのような前奏から始まる。パーカッションのリズムが強く耳に残るが、メロディは悪くない。今までにないタイプの曲としか言えない。
「シークレット・ラブ」は、彼ららしい親しみやすいメロディのイギリスで5位、ドイツで2位。ヨーロッパの他の国でもヒットした。
「ハッピー・エヴァー・アフター」は南国の香りがする、美しくゆったりとした曲で、私などなかなか癖になってしまうメロディだ。
「パーティ・ウィズ・ノー・ネーム」はバリー、「ディメンションズ」はモーリスのリードによる鋼鉄のように固いビートの効いたソウル・ナンバーというべきか。しかし、メロディの良さは目立っている。ビー・ジーズの大いなる強みである。
「ゴースト・トレイン」は、何ともユーモラスなサウンドとロビンの「ride on my ghost train」が耳に残る。
「ジ・オンリー・ラブ」は、バリーのソロの堂々たるバラードで、自分的には80年以降ではトップを争う名曲だ。曲のエンディングの「the only love one love that will not die~」のコーラスが特に好きだ。

ここで最後であれば気持ち良い終わり方だが、以降は鋼鉄のように固いビートの効いたソウル・ナンバーが3曲続く。すべてバリーのリードであるが、1曲1曲は悪くないが、まとめて聴くと正直同じように聴こえてしまう。オリジナル・アルバムで最も聴かなかった理由だ。
なお、本作『ハイ・シヴィライゼーション』は、イギリスで24位、ドイツで2位まで上昇したが、アメリカではチャート・インしなかったただ一つの彼らのオリジナル・アルバムだ。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

本作は前作から2年後の1993年に発売された。前作『ハイ・シヴィライゼーション』発表後、イギリス、ドイツ等をツアーしてそれなりに多忙だったろうに、ワーナー・ブラザーズから再びポリドールに戻っての発売である。ワーナーでの3作は、世界最大の市場であるアメリカにおいては、商業的に成功しなかった。捲土重来を期しての復帰だったろう。しかし、結論から言うと商業的には、本作『サイズ・イズント・エブリシング』もまた成功とは言えない結果であった。

しかし、内容は前作のような鋼鉄のサウンドではなく、彼ららしいバラエティに富んだ快作だと思う。

どういうわけか、後半にお気に入りが並んでいる。
「分かちあう恋」は、ロビンの悲しげなヴォーカルとバリーのかぶせるようなヴォーカルのコラボが実に素敵だ。
「君のためなら」は、面白くて軽やかなバリーの歌が楽しい。後半は何というか、「アー」というバリーの低い声に催眠効果を感じる。
「高く、遠くに」は、モーリスがリードをとった中で最も良い出来ではないか?
「堕天使」は、80年代のロビンのソロのような、打ち込みのリズムをバックにロビンがやりたいように歌っていて楽しい。

そして、一番のお気に入りは「誰がために鐘は鳴る」だ。バリーのファルセットの出だしに、サビはロビンのあの伸びやかで悲しげなヴォーカル。80年代以降で「ジ・オンリー・ラブ」と並ぶ大好きな曲。最高である。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

『スティル・ウォーターズ』は,1997年に前作から4年ぶりに発売された。1981年の『リビング・アイズ』の商業的な失敗以来、アメリカでは彼らのオリジナル・アルバムが売り上げ面で成功することはなかった(68位の『ONE』が最高)。ところが、本作は初登場11位(最高位)で、「Fever Again」などと雑誌に掲載されたりした。また、イギリスやアメリカで色々な賞を受賞した。「ロックン・ロール・オブ・フェイム」の殿堂入りも果たした。彼らのようなポップスと括られるようなグループでは初めてではないか?

