メンバーズレビュー一覧

管弦楽名曲集<タワーレコード限定> / カレル・アンチェル

このアルバムは2002年から2009年にかけて本家スプラフォンからアンチェル、チェコ・フィルの音源が一挙にリリースされた46枚のゴールド・エディションから小品を2枚にまとめたものだが、新規リマスターを銘打ったスプラフォン盤のCDはいくらかやっつけ仕事的な音質で、それほど満足できるものではなかった。それらの音源は録音年代にもかなり隔たりがあり、きめ細かいリマスタリングが求められたが、今回のタワーレコードのSACDバージョンではオリジナル音源を生かした音質の改善がかなり顕著に表れている。高音の無理のない伸びとともにオーケストラのそれぞれの楽器の輪郭が深まり、音場の奥行きも感じられる。これによってチェコ・フィル無類の機動力と『ティル』などに頻繁に出てくるソロの巧さも堪能できる。アンチェルのスラヴと西欧、シリアスなものから快活な作品までの指揮者としての幅広く柔軟な力量が充分に発揮された一組だ。

0

商品詳細へ戻る

La dolce vitaさんが書いたメンバーズレビュー

  • 1

(全21件)

最初期のステレオ音源だが解像度は悪くない。基本的にオン・マイクで録音されていてそれぞれの楽器の位置関係や音色が立体的に感知されるが全体的にサウンドがややデッドなので、音像は明確だが多少余韻に乏しい。特に高音部の音質がSACDバージョンで聴いても乾いて聞こえるのが惜しい。また当時のエンジニアの気迫と情熱が伝わってくるレコーディングだけに、いくらか作為的なミキシングが感じられるのも事実だ。いずれにしても1957年及び58年のセッション録音としては最良のリマスタリングがされている。

0

SACDバージョンを聴く限りでは解像度の良さが特徴的で、また古い音源ながらマスター・テープの経年劣化も最小限の状態で保存されていたことも幸いしている。左右の音場も広く、リヒャルト・シュトラウス特有のスペクタクルな音響空間がダイナミックに再現される。欲を言えばもう少し奥行きが欲しいところだが、当時のレコーディング技術から言えば限界だったのだろう。しかし半世紀以上前の最良の録音のひとつであることは疑いない瑞々しい音色が堪能できる。その後のEMI盤にも遜色のない、おそらくシュターツカペレ・ドレスデンとの演奏より華麗な表現を可能にしている。

1

旧東ベルリン・キリスト教会での録音は秀逸で、またこうした古典的な二管編成のオーケストラには適していたのかも知れない。この後レーグナーはブルックナーに取り掛かるが、最初に録音した第六番以外は新規に建設されたフンクハウスに録音会場を移している。確かに大編成の交響曲では教会の音響空間にはやや歪みが出てしまう。ドレスデンのルーカス教会のような音響補正設備が常設されていなかったキリスト教会でのこの録音はその点幸いにも鮮明でバランスの取れたサウンドが捉えられている。SACD化には後れを取った感があるが、レーグナーの演奏は四肢を充分に伸ばしたような悠々とした雰囲気の中にも、これ見よがしの小細工のない確たる説得力を持っていて、多くのクラシック・ファンにお薦めしたいアルバムだ。

1

ワーナーからリリースされたオイストラフのザ・グレイト・レコーディングスに組み込まれていた録音と聴き比べてみたが、SACDバージョンでは解像度がかなり改善されていて旧EMIの音源とは思えないほど高音質で再生される。ソロではオイストラフの表現力が更に彫りの深い音像として鮮やかに浮かび上がっているし、オーケストラもそれぞれのパートがより鮮明に聞こえ、ベルリン・フィルの小編成のアンサンブルの巧みさも鑑賞できる。モーツァルトの天真爛漫な音楽を精緻に、しかも屈託なく再現した模範的な演奏だと思う。ただし息子のイーゴリは父親と比べるとやや聴き劣りするのは事実だ。

1

音場が広いので通常のレギュラー・フォーマットではそれがかえって仇になって表面的で厚みに欠ける印象があったが、このSACDバージョンでは精彩に富む音質だけでなく音場の奥行きも確保され、迫力のある再現ができていると思う。特にチャイコフスキー後期の交響曲のように大オーケストラを駆使しブラス・セクションを咆哮させるようなオーケストレーションでは厚みのあるサウンドを聴かせることが不可欠だろう。その意味で今回のリマスタリングは成功していると言える。ザンデルリンク、ベルリン交響楽団の演奏はスラヴの土の薫りを感じさせてくれる数少ないもので、絢爛たる音色ではないが芯のある力強さや粘り強さが印象的だ。CD2枚に収めることと音質優先のために第四番が泣き別れ編集になったのは止むを得ないだろう。

