
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン ソナタ&パルティータ(全曲)<通常盤> / 諏訪内晶子
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最近、古楽の雄の一人、ファビオ・ビオンディがバッハの無伴奏を発表したばかりで、対抗ということでもないでしょうが、1732年製のグァルネリ・デル・ジェズで諏訪内晶子が満を持して同曲を発表しました! 全体的に爽やかで、しなやかで、しかもよく考えられた演奏です。よく考えられたというと機械的にとか、意図的な過度な演出などと捉えられがちですが、諏訪内の演奏は極めて自然な演奏です。また、テクニックがあるのに、それを感じさせない演奏でもあります。 各楽章は、強弱を付けて立体的に聞かせます。ですから速いテンポの楽章も一本調子で弾くことはありません。例えば、パルティータ第3番の1曲目のプレリュードも音が耳を駆け抜けることなくしっかりと耳に留まります。 テンポは、各楽章の性格に合わせて弾いています。たとえば、先程のパルティータ第3番の1曲目のプレリュードは、ナイジェル・ケネディのように超特急で弾いたかと思うと、ソナタ第1番などはゆったりと余裕をもってブルーノ・ワルターのようによく歌っています。 楽章と楽章の空白は、若干長めです。これは、各楽章の性格を浮き立たせるのにとても役立っています。では各組曲全体を通して聞いてみた場合どうか?ちぐはぐに、バラバラに聞こえるのでしょうか?とんでもない!各楽章が相互に整合性をもってちゃんと一つのユニットとなっています。 みなさんが気になっているであろうパルティータ第2番のシャコンヌは、冒頭からとても丁寧に弾いています。1音1音がしかっりと聞こえるとともに音楽としてまとまりをもっています。決して技巧をひけらかすことなく、慈しむように弾いていて、とても洗練された演奏です。 シェリング、シゲティ、スーク、ミルシテイン、ルミニッツァ・ペトレ、クレーメルの旧盤等と並んで、名盤が一つ加わり、嬉しく思います。末永く座右に置いて何度でも聞きたい演奏です。
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h.Iwauchiさんが書いたメンバーズレビュー
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今までショパンの曲を多く録音してきた宮谷理香さんが、今回はショパンの初期作品であるうちの変奏曲を集めたCDをリリースしました。 ドイツ民謡「スイス少年」のテーマによる変奏曲 (遺作)は、序奏は真珠が粒を成して転がるような、蓮の葉の上を水玉が転がるようなピアノがとてもキレイで印象的です。序奏の部分で早くも心をつかまれました。 テクニックがあるのに、それを感じさせない自然な演奏となっていますね。 4手のための変奏曲 ニ長調(遺作)は、宮谷さんご自身による多重録音とのことです。二人のピアニストが演奏するのを聴くのも楽しいですが、この多重録音は宮谷さんが二人いるようで、まったく違和感もなく楽しい演奏となっています。 グレン・グールドもリスト編曲のベートーヴェンの交響曲第5番、グールド自身の編曲による ワーグナーの《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の第一幕への前奏曲で多重録音をしています。ちなみに、ヴァイオリニストのアルテュール・グリュミオーがモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ41番K.481とブラームスのヴァイオリン・ソナタ2番Op.100をヴァイオリンパートとピアノパートを一人で演奏した多重録音があります。 余談ですが、第4変奏?はモーツァルトの2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448(375a) の第3楽章に似たメロディーが聴こえてきます。 モーツァルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」の「ラ・チ・ダレム・ラ・マノ(お手をどうぞ)」による変奏曲は、序奏と第5変奏のしっとりとした演奏に心惹かれます。