シングル「アローン」は初登場30位台で、大ヒットかと期待したがトップ20にも入らなかった。残念ながら70年代半ばから80年までのアメリカでの大人気は戻らなかった。しかし、よくカムバックしたと思う。ちなみに、イギリスではアルバムは2位で、シングル「アローン」は5位まで上がりヨーロッパ各国でもヒットした。

このアルバムは12曲収められているが、モーリスが歌う「もっと近くに」以外はすべてお気に入りだ。中でベストを選べと言われれば、バリーの感情を込めた歌とファルセットのコーラスが素晴らしい「恋する者の祈り」と、ロビンの声が何とも魅力的でメロディの広がりが素晴らしい「アイ・ウィル」が双璧だ。後は重いリズムの「アイ・サレンダー」やバリーの後ろで歌っているロビンのコーラスが実によい「瞳を閉じて」(『ビー・ジーズ・ファースト』に同じ邦題の「I Close My Eyes」がある。信じられないミス)、バリーの静かな歌が聴ける「オブセッションズ」がそれに続く。

本作『スティル・ウォーターズ』は,1987年に活動を再開した彼らのアルバムの中でも『ONE』と並ぶ傑作だと思う。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

本作は2001年に発売されたビー・ジーズ最後のオリジナル・アルバムである。最後とは、その時点ではそうなると決まっておらず結果として最後になったというのが普通だが、解説によると、本作のタイトルやジャケットの意味、レコード会社との契約、その他からこれで活動を終えるとの憶測があったそうである。もちろん事実はモーリスの2003年1月の急逝であるが、アルバムを通して聴くとその憶測は当たっている感がしないでもない。

なぜか?もうグループとしてやれることはやり切ったのではないかと思えるからだ。
本作のポイントはソロである。30年前の『2イヤーズ・オン』を思い出す。作曲のクレジットではなく実際に3人で作ったのは、タイトル曲と「シー・キープス・オン・カミング」「ウエディング・デイ」「エクストラ・マイル」だけではないか?と思える。クレジットでは「セイクレッド・トラスト」も共作だが。

モーリスは「マン・イン・ザ・ミドル」と「ウォーキング・オン・ザ・エアー」を一人で作り上げているし、ロビンは「デジャブ」「エンブレス」をピーター・ジョン・ヴェテッシとで完成させている。モーリスの一人多重録音は昔からだが、ロビンは他人との共同作業だ。ロビンだけイギリスに居住しているという、地理的な理由だけだろうか?
お気に入りは、「シー・キープス・オン・カミング」「ウエディング・デイ」「エクストラ・マイル」。3人の共作ばかりだ。ビー・ジーズはやっぱり3人が最高だ。

最後に、解説にはモーリス、ロビンとの別れに際しバリーの痛恨の思いにも触れている。ぜひ一読してください。

ONE

Bee Gees

5:

★★★★★

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

前作の2年後の1989年に発売された本作は、ビー・ジーズの歴史でも最大の悲劇といえるアンディの死を挟んで制作されている。
そのせいか、悲しくて美しい「ティアーズ」、アンディに捧げた「ウイッシュ・ユー・アー・ヒア」という悲しみの傑作が並ぶ。この2曲を聴くために、このアルバムを購入する意味があるとさえ思う。

タイトル曲「ONE」はアメリカで7位まで上昇した。実に10年ぶりのアメリカでのシングル・トップ10である。バリーは、この曲がラジオに戻してくれたという発言をしていた。しかし、アメリカでは最後のトップ10で、その後は20位内にも入れなかった。アルバムは最高位68位。アルバムにあわせてツアーを行ったにもかかわらずだ。アメリカでの冬の時代はなかなか終わりを見せなかった。

「TOKYOナイツ」というタイトルには驚いた。なんでも前作でカムバックして以来、日本のファンからいっぱい手紙をもらったそうで、そのお返しなのだろう。事実、この年の日本公演ではオーストラリアに続きこの曲が演奏されている。解説には、『ドイツではシングルとして発売された。東京の夜景のようにきらめくこの曲は日本でこそ来日記念盤として発売されるべきだった!』とあるが、全く同感である。

本作発売後に日本にも来てくれた。何と北アメリカ大陸以外では、1974年が最後で以降ライブをやっていなかったのだ。やっと念願の彼らのステージを観ることが出来た。その公演でオープニングを飾った「オーディナリー・ライブス」や、ロビンの哀愁感漂う「ボディガード」、ロビンがシャウトする「フレッシュ・アンド・ブラッド」がお気に入り。

アンディの死を3人がどんなに悲しんだか、アルバム・タイトルの意味、15年ぶりの世界ツアーに込めた思いは、新しくなった解説に詳しいので、ぜひ一読してください。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

本作は、実に6年ぶりのオリジナル・アルバムで1987年に発売された。6年の間、グループとしてはサントラ『ステイン・アライブ』だけだったが、ソロ・アルバムや大物アーティストとコラボして大活躍だった。詳しくは新しくなった解説をご覧ください。

