期待以上の音質でした。中でも、ラストのブルックナー9番が一推しです。
カイルベルトはブルックナーは6番、9番を偏愛していたようで、どちらも数種類の録音がありますが、9番については本BOX収録の1960年ザルツブルグでのベルリンフィルとのライブ録音がベストに思われます。ブルックナーの交響曲の内容は等しく自然の賛美と神への賛歌だと言いますが、この曲は一歩踏み込んで神の諸相を描写しているように思えるのです。第一楽章はさしづめ審判の神、第二楽章は世界を舞台とした狂言作者としての神、第三楽章は万物の源としての神、そして未完の第四楽章は慈愛と救済の神が描かれるはずだったのではないかと愚考します。第四楽章の代わりにテ・デウムを演奏しろとのブルックナーの遺言とも平仄が合うのではないでしょうか。といったことをつらつら考えさせる演奏でした。