終曲の最後は、大きな音量で終わりますが、音がガツッんといって割れる演奏にはなっておらず、とても好感がもてます! 変奏曲「パガニーニの思い出」 イ長調(遺作)は最後の箇所で、優しく慈しむように終わるのに心惹かれます。 華麗なる変奏曲(エロールの歌劇「リュドヴィク」の主題による) 変ロ長調 作品12は冒頭の華麗な響きが印象的です。ここでも音量は大きいのに、割れることなく、うるさくありません!雨だれの冒頭のような音色と、途中、短調の箇所がありますがショパン特有の憂いを帯びた曲調でが現れてその片鱗が伺えてステキです。 「ヘクサメロン(6つの詩)」のための変奏曲 ホ長調は、子守唄のような穏やかな演奏に惹かれます! フルートとピアノのためのロッシーニの歌劇「シンデレラ」の主題による変奏曲
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長谷川陽子が満を持してベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲を録音しました。 第1番で深々としたチェロの一音が鳴った瞬間、鳥肌がたちました。スケールが大きく、自由で朗々たる演奏です。第1楽章の終わりに近いところで、静かなメロディーが出てくるところのなんと美しいこと! 第2番は、長谷川さんのじっくりと落ち着いた情感豊かなチェロとは対象的に生き生きとした松本さんのピアノが見事に融合した演奏です。 第3番は、全5曲の中でも最も有名な曲であるばかりではなく、古今東西のチェロ・ソナタの中の最高傑作といっても過言ではないでしょう。それだけに“聴かせる”演奏をするのは難しい曲だと思います。そのような状況の中にあって、とても端正で高い気品と豊かな音楽性が感じられる演奏です。 この曲では、第1楽章と第3楽章に耳が集中しがちですが長谷川さんの演奏で第2楽章の美しさに改めてその存在意義を感じました。この第2楽章があるからこそ、第1楽章と第3楽章が生きてくるのだと。 第4番は、冒頭からして有機的で、やわらかくツヤのある音色から生みだされる、あたたかくのびやかな演奏が素晴らしいです。また、優れたアンサンブルと説得力に満ちた演奏となっています。 第5番は、朗々たる演奏の長谷川さんと明確なタッチできびきびした演奏の松本さんの呼吸が見事に融合した名演です。第3楽章のフーガなどは後期の弦楽四重奏曲に通じるこの曲の持つ宗教性といったものをよく描き出した演奏となっています。 同時に収められている3曲の変奏曲も名演です。この3曲が収められているので、お得感があります。 全曲を通して、録音およびマスタリングの良さにも特質すべきものがあります。お二人の演奏の良さをうまく引き出しています。 ロストロポーヴィチ、フルニエ、シュタルケルといった名演奏と並んで、末永く座右に置いて聴きたいCDです。
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過去、バッハのオルガン作品集で誰も弾いたことのない、素晴らしい演奏を聴かせてくれた塚谷水無子が、5度目のゴルトベルクを録音しました。 冒頭、聴いた瞬間「アッ、キレイな音色だな!」と思いました。ヨーロッパの香りのする音色です。 テンポは若干落として弾いていますが、冗長になりません。むしろ、じっくり聴かせる演奏になっています。耳を駆け抜けることなくしかっりと留まってくれます。 間のとり方も素晴らしいです!例えば、第15変奏曲の最後の箇所の間のとり方の素晴らしいこと!ちょうど、フルトヴェングラーによる1947年の戦後復帰コンサートで指揮したベートーヴェンの交響曲第5番の第4楽章の最後の箇所の間のとり方と同じです!第15変奏曲のあの間のとり方を聴いたときに、私は思わずニヤッ、としてしまいました!「そうきたか!」と。 去年、辰巳美納子がチェンバロによる素晴らしい演奏を聴かせてくれましたが、今年は、塚谷水無子がベーゼンドルファーによる素晴らしい演奏を聴かせてくれました。去年、今年とゴルドベルクの当たり年です。 末永く座右に置いて何度でも聴きたい演奏です。
