彼をインスパイアした先達としては、本文で述べたようにプリンス(ゲス・フー時代に客演したラヒームの“Most Beautiful Girl”の時点ですでに、殿下の“The Beautiful One”を歌っていた!)やR・ケリーの存在がやはり大きい。一方で、同時代的な好敵手といえば、ほぼ同時期に台頭してきて、裏方でもアーティストとしても成功を収めたT・ペインとニーヨの名が思い浮かぶ。共にエフェクト・ヴォイスと青臭いメロディー感を持ち味とするT・ペインとは作風が似通った点も多く、実際にドリームはGCHの“Cookie Jar”やジェイミー・フォックス“Digital Girl”にてT・ペインの曲を引用しているし、そのジェイミーの大ヒット曲“Blame It”では逆にT・ペインがドリーム曲の一節を歌い込んだりもしていた。ニーヨとは、同じデフ・ジャム所属アクトであるがゆえに同時起用される機会も多く、互いに比較されやすい状況になっているのだろう。ジェレマイのように早くも現れてきたフォロワーを含め、彼らのムードが現代のR&Bを前に進めているのだ。