ワーナーブラザーズに移籍後初ということで日本でも結構宣伝していたことを覚えている。なんと言ってもシングル『ユー・ウィン・アゲイン』がイギリスでNo.1になり、ドイツはじめヨーロッパで大ヒットしたことはうれしかった。しかし、アメリカではシングルもアルバムもさっぱりで、信じられない気がした。桁外れの成功に対する揺り戻しは、殊の外大きいということか。アメリカでの人気復活はあと10年待たねばならない。

プロデュースはアリフ・マーディンとビー・ジーズで、『メイン・コース』の復活かと大いに期待したが、「めでたさも中くらい」というのが正直な感想だ。
お気に入りは、「ユー・ウイン・アゲイン」はもちろんだが、「ESP」と「リブ・オア・ダイ」だ。「ESP」は、疾走するようなサウンドでコーラスは美しく、「これが彼らが目指す音だ」と思った。「リブ・オア・ダイ」は「Hold me like a child~I will stay with you」の部分が最高に美しい。もう1曲「オーバーナイト」は、モーリスのリードで珍しく彼がシャウトしている。ロビンやバリーの声もしっかり入っていて、3人でやっている感じが実に素敵だ。

少し残念なのは、私の好きなロビンがメインの曲がイマイチなのと、その他の曲がどこかのんびりした感じを受けること。60年代から感じていた、美しく優しく悲しい曲でもシャープなところが好きだったが、さすがのビー・ジーズも年を取ってるのだなと思った。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

本作は1981年10月の発売。前作から2年8か月ぶりだが、その間バリーが中心になって曲を書き、カール・リチャードソンとアルビー・ガルートンと一緒にプロデュースしたアンディ・ギブの『アフター・ダーク』とバーブラ・ストライザンドの『ギルティ』があったので、ビー・ジーズの楽曲は披露されていた。特に『ギルティ』はバーブラのアルバムでも最大ヒットであり、79年に反ディスコ運動はあったものの、70年代半ばからの好調は維持されていると思われた。本作『リビング・アイズ』が発売されるまでは。

シングル「愛はトライアングル」はビルボードで30位止まり。慌てて出した第二弾「リビング・アイズ」は、アルバムとともにトップ40にも届かなかった。なぜか?反ディスコ運動は確実にビー・ジーズを排除する動きに繋がっていたのである。ラジオ局が彼らの曲をかけない宣言をしたそうだ。この辺りの経緯は、今回新しくなった解説に詳しいので、ぜひ一読してください。

本作は、所謂ディスコ・サウンドからの決別であり、ファルセットも1曲を除いて封印している。そしてロビンのあのリード・ヴォーカルが戻ってきた。モーリスも72年以来の歌声を聴かせてくれる。私のようなフィーバー以前から聴いていたファンは大喜びだったと思う。しかし、彼らは子供時代から歌を歌うことで稼いできた根っからのプロであり、本作の結果は不本意で無念であったろう。しばらくグループとしての活動を休止することになった。

お気に入りは「パラダイス」で、彼らにはこんな歌を歌ってほしかったと思える曲である。3人で歌っていて、ハーモニーが本当に素晴らしい。ロビンのソロでは「ドント・フォール・イン・ラブ・ウィズ・ミー」が好きだ。魂の歌というべきか。「ワイルドフラワー」でのモーリスの歌は彼らしく淡泊でさわやか。バリーは大作「ビー・フー・ユー・アー」で実力を示してくれている。唯一のファルセットで歌う「ソルジャーズ」も良い。
売れなかったが、『リビング・アイズ』は間違いなくビー・ジーズらしい好アルバムだ。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

英米において、ビー・ジーズのオリジナル・アルバムでただ一つのNo.1を達成したのが本作だ。『SNF』のメガヒットの後に、重度のプレッシャーを感じながら作られたことは昔から言われていた。彼らの最高傑作とみる人もいるだろう。事実、サウンドは完璧だ。文句のつけようがない。シングルになった3曲もビルボードでNo.1になった。これ以上の結果はないだろう。