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最近、古楽の雄の一人、ファビオ・ビオンディがバッハの無伴奏を発表したばかりで、対抗ということでもないでしょうが、1732年製のグァルネリ・デル・ジェズで諏訪内晶子が満を持して同曲を発表しました! 全体的に爽やかで、しなやかで、しかもよく考えられた演奏です。よく考えられたというと機械的にとか、意図的な過度な演出などと捉えられがちですが、諏訪内の演奏は極めて自然な演奏です。また、テクニックがあるのに、それを感じさせない演奏でもあります。 各楽章は、強弱を付けて立体的に聞かせます。ですから速いテンポの楽章も一本調子で弾くことはありません。例えば、パルティータ第3番の1曲目のプレリュードも音が耳を駆け抜けることなくしっかりと耳に留まります。 テンポは、各楽章の性格に合わせて弾いています。たとえば、先程のパルティータ第3番の1曲目のプレリュードは、ナイジェル・ケネディのように超特急で弾いたかと思うと、ソナタ第1番などはゆったりと余裕をもってブルーノ・ワルターのようによく歌っています。 楽章と楽章の空白は、若干長めです。これは、各楽章の性格を浮き立たせるのにとても役立っています。では各組曲全体を通して聞いてみた場合どうか?ちぐはぐに、バラバラに聞こえるのでしょうか?とんでもない!各楽章が相互に整合性をもってちゃんと一つのユニットとなっています。 みなさんが気になっているであろうパルティータ第2番のシャコンヌは、冒頭からとても丁寧に弾いています。1音1音がしかっりと聞こえるとともに音楽としてまとまりをもっています。決して技巧をひけらかすことなく、慈しむように弾いていて、とても洗練された演奏です。 シェリング、シゲティ、スーク、ミルシテイン、ルミニッツァ・ペトレ、クレーメルの旧盤等と並んで、名盤が一つ加わり、嬉しく思います。末永く座右に置いて何度でも聞きたい演奏です。
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最近、古楽の雄の一人、ファビオ・ビオンディがバッハの無伴奏を発表したばかりで、対抗ということでもないでしょうが、1732年製のグァルネリ・デル・ジェズで諏訪内晶子が満を持して同曲を発表しました! 全体的に爽やかで、しなやかで、しかもよく考えられた演奏です。よく考えられたというと機械的にとか、意図的な過度な演出などと捉えられがちですが、諏訪内の演奏は極めて自然な演奏です。また、テクニックがあるのに、それを感じさせない演奏でもあります。 各楽章は、強弱を付けて立体的に聞かせます。ですから速いテンポの楽章も一本調子で弾くことはありません。例えば、パルティータ第3番の1曲目のプレリュードも音が耳を駆け抜けることなくしっかりと耳に留まります。 テンポは、各楽章の性格に合わせて弾いています。たとえば、先程のパルティータ第3番の1曲目のプレリュードは、ナイジェル・ケネディのように超特急で弾いたかと思うと、ソナタ第1番などはゆったりと余裕をもってブルーノ・ワルターのようによく歌っています。 楽章と楽章の空白は、若干長めです。これは、各楽章の性格を浮き立たせるのにとても役立っています。では各組曲全体を通して聞いてみた場合どうか?ちぐはぐに、バラバラに聞こえるのでしょうか?とんでもない!各楽章が相互に整合性をもってちゃんと一つのユニットとなっています。 みなさんが気になっているであろうパルティータ第2番のシャコンヌは、冒頭からとても丁寧に弾いています。1音1音がしかっりと聞こえるとともに音楽としてまとまりをもっています。決して技巧をひけらかすことなく、慈しむように弾いていて、とても洗練された演奏です。 シェリング、シゲティ、スーク、ミルシテイン、ルミニッツァ・ペトレ、クレーメルの旧盤等と並んで、名盤が一つ加わり、嬉しく思います。末永く座右に置いて何度でも聞きたい演奏です。
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2019年5月に亡くなった杉谷昭子によるピアノ名曲選の第3段です。杉谷昭子は、女性ピアニストとして世界で初めてブラームスのピアノ独奏曲の全曲を録音したり、日本人女性として初めてベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を録音。この中にはベートーヴェン自身がヴァイオリン協奏曲をピアノ版に編曲した演奏も含まれています。