ネオアコ/ギター・ポップの聖地、グラスゴーで96年に結成されたカメラ・オブスキューラ。デビュー以来マイペースに活動を続けてきた彼らは、4ADへの移籍作となる2006年の『Let's Get Out This Country』でUSでもブレイク。その前作の方向性をより深化させた3年ぶりのニュー・アルバム『My Maudlin Career』では、まずトレーシアン・キャンベルのソングライターとしての成長ぶりに驚かされる。メランコリックながら、ギュッと唇を噛みしめるような芯の強さも感じさせる楽曲群。前作よりアップテンポの曲は抑えめだけど、そのぶんしっかり聴かせる曲が並んでいるのは、彼女の曲作りに対する自信が反映されているからだろう。
また前作同様、スウェーデンのヤンリ・ハーパライネンをプロデューサーに起用していて、ホーンやストリングスを重ねた〈ウォール・オブ・サウンド〉的アレンジからは、スウェディシュ・ポップのノスタルジックなスパイスも嗅ぎ取れる。もちろん、リヴァーブの彼方から聞こえてくるトレーシアンの可憐な歌声は健在だ。60'sガールズ・ポップ~ネオアコ~スウェディシュ・ポップを繋いだ、歌の花飾りみたいなアルバム。