しかし、1979年2月の発売から44年になろうとしている現在、私がこのアルバムを通しで聴くことはほとんどなくなった。理由は、聴くと疲れるからだ。もちろん、年齢を重ねて耳も悪くなったことも一因だろう。1曲、1曲は実によくできているが、全部聴くとお腹がいっぱいになる感じだ。それは、バリーのファルセットのやり過ぎにある。3人ともファルセットで歌うことはできるはずだが、「失われた愛の世界」などは、私にはバリーの声しか聴こえない。3人で歌うスリー・パート・ハーモニーではなくなっているのだ。

当然、ライブでの再現も不可能だ。ユニセフ・コンサートでの「失われた愛の世界」は、レコードと同じにしか聴こえなかった。79年の6月から行われた『ノース・アメリカン・ツアー』では、「失われた愛の世界」はメドレーの中で一番だけ歌われたが、素晴らしいナチュラル・ヴォイスのハーモニーだった。アメリカで最後のNo.1シングルの「ラブ・ユー・インサイド・アウト」はついにライブで歌われることはなかった。No.1の曲なのにだ。

かつて大喧嘩の末に解散した彼らだが、原因は「エゴ」だったと発言している。リード・ヴォーカルをめぐってバリーと争ったロビンは、納得しているのか?と心配していたが、新しくなった解説には、『「この成功をみんなで喜んでいた。僕のソロ曲が入っているかどうかなんて問題じゃない」とモーリスは発言しているし、ロビンも同様のことを言っている』とあった。10年の月日は彼らをすっかり大人にしていたのだ。

最後に、一番のお気に入りは「哀愁のトラジディ」だ。STEPSのカバーも良かった。彼らの曲のなかでも間違いなく5本の指に入る。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

前作『メイン・コース』で念願のアメリカでの成功を成し遂げたビー・ジーズだが、なんとアリフ・マーディンの起用が叶わず、カール・リチャードソンとアルビー・ガルートンとの共同プロデュースで本作を作り上げた。しかし、彼らは『ホリゾンタル』からプロデューサーとしてクレジットされており、それだけの才能を持ち合わせていたのだ。つくづく天才なのだなと思う。

このアルバム、いよいよ黒くなっていく。前作はまだ旧来のイメージも感じられたが、本作は振り切ってブラック・ミュージックに正面から取り組んだ感じだ。数あるアルバムの中で、最も黒いのが本作だ。バリーのファルセットは益々磨きがかかって文句を言わせない。当然、リード・ヴォーカルも彼の独壇場となっていく。ロビン・ファンの私としては、成功はうれしいが少し寂しかった。

「ユー・シュッド・ビー・ダンシング」が大傑作なのは言うまでもない。「偽りの愛」は3人でファルセットでハモッてるなと思えて微笑ましい。しかし第三弾シングルの「ブーギ・チィルド」はちょっといただけない。以前のインタビューでロビンが、『アース・ウィンド・アンド・ファイアーの大ファンでアース風の曲をやりたかったんだ』と発言していたが、シングルにまでしなくてもと思う。しかし「ブーギ」ではなく、「ブギー」が正しいと昔から思っているけど、どうなんでしょう?

その他お気に入りは、颯爽と地下鉄に乗っている気になる「サブウェイ」、「悲しませることなんてできないよ」は『Hear At Last Live』での演奏が素晴らしかった。「帰りこぬ日々」はブルー・ウイーバーがクレジットされているが、解説によると『ブルーのメロディに基づいてバリーが展開させた』とのこと。「ジャイブ・トーキン」の印象的なシンセサイザーの演奏は、本作でも「愛の侵入者」や「サブウェイ」でも顕著だが、ブルーの貢献度は本当に高いと言える。

最後に「ラブ・ミー」は、『最初バリーが歌おうとしてうまくいかず、ロビンに振った』と解説にあるが、もっとロビンに歌ってもらいたかったと、改めて思った。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

『アイディア』は5人組時代最後のアルバムだ。「マサチューセッツ」から聴き始めた私は、やはり5人組時代のビー・ジーズに愛着がある。特にビジュアル面では。
ヴィンスが抜けたのは、純粋にブルースがやりたかったからで喧嘩別れではない。バラードが大ヒットしたビー・ジーズには、リード・ギターの出番があまりなく物足りない思いをしていたことは、容易に想像できる。

前作ではヴィンスのギターが目立っていたのは3曲あったが、『アイディア』ではタイトル曲のみだ。そのタイトル曲での彼のギターは素晴らしく、ステレオとモノラルで違うプレイが収められている。そういうこともあって脱退したのだろう。