さらに、日本人女性ピアニストとしては、山根弥生子に次いで2番目にベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を完成させています。杉谷昭子は、このように大曲を録音するのと並行してピアノの小品集も録音していました。ピアノの小品集とはいっても、ピアノ本来の曲だけではなく、オペラアリア、歌曲、チェロなどの編曲も入っていてバラエティにとんだとても楽しめるCDです!オススメは、まず1曲目のリスト編曲によるシューマン作曲の歌曲集『ミルテの花』から「献呈」です。普通は原曲が速いテンポのせいか、そのまま速く弾くピアニストがほとんどですが、杉谷は2倍くらいゆったりと弾きます。初めて聞いたときは、違和感がありましたが、何度か聞いているうちにこのゆったりとしたテンポもありだな、と思うようになりました。シューマンのクララに対する愛が表面的なものではなく、とても深いものだと感じられるからです。次にオススメなのが、4曲目のプッチーニ作曲の『トスカ』からの「星は光りぬ」と5曲目のやはりプッチーニ作曲の『ジャンニ・スキッキ』からの「私のお父さん」です。どちらの曲も“オペラ歌手よりもオペラ歌手らしい”演奏で、間のとり方、強弱、音色の美しさが最高です!「星は光りぬ」はホセ・カレーラスを、「私のお父さん」はルネ・フレミングを彷彿とさせてくれます。次にオススメなのが、ヒナステラ作曲の『アルゼンチン舞曲』からの「粋な娘の踊り」です。曲の最後は、普通不協和音でグチャグチャと終わるのですが、杉谷の場合、明確にメロディ・ラインで歌わせているところに感激します!オススメの最後は、14曲目のチェリストのパブロ・カザルスで有名になったカタロニア民謡の「鳥の歌」です。“チェリストよりもチェリストらしく”、“カザルスよりもカザルスらしい”演奏です!「ピアノってこんなに歌う楽器なんだ!歌い方がハンパない!」と感激する演奏です!
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現在では、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」と同様にこの「無伴奏チェロ組曲」もガット弦を張ってバロック弓で弾いたり、モダンチェロでもバロック風に弾く演奏家が多くいます。しかしながら、このニーナ・コトワの演奏は、これらの演奏とは180度違います。キレイな女性が弾いていると想像するとガツン!ときます!骨太の分厚い濃い響で朗々と歌い上げて重戦車のよいに邁進していきます。カザルスの時代の響に戻ったようです。もちろんカザルスの演奏とは違いますが…。彼女が使用している楽器も影響しているかもしれません。楽器は、かつてジャクリーヌ・デュ・プレが使用していた1673年製ストラディバリウス“デュ・プレ”です。 組曲第1番のプレリュードの冒頭で'“ぶお〜ん”と変にアクセントを付けて弾く演奏家が多い中で、テンポでさり気なく弾く演奏に好感をおぼえます。この時点で変にアクセントを付けられると後の演奏を聴きたくなくなります。テンポは、早くもなく遅くもなく丁度いいものです。組曲第2番の4曲目のサラバンドは、テンポを若干落として朗々と深々と響かせます。組曲第3番の1曲目のプレリュードの重音の大きさに圧倒されます。音の洪水が怒涛のように押し寄せて来ます。3曲目のクーラントはテンポを若干早くとり、バリバリ弾いて来ます。一転、4曲目のサラバンドではテンポを若干落として低音豊かに朗々と弾いています。重厚さだけではなく、組曲第4番の5曲目のブーレでは軽やかに、さらに6曲目のジーグではさらにテンポを加速して楽しそうにいっきに弾いていきます。彼女のテクニックの素晴らしさを感じます。しかも、そのテクニックを感じさせないほど楽々と弾いていきます!同じことが組曲第5番の第4曲目のガヴォット、大5曲目のジーグにも言えます。組曲第6番の第2曲目アルマンドでは陰と陽をバランスよく弾き分けています。第3曲目のクーラントとは組曲第4番の5曲目のブーレと同じことが言えます。軽快な第6曲目のジーグで演奏は終わります。全体に曲によって重厚さと軽快さ、陰と陽を明快に弾き分ける、素晴らしい演奏です。サラ・サンタンブロジオの温かみのある演奏と双璧をなす演奏です。 モダンチェロで弾く「無伴奏チェロ組曲」の可能性を最大限に引き出した、いや、可能性はまだあるんだぞ、と教えてくれた演奏として絶賛したいです!
