90年にリリースされたファースト・アルバム『Cake』の1曲目“Obscurity Knocks”のイントロで鳴り響く、鮮烈な煌めきを孕んだアコースティック・ギターの音色に胸を鷲掴みされたリスナーはどれほど多いことだろう。ダンサブルなマンチェスター・ムーヴメント全盛期に、故郷スコットランドの先達らを彷彿とさせる、つまりは80'sネオアコ直系としか言いようのないサウンドを奏でたトラッシュキャン・シナトラズの登場は驚くほど新鮮だった。そのデビュー作から活動休止期間も含めた19年間でアルバム5枚、サニーデイ・サービスの面々も参加したミニ・アルバム『Snow』を含めても6枚という寡作ぶりだが、時流に流されず一本気なまでに独自のアコースティック路線を追求した作品はどれも素晴らしい出来映えだ。
そして4年ぶりとなるニュー・アルバム『In The Music』もまた然り。いや、ひょっとすると『Cake』以来の最高傑作なんじゃないかと思えるほど各楽曲のメロディーが鮮やかに際立っているし、お得意のトラッド色を随所に交えながらもあくまでポップだ。またライヴ・レコーディング的アプローチが功を奏し、緩やかなグルーヴを湛えた演奏はいつにも増して瑞々しい。彼らがいまも活動しているということは、なんて心強いのだろう。