このアルバムは、イギリスとアメリカでは内容もジャケットも違う。英盤には、ヴィンス作でリード・ヴォーカルも彼が担当している「サッチ・ア・シャイム」がある。ギブ兄弟が作曲に加わっていない曲は、オリジナル・アルバムの中でこの曲だけだ。米盤ではこの曲の代わりに「獄中の手紙」が収められている。CD化の際に統一され両方収められた。ちなみに、68年当時の日本盤は両方入っており、「ジャンボー」まで収録されている。

アルバムの特徴として、豊かなオーケストレーションをバックにビー・ジーズの長所である美しいメロディの楽曲が並んでいる。「愛があるなら」「素晴らしき夏」「つばめ飛ぶ頃」「ジョーク」「白鳥の歌」である。この中で「ジョーク」を別格として、私が好きなのは「つばめ飛ぶ頃」だ。イントロのモーリスの美しいピアノ、感情を抑えた前半からサビの部分では一気に歌い上げるバリーの素晴らしいヴォーカル。ハーモニーをつけるモーリスも良い。

新しくなった解説に、この曲が『名高い詩人のワーズワースの詩「水仙」を冒頭に引用した史劇風の歌』とある。「白鳥の歌」もそうだが、ヨーロッパのきらびやかな史劇(観たことはないが)が目に浮かぶようである。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

このアルバム『ホリゾンタル』への思いは複雑だ。日本では『マサチューセッツ』というタイトルで、曲順、ジャケットを変えて1968年5月に発売された。英米が2月だから、半年近く遅れることが珍しくなかった当時としては早い方だろう。シングル「マサチューセッツ/ホリデイ」が大ヒットしたばかりの頃で、勢いに乗って売りたかったのだろうか?

しかし、「マサチューセッツ」をイメージしてこのアルバムを聴くと違和感を覚えるだろう。それだからか店頭にあったのは2年くらいであったと思う。私がオリジナル・アルバムを集めだして一番入手に苦労したのはこれだ(ロビンのソロやオーストラリア時代のものを除く)。74年の3度目の来日にあわせて再発された折に、やっと入手できた。ちなみにジャケは米盤に倣っていた。ややこしいのは同時に再発された『アイディア』は、英盤に倣っていた。当時の宣伝では「オリジナルで再発」としかなってなかった。英米でジャケが違うなんて知らなかった。

大きな特色は、ヴィンス・メローニーのブルースっぽいリード・ギターが目立っていることだ。「レモンは忘れない」「変化は起こった」「アーネス・オブ・ビーング・ジョージ」等、何れもロック色が強く、バリーのソウルフルなヴォーカルが印象的だ。「レモンは忘れない」ではモーリスのピアノも情熱的で耳に残る。
一方でロビンは、「そして太陽は輝く」「リアリィ・アンド・シンシアリィ」で美しく悲壮的な歌を聴かせてくれる。バリーとロビンという稀有なヴォーカリストを抱えているのは、ビー・ジーズの大きな財産だ。

最後に、解説に『「デイ・タイム・ガール」の冒頭のヴォーカルは誰なのか、バリー派とモーリス派に意見が分かれる』との記載がある。実は、メーリングリストで仲良くなったファン同士で話した時に、議論(?)になった。私は絶対モーリスだと思う。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

日本では英米より半年後の1968年1月に、ちょうどシングル「マサチューセッツ/ホリデイ」がヒットしだした頃に発売された。今は亡き従兄の家でそのシングルを聴いて、「音楽って美しいんだ」と気が付いた。12歳だった。シンプルだけど美しいメロディ、ロビンのあのヴォーカルにすっかり魅せられた。その後、グループ・サウンズがこぞってビー・ジーズのカバーをしていた。この日本で、彼らが一番人気があった時期ではないだろうか?