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デッカのインターナショナル盤によるエーリッヒ・クライバーの録音を集大成したCDが発売されました。この中の目玉商品は、なんと言ってもロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とのベートーヴェンの交響曲第6番《田園》とステレオ初期のウィーン・フィルとのモーツァルトの《フィガロの結婚》全曲です。 ベートーヴェンの《田園》は、モノーラル時代最高の演奏と言われたものです。今まで、何回か様々なレーベルから発売されましたが、どの盤も音が痩せていて貧弱で、高音がハイ上がりで、とても聞くに耐えない演奏でした。 聞いた瞬間「やった!これだよ!ついに理想の盤と出会えた!」と心の中で叫びました。テンポを比較的早めにとった流麗で自然な演奏で、音に厚みがありふくよかです。弦の高音もなめらかで、ヒステリックなところがなく、管楽器の美音にも感動します。インターナショナル化した現在のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との音と違い、いい意味でローカルな味わい深い“アムステルダム・コンセルトヘボウ”の響きを味わうことができて、とても幸福です。 ブルーノ・ワルターの演奏と双璧をなすものです。また、レ・プレイアードの演奏による弦楽六重奏盤(NMM070)以来感激した《田園》です。 《フィガロの結婚》はステレオ初期の録音ですが、やはり高音のヒステリックなキツさがなく、音が全体に厚みがあり、ふくよかで、滑らかです。歌手の歌も、前に張り出した感じがあり、流麗です。ウィーン・フィルにも言えることですが、今のウィーン・フィルの響きはインタナショナル化してしまい残念ですが、この頃のウィーン・フィルは、良い意味でローカルの味を残した艷やかな響きがあります。 リーザ・デラ・カーザ、シュザンナ・ダンコの歌声もリニューアルして素晴らしいですが、なんといってもヒルデ・ギューデンの歌のなんと艶めかしいことか! 《田園》にしても、《フィガロの結婚》にしてもリマスターの賜物です。 ボックスなので、高価で、不利なところはありますが、この2曲を聞くためでも購入して損のないCDです。何度でも聞きたいCDです。
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これまでに『パルティータ(全曲)』(ALCD1160)、『半音階的幻想曲とフーガ/イタリア協奏曲』(ALCD1133)とチェンバロで素晴らしいバッハの演奏を聴かせてくれた辰巳美納子が『ゴルトベルク変奏曲』に取り組みました。まず主題が聴こえた瞬間、チェンバロの美しい音色に心が奪われます。透明感と色彩感を兼ね備えたその豊潤な美しい音色に魅了されてあっという間に全曲を聴いてしまいます。各変奏曲とも表情豊かな演奏で、音色も多彩に変化します。テンポの設定も速からず遅からず自然で、各変奏曲にふさわしいものです。たとえば、第4変奏曲は若干テンポを遅めにとり、強弱を付けながら曲を立体的に聴かせます。それが作為的ではなく、自然に聴こえます。 辰巳美納子の指先を通じてバッハの音楽が自然に流れ出したかのようです。演奏者とチェンバロが一体となり、聴き馴れた『ゴルトベルク変奏曲』に新たな息吹きをもたらしてくれた演奏として、末長く座右に置いて何度でも聴きたいCDです。
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ナディア・ラブリーはカナダのケベック州の出身で、双子の姉妹SIMILIA(シミリア)というフルートとギターのデュオでも活躍していて、CDも4枚リリースしています。2009年に行われた高崎と東京のコンサートではチケットが完売になったとのことです。イギリスのクラシック・ギター・マガジンで「世界最高のフルートとギターのデュオ」と激賞されたそうです。 ナディア・ラブリーの木製のフルートはとても繊細で、琴線に触れる音色です。とても優しいバッハです。特に無伴奏フルートのためのパルティータBWV1013では彼女の特質が遺憾なく発揮された名演奏だと感じます。テクニックはあるのに、決してそれを表には出さず、美しくて美意識に終始した演奏です。