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第84回 ─ 新世代のフレンチ女流シンガー・ソングライターが織り成すトリコロール

Emilie Simon

連載
360°
公開
2006/03/30   23:00
ソース
『bounce』 274号(2006/3/25)
テキスト
文/村尾 泰郎


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 サウンド・エンジニアの父親のもとに生まれ、自宅スタジオでミュージシャンたちがセッションしている姿を眺めながら育ったエミリー・シモン。やがて音楽学校でクラシックと現代音楽を学んだ彼女は、そのユニークな才能をポップスのフィールドで開花させた。映画「皇帝ペンギン」のサントラに続く新作『Vegetal』(Barclay/Universal France)は、そんな彼女のアヴァン・ポップなスタイルをさらに進化させた仕上がりだ。エレクトロニカなトラックメイキングはより精緻に磨き上げられて、艶やかな輝きを放っている。その上でレース編みのドレスのようにエレガントなアレンジを施されたストリングスと、これまで以上にバウンシーなリズムが際立つ。彼女の震えるような歌声も、すぐに折れてしまいそうに聴こえるかもしれないが実にしなやか。英語詞のナンバーも収録する美しい冒険に満ちた本作で、〈フランスのビョーク〉は〈世界のエミリー〉へと変身する。

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