自分でレコードを購入してステレオ装置で音楽を聴くのは、その2年後で、初めて買った彼らのLPは編集盤『ゴールデン・ダブル・アルバム』。シングルになった3曲と「誰も見えない」「ターン・オブ・ザ・センチュリー」「瞳を閉じて」はここで聴いた。6曲すべて気に入った。
オリジナルLPを買うようになったのはその後で、『ビー・ジーズ・ファースト』を購入して全曲聴いたのは1972年の秋ごろだ。すでに『To Whom It May Concern』を聴いた後だったので、正直その時点での印象はイマイチだった。初めて聴いてよかったのは、「イン・マイ・オウン・タイム」と「プリーズ・リード・ミー」くらい。このアルバムを名盤にあげる人が少なくないことが分かったのはずっと後だ。

新しくなった解説には、彼らのダイハード・ファンを自認する私でも、知らないことがかなり記載されている。曲にまつわることで驚いたのは、「誰も見えない」と「プリーズ・リード・ミー」だ。内容はご自身で確認してください(笑)。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

ネット時代になって、自分と同じビー・ジーズのファンとの交流が可能になった。メーリングリストで繋がり、たまには会ってビー・ジーズ談義をする。そこでどのアルバムが好きかと問うと『メイン・コース』の人気は断トツだ。なぜか?人それぞれだろうが、新旧のビー・ジーズ・サウンドが混ざり合って絶妙の味を出しているからだと思う。

その代表が「ブロードウェイの夜」だ。所謂R&Bテイスト溢れて疾走するようなサウンドに力強い歌声、しかしあくまで美しく、後半のスローパート部分のハーモニーはファルセットだ。エンディングに向けてのシャウトもそう。私はこの声が最初誰だかわからなかった。昔から彼らのハモリの高音部のパートは、地声が低いモーリスの裏声だったから彼だと思っていたら、バリーだった。バリーはとんでもない才能の持ち主だ!しかも超イケメン!ビー・ジーズに辛い評論家は、多分バリーに嫉妬している男だろう(爆笑)。

「ファニー」は美しいソウルバラード。ロビンもファルセットで歌っている。モーリスも加わったハーモニーは見事だが、いくつもの声を重ねライブでの再現は難しそう。事実この曲がライブで歌われることはなかった。

「カントリー・レーンズ」と「カム・オン・オーバー」は、ロビンのリードで旧来の彼らの持ち味が発揮され安心して聴ける。なお「カム・オン・オーバー」は、『Hear At Last Live』で聴けるライブバージョンが私は大好きだ。

このアルバムからブルー・ウイーバーがキーボードで加わり、ビー・ジーズ・バンドのメンバーが揃った。ブルーは単なるバンドメンバーというより、作曲面においても重要な役割を果たすことになる。事実「ソングバード」は3人+ブルーのクレジット。ブルーが参加した経緯とかマイアミ録音、その他の経緯は解説に詳しいので、ぜひそちらを読んで欲しい。
最後に「ブロードウェイの夜」が、『ブロードウェイの栄光を夢見て去っていった妻を追う男の歌』とは知らなかった。これも解説からです。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

日本ではビー・ジーズ3度目の来日に合わせて1974年10月に発売された本作は、ビルボードで178位とおそらく全アルバムでも最も売れなかった作品だろう。発売時の日本盤タイトルは『幸せの1ペンス』で、第二弾シングル曲に合わせたものだった。シングル、アルバムとも来日中に発売されたが、前シングルの「ミスター・ナチュラル」同様全くヒットしなかった。

しかし、新しくなった解説には1970年代後半の快進撃の端緒になったのは本作だとある。プロデューサーはアリフ・マーディンで、前作とはガラリと雰囲気が変わり、ソウル、ロック色の濃い作風となっている。リード・ヴォーカルはバリーが担うことがより多くなり、アルバムに1曲あったモーリスの出番はなくなった。更にキーボードは73年の来日でコンダクターだったジェフ・ウエストリーが務め、モーリスはオルガンのみ。リード・ギターのアラン・ケンドールとドラムのデニス・ブライオンとでビー・ジーズバンドの骨格が出来上がった。なぜモーリスの役割が減ったのか、解説には飲酒が原因ですでにスランプが始まっていたとある。そんなこととは当時想像もしていなかった。

売れなかったからと言って内容が悪いのではなく、私など数ある彼らのアルバムでもベストスリーに入るとさえ思っている。特にバリーのハスキーなカスカスのリード・ヴォーカルは、頂点を極めたとさえ言える。世間的には下り坂の真っ最中で、ヒット曲も途絶えていたので関心を持たれなかったのだろう。それは、ひとえにシングルの選定誤りにある。思い切って、彼らが作ったロック寄りの作品でベストと言える「ダウン・ザ・ロード」か、従来のイメージなら「愛の歌声」をカットすべきだったと考える。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