優れた名盤が多い中にあって聞き惚れて何回でも聞いていたい演奏です。 このCDの特徴はなんといっても通奏低音にチェロと“ピアノ”が加わっているところです。“えっ、今のご時世チェンバロじゃないの!?”とお思いでしょう。実は私もそう思いました。聞く前はフルートがピアノに喰われてしまうのでは、と懸念していましたが、聞き進むうちにその懸念は一掃されました!ナディア・ラブリーの音色に寄り添うようにチェロ同様に優しく奏でられています。チェンバロで聞き慣れてきた耳にとっては最は“?”と思いましたが、CDを聞き進むうちに違和感がなくなってきました。このような静かな音色であればピアノもありだと思いました。もっともこの曲をピアノ伴奏で演奏している方もいらっしゃるわけですし、バッハのチェンバロ協奏曲をピアノでも弾くくらいですから不思議はありません。末永く聞き続けたい演奏です。
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ベートーヴェンと同時期のオルガン奏者兼作曲家であるミヒャエル・ゴットハルト・フィッシャーの編曲による弦楽六重奏版の交響曲第6番「田園」です。このフィッシャーはJ.S.バッハの孫弟子にあたる作曲家のようです。「編曲版?好きじゃないんだよね」という方いらっしゃると思いますが、そのような方々にもぜひ聞いていただきたい演奏です。ノンサッチからドミトリー・シトコヴェツキーの編曲兼指揮によるJ.S.バッハのゴルトベルク変奏曲の弦楽合奏版の名演がでており、グイグイ引き込まれて聞いた経験があります。それに匹敵する演奏だと思います。第1楽章、有名なメロディーが流れると同時に低音の分厚い響きがこのメロディーを支えます。収支この分厚い低音が曲全体をサポートしているように感じますが、それは低音を豊かにすることによってオーケイトラの雰囲気をだすという編曲者の意図と同時に編曲者のフィッシャーがオルガン演奏家でもあったためオルガン的な響きをこの曲に投影したからではないかと感じます。 演奏団体のレ・プレイアードは指揮者のフランソワ=グザヴィエ・ロトによって2003年夏に結成されたアンサンブル、レ・シエクル管弦楽団の弦楽セクションの女性6名からなる六重奏団です。 ヴァイオリン:レティティア・ランジュヴァル、カロリーヌ・フロランヴィユ、ヴィオラ:キャロル・ドファン、マリー・クチンスキ、チェロ:ジェニファー・ハーディ、アマリリス・ヤルチクというカッコイイお姉さま方です。女性だけのアンサンブルというとヴィジュアル系というイメジージがありますが、クレンケ四重奏団同様第1級のアンサンブルです。レ・シエクル管弦楽団の弦楽セクションの精鋭部隊といったところでしようか。オーケストラの曲を室内楽に編曲するとアンサンブルや演奏者の技量の優劣が目立つものですが、レ・プレイアードについてはそのような心配はありません。アンサンブルとしてのまとまりが良く、テンポも早くもなく遅くもなく、間の取り方もよいと感じます。個々の演奏家の音も伸びやかで美しく、リラックスして聞くことができます。何回聞いても飽きない演奏です。
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店頭の試聴器で初めて聞きました。どの曲も初めて聞くのにどこか懐かしくて親しみやすいものばかりです。モダンジャズ風、デキシーランドジャズ風、ボサノバ風とまさに“ボーダーレス”です。ヴォーカルのレイチェル・プライスの歌声はどこかマデリン・ペルーやドリス・デイと似たような感じで親しみがあり、心に寄り添う感じで歌っています。特に1曲目の《Without a Thought for My Heart》、5曲目の《Nosotros》、6曲目の《At Your Mother’s House》、9曲目の《The Laundromat Swing》がオススメです。
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1994年にグラミー賞の最優秀カントリー・ソング賞を受賞し、これまでに約14枚のアルバムを発表してきたルシンダ・ウィリアムス。彼女のかすれて引きずるように歌う歌声にしびれます!ガチかっこいいです!かっこいい大人の女性といった感じです。 1曲目の《You Can't Rule Me》、2曲目の《Bad News Blues》、3曲目の《Man Without a Soul》、9曲目の《Bone of Contention》、11曲目の《Big Rotator》がロックしていて素晴らしいですが、彼女の歌声をしみじみ味わうには4曲目の《Big Black Train》がオススメです。彼女の声が心にしみます。
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クレンケ四重奏団はワイマール・フランツ・リスト音楽大学で学んだ女性4人が1991年に結成したドイツ発の弦楽四重奏団です。結成以来、メンバー変更なしに続けてきているとのことです。 このBOXは分売されていた第14番~第19番のハイドンセット、第20番及び第21番~第23番のプロシャ王セットをまとめたものです。 女性のみの弦楽四重奏団というとヴィジュアル系かな、と考えがちですが、いえいえとんでもございません!ガチ第一級の弦楽四重奏団です! 4人によるアンサンブルというよりも1つの“弦楽器”というかたちでよくまとまっていて結束力を感じます。音の強弱や間の取り方が絶妙です。音色も伸びやかで艶があり、美しく品格があり、自然と引き込まれてしまいます。高音の処理の仕方がうまく、うるさく感じません。一旦聞き始めると次の曲、次の曲とどんどん聞きたいという衝動にかられてしまいCD5枚分をあっという間に聞いてしまいます。急速楽章は爽やかではつらつとしていながら速すぎず丁度いいテンポで、緩徐楽章は繊細であり、間の取り方が絶妙で心に寄り添った演奏で和みます。ぜひ全曲を録音していただきたいです! バリリ四重奏団、アマデウス弦楽四重奏団、イタリア弦楽四重奏団、アルバン・ベルク四重奏団などのモーツァルトもいいと思いますが、クレンケ四重奏団のCDは末永く座右に置いて何度でも聞きたいCDです。
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ザビーネ・キッテルはは、ドイツ出身の女性フルート奏者で、最初ドレスデン・カール・マリア・フォン・ウェーバー音楽大学(ドレスデン音楽大学)でヨハネス・ワルターについて学びました。ヨハネス・ワルターについては以前、コロンビアからドレスデン・カンマー・ゾリステンとのモーツァルトのフルート四重奏曲全曲の素晴らしい CDがでていましたが、現在は廃盤です。ぜひ復刻していただきたいです。話はそれてしまいましたが、ザビーネ・キッテルは、その後オーレル・ニコレの薫陶を受け、いくつかの国際コンクールで優勝しました。現在はシュターツカペレ・ドレスデンの首席奏者の地位にあると同時に母校のドレスデン音楽大学でも指導をしています。 バッハの無伴奏チェロ組曲のフルート独奏による編曲盤というとウィルベルト・ハーツェルツェットのトラヴェルソによる、組曲第1番、第2番、第3番を演奏した素晴らしいCDが発売されています。続編が発表されるのをいつかいつかと待ちわびていましたが、とうとう発売されず結局全曲を聞くことができず残念な思いをしています。その代わりとなるものを長い間探していましたが、ここに至ってやっと全曲盤にたどり着くことができました! 組曲第1番のプレリュード、チェロのドスの効いた低い音から始まるイメージをもって聞こうとすると見事に裏切られます。だってフルートですもの。鳥がさえずるような高い爽やかな音で始まります。チェロとは違い、構えて聞くのではなく、リラックスして聞くことができます。 ザビーネ・キッテルのフルートは、爽やかで伸びがあり、響きも美しく、細やかなニュアンスも素晴らしいと感じます。 バッハ自身がリュートに編曲しているくらいですから、フルートに編曲したCDもありだと思います。 同時に収録されている無伴奏フルートのためのパルティータBWV1013も音楽性と技術が遺憾なく発揮されています。 余談ですが、清水靖晃によるテナー・サクソフォン盤もオススメです。