本作はアメリカでは前作からわずか3か月後の1973年1月に発売されている。後で分かったことだが、ビー・ジーズは前年の9月~10月にほぼアルバム2枚分を録音したという。しかし本作は8曲しか収録されていない。発売時、これには非常に違和感を覚えた。それまでは2枚組の『オデッサ』を除いて12曲から14曲入りだったのに。しかも「リビング・イン・シカゴ」以外収録時間は長くないのに。

今回新しくなった解説には、当時、映画出演の話もあった彼らを取り巻く状況が述べられており、『本作には一種のコンセプト・アルバムではないかと思わせる物語性がある』、『ウエスタン映画のサントラを意図したのでは』との記載がある。そうすると、8曲という収録曲の少なさも納得がいく。解説と対訳を読むと、執筆者のいう物語性が浮かんできて大変楽しかった。アルバム『ライフ・イン・ア・ティン・キャン』の新しい聴き方である。

お気に入りは、哀愁感漂う「ドント・ワナ・ビー・ザ・ワン」、ハーモニーが素晴らしい「リビング・イン・シカゴ」、ロビンのシャウトが印象的で、モーリスの弾くシンプルなエレクトニック・ピアノが美しい「メソッド・トゥ・マイ・マッドネス」である。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

世界デビュー後のビー・ジーズのオリジナル・アルバムは20枚(他にライブ・アルバムが2枚)になる。その中で自分にとって気に入らないアルバムの筆頭がこれだ。再結成後『2イヤーズ・オン』『トラファルガー』という充実したアルバムを発表してきた彼らが、まるで契約のために急いで完成させたような印象を受けるからだ。アメリカでの発売は、72年10月でポリドール最後のアルバム、RSOに移籍後の次作が73年1月である。今回新しくなった解説には、『書きためていた曲に手を入れて一挙に仕上げた』とあり、スケジュール優先で完成させたことを物語る。

シングルになった「ラン・トゥ・ミー」は、日本では前作「マイ・ワールド」ほどヒットしなかったが、その後のコンサートでは必ず歌われている。解説では『ロビンお気に入りの曲でビー・ジーズ版「フォーエバー・ヤング」といえる』とある。私にとっても時間が経つほど大好きになる曲だ。
「アライブ」はバリーのシンガーとしての実力を示す力作だが、バリー単独作品の「恋するボク」はいただけない。邦題もひどいが甘ったるすぎる。リンダの前でだけ歌っていればよいと言ったら怒られるか。3人の単独作品では、モーリスの「キメのために」が一番好きだ。モーリスらしい淡泊だが美しい曲だ。このセッションで去るジェフ・ブリッジフォードのドラムも良い。
その他「ほほえみの海」「アイ・ヘルド・ア・パーティ」「光を消さないで」等美しいハーモニーが聴けるが、どこか物足りない。彼らのサウンドは美しいだけではないはずだ。一方で「悪い夢」や「アラスカへの道」、「紙のチサとキャベツと王様」はリズミックで楽しくはあるが、決して傑作ではない。最後に「スウィート・ソング・オブ・サマー」のような曲は彼ら向きではないと思う。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてのものです。

LPは1971年9月に米で発売、例のごとく日本では遅れに遅れ翌年の1月にやっと発売された。初来日も決まって話題になり、そこそこヒットしたが、このアルバムの前後に発売された日本独自の編集盤『イン・ザ・モーニング』や『マイ・ワールド』に比べると小さいもので、当時のビー・ジーズのオリジナル・アルバムはあまり売れていない。日本だけではないが、彼らのアルバムはシングルがヒットしたか否かで売れ行きが左右される。このアルバムには全米1位の「傷心の日々」が含まれているが、なんと日本ではB面だった。なぜB面だったのか、新しくなった解説の中でも触れられており、目から鱗が落ちたような気がした。さらに、解説の中では初来日のことも記載されていて、行きたくて仕方がなかったけど叶わなかった高一の頃の自分を思い出した(東京や大阪の人たちがうらやましかった)。

私が一番好きな「ワーテルローに戻ろう」に代表されるように、サウンドは全体的に分厚いストリングスに覆われていて荘厳である。しかし、一聴しただけではこのアルバムの良さはわからない。
ソウルシンガーバリーの「イスラエル」は何とも黒っぽく盛り上がり方が凄い。ビー・ジーズに好意的でない今は亡き親友が、映画みたいだと珍しく賛辞していた。
「ボクはライオン」の高音のシャウトは、当時の解説にモーリスとあったので信じていたが、ロビンが正解と分かったのはかなり後だ。今回の解説に『ロビンの血を吐くようなソウルフルなシャウトを聴くと、彼らがよく誤解されるように「耳当たりの良い音楽」を志向していたのではないことがわかる』とあるが、至言だと思う。

このレビューは2022年11月23日に再発された日本盤CDについてです。

69年12月にバリーがビー・ジーズを抜けると発表して解散していた彼らが、70年の夏ごろに突然「アイ・オー・アイ・オー」と深夜放送で流れたときは本当に驚いた。しかもアルバムまで出た。シングル「アイ・オー・アイ・オー」は日本ではよくラジオで流れかなりヒットした(事実、「ジョーク」以来の売り上げで、その時点で「マサチューセッツ」「ジョーク」「ワールド」「ワーズ」に次ぐ)。

アルバムはロビン抜きなので、今までと随分違って聴こえたが、バリーとモーリスはカントリー好きなのが良く分かった。しかしバリーらしいソウルフルな「ダウン・バイ・ザ・リバー」や「アイ・レイ・ダウン・アンド・ダイ」は大傑作だ。一番好きなのは「スウィートハート」でエンゲルにあげたのはもったいない。「思い出を胸に」は初めて買ったシングルで忘れられない曲。バリーのセリフ入りの「君との別れ」はエンディングが今一つ気に入らないが、たぶん女性ファンは大好きなんだろうなと勝手に思う。
というように、どの曲も素敵でロビン抜きでもこれだけのものを作るとは、やっぱり彼らは只者ではない。「売れ行きなんか気にしなくていいよ。中身だよ」と言いたくなる好アルバムだ。

最後にドラマーのコリン・ピーターセンはなぜやめたのか疑問だったけど、解雇されたことが後年(私には)分かった。なぜなのか、この再発CDの解説に記載してあった。執筆者に感謝です。しかしコリンかわいそうだと思った。

LPは1971年5月に本国から半年遅れで発売、再結成後第一弾で当時発売を今か今かと待ち望んでいた。それまで2枚組のベスト盤を擦り切れるほど聴いて、ビー・ジーズにすっかり魅せられていた私が、初めて買った彼らのオリジナル・アルバムだ。以後30年間発売日にオリジナルアルバムを購入してきた。

内容は、従来のように3人で共作したのは3曲だけで、メンバーのソロが7曲、ロビンとモーリスの初めての共作が2曲と、解散していた時期に作られていたであろう曲が大部分を占める。よって3人の個性がよりはっきり表れていて、まだビー・ジーズ初心者だった私にとって、彼らを知る教科書のような思い入れが強いアルバムだ。

お気に入りは、3人のハーモニーが美しいロビンの「アローン・アゲイン」、シンガー・バリーの実力を発揮した「初めての誤り」、モーリスのライブで定番となった「レイ・イット・オン・ミー」、そして3人の共作では「恋のシーズン」が一番好きだ。当時高一だった私は原題の「Man For All Seasons」の「すべての季節を生きる男」とは、どういう意味なのかよくわかっておらず、本CDの解説に『有事に際してぶれない、何事にも立ち向かえる人』とあり、「なるほど!」と納得した次第。解説の執筆者に感謝。

このアルバムは自分にとっても古くからのファンにとっても特別だ。しかしビージーズにとっては、バリーとロビンの争いから思い出したくない作品のように感じる。「若葉のころ」が「ランプの明かり」を押さえてA面になったことで、ロビンは脱退した。CDの解説でその「ランプの明かり」を、『バリーは2021年のインタビューで「久しぶりに聴き直して心を打たれた。A面になるべき曲だった」との発言をしている。
バリーがこう言えるまでに要した年月に、この騒動が彼らの心に残した傷の深さがうかがえる。』とある。
私はこれを読んで涙がでそうになった。良い解説だ。
アルバムの内容は、タイトル曲やインストメンタル曲等今までにない側面を見せた傑作で、20歳を過ぎたばかりの若者が作ったことに今更ながら感心する。後世に残る作品である。

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