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過去、NHK交響楽団によるブルックナーのCDには、マタチッチの指揮による第8番、朝比奈隆の指揮による第4番、第8番、第9番という名演がありました。今回、若杉弘による名演が新たに加わりました。しかも全曲! どの曲も若杉弘の美意識に基づいた旋律を美しくうたい上げた演奏で、しかも推進力のある密度の濃い厚い響きに圧倒されます。間の取り方、テンポも絶妙だと感じます。緩徐楽章の美しさ、フィナーレの盛り上げ方がハンパないです。随所に若杉弘のうなり声が聞こえてきます。どの曲も聞いた後に深い感動が残ります。 第4番は第1楽章冒頭ブルックナーの“原始霧”が見事に表現されており、第4楽章の冒頭の部分で静かに始まってやがて金管楽器が登場する箇所では音量はすこぶる大きいのに決してうるさくなくて美しく、バランスのとれた響きになっていると感じます。 第5番は第4楽章最後の箇所で怒涛のように押し寄せてくるヨーロッパの中世的な響きに圧倒されます。 後期の曲の中ではCD録音の数が少ない第6番を聴くことができるのも魅力です。第4楽章の最後の部分はそれまでのテンポと同じテンポで駆け抜けるのが通常ですが、若杉弘の場合、それまでのテンポを若干落とします。「そうきたか!」と思いますが、それが堂々としていてギリシャ彫刻やパルテノン神殿を仰ぎ見るようで感動がいっそう深まります。それが作為的にではなく、自然に聞こえます。チェリビダッケ、ヴァント、ヨッフムに並ぶ名演だと思います。 第7番では特に第2楽章で弦が旋律を美しく奏でるのが印象的です。 第8番などはCDを入れ替える時間がもったいなく全曲通して聞きたい演奏です。CD2枚分をあっという間に聞き終えてしまいます。 第9番では第1楽章の冒頭、ドスの効いた金管楽器とそれに続く歌う弦楽器がこれから始まる荘厳な演奏に対する期待を予感させます。第3楽章は、若杉弘の美意識の高さが遺憾なく発揮された演奏だと感じます。最後、ホルンが静かに鳴り響きながら曲が終わっていくのを聞いていると心が浄化されます。若杉弘のこの第9番を聞いていると3楽章でこの交響曲を凝縮して完結させているように感じます。美しいホルンの響きで静かに終わった後にはもうこれ以上音楽を聞きたくない、といった感じです。若杉弘の偉業、ホール、マスタリングと3拍子そろったCDとして末永く座右に置いておきたいCDです
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店頭の試聴器で初めてこのアルバムを聴きました。 全11曲のどれをとってもシングルカットされてもいい親しみやすい曲ばかりです。“歌の宝石箱”といったところでしょうか。彼女の歌声は温かみがあり、心に寄り添うもので曲調ともマッチしています。何回聴いても飽きないアルバムです。 1曲目の《 I’ll Be the Sad Song》、3曲目の《Love is a Fire》、9曲目の《Who Broke Whose Heart》そして11曲目の《The Past is the Past》が特にオススメです。
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今まで第1番と第2番がOehms Classicsから、それ以外がSony Classicalから分売されていました。初期に発売されたものが廃盤になっていたためなかなかな全曲を通して聴くことができませんでしたが、ここに来て全集が発売され全容が明らかになりました。 どの曲もメリハリの効いた突進力のある演奏です。同じ古楽器でもガーディナーやブリュッヘンとはまた違った刺激的な演奏です。
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アイリッシュ音楽というと商業的にはCeltic Womanが有名かもしれませんが、このMuireann Nic Amhlaoibhも声に艶と温かみがあり、素晴らしい芸術家です。心に寄り添う歌で、心がなごみます。伴奏もアコースティックの楽器なので、彼女の歌声にふさわしいものだと感じます。 1曲目の《Western Highway》、6曲目の《Slán le Máigh》、8曲目の《An Spealadóir》がオススメです。 ブックレットには、アイルランド語で歌っている歌詞については英訳も併記されているので親切です。
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