2

80年代のスプラフォンの録音としてはいくらか物足りなさが残る。SACDでの音質は中音域の押し出しが脆弱で、全体的な解像度もやや曖昧な印象だ。録音会場ルドルフィヌムの潤沢な残響がかえって裏目に出て、音場に混濁が生じている。高音域の中ではパーカッションが良く伸びている。ノイマンの解釈は恣意的なところが無いスマートでチェコ・フィルとの本家の余裕をみせた演奏で好感が持てるが、もう少し土臭さがあっても良いと思う。

0

SACDの音質のクリアー化が徹底している。ソニーの録音は概して鮮明だが、DSDリマスタリングの効果が明確に感知される。レコーディング・プロデューサーのコンセプトはオフマイクで、コンサート・ホールの二階席前列の中央あたりから聴く音場を再現したものと思われる。それゆえどの楽器も突出することなくオーケストラ全体の自然な音像が得られているが、なおかつ分離状態が精緻なのでソロの部分でも埋もれることがないし、低音から高音までのきめ細かいバランス調整も絶妙だ。また両翼型配置で第二ヴァイオリンのパートの動きと第一とのやり取りが手に取るように聞こえてくる。クーベリックはシューマンのオーケストレーションを混濁なく響かせることができた稀有な指揮者で、バイエルン放送響から気品に満ちた透明感のあるサウンドを醸し出している。几帳面だが自由闊達な解釈においてもシューマン交響曲全集の最も優れたディスクと言えるだろう。

3

リヒャルト・シュトラウス生誕150周年記念としてワーナーからリリースされた10曲のオペラ全曲集に組み込まれていたレギュラー・フォーマット盤の同曲と聴き比べてみた。先ずマスターテープ自体がかなり良好な音質であることが理解できるが、CDだとどうしても平面的な音場になってしまう。このSACDバージョンで聴くと解像度の圧倒的な向上によって、音の輪郭が明確になり声楽、オーケストラ共に彫りの深いアンサンブルが蘇ってオペラとしての舞台空間が感じられるようになった。またパーカッションやチェレスタのような高音だけでなく低音部も充実した響きが得られている。ケンペの意図した緊密な合奏がシュターツカペレ・ドレスデンのメンバーによって手に取るように感知されるのも高音質化の恩恵だろう。一方歌手ではヤノヴィッツが出色の出来で、ヒロイン然としたところのない可憐な声質で神々しいまでのアリアドネを表現している。ゲスティがハイFを披露するツェルビネッタも役柄を踏まえた好演だし、シュライアー、プライ、テオ・アダムなどが脇を固めたキャストも魅力だ。ケンペのセッション録音によるオペラでは既に『ローエングリン』が出ているが、バンベルクと共演した『売られた花嫁』全曲のドイツ語版がエレクトローラに遺されていて、こちらも是非高音質化をして欲しいレパートリーだ。

0

モーツァルトとブラームスのクラリネット五重奏曲に関してはDENONからリリースされた日本盤を持っていたが、オイロディスクのレコーディングらしくない、やや薄い音質で音場の平面さにも不満があった。今回の新規DSDリマスタリングでは少なくともSACDを聴く限り解像度の向上は勿論、芯のある音質と音場のより立体的な空間が確保されている。これによって全体的な臨場感がアップされたことを評価したい。演奏表現に関してはこのアルバムの作品を普遍的な音楽として鑑賞するならば、特にウィーンの奏者に拘る必要はないと思う。しかしモーツァルト、ブラームス共に後半生をウィーンで生活し、その地で亡くなった作曲家である以上ウィーン流派の奏法は無視できない。その意味で彼らの演奏は最右翼と言えるだろう。

2

以前はディスキー・レーベルから出ていた6枚組の廉価版セットで聴いていたが、89年のリマスターは及第点以上のものではなく、それが当時のEMIの録音技術の限界のように考えていた。しかしこのSACDの192kHz/24bitリマスタリングでは靄が晴れたような鮮明な音質で蘇っている。おそらのくこれまでリリースされたあらゆるフォーマットのディスクの中では最もオリジナル・マスターテープに近い音質ではないだろうか。解像度が劇的に向上したためにオーケストラのパートごとの分離状態も良くなり、臨場感も一段とアップしている。タワーレコードのデフィニション・シリーズの中でも会心の出来だと思う。

3

このアルバムは2002年から2009年にかけて本家スプラフォンからアンチェル、チェコ・フィルの音源が一挙にリリースされた46枚のゴールド・エディションから小品を2枚にまとめたものだが、新規リマスターを銘打ったスプラフォン盤のCDはいくらかやっつけ仕事的な音質で、それほど満足できるものではなかった。それらの音源は録音年代にもかなり隔たりがあり、きめ細かいリマスタリングが求められたが、今回のタワーレコードのSACDバージョンではオリジナル音源を生かした音質の改善がかなり顕著に表れている。高音の無理のない伸びとともにオーケストラのそれぞれの楽器の輪郭が深まり、音場の奥行きも感じられる。これによってチェコ・フィル無類の機動力と『ティル』などに頻繁に出てくるソロの巧さも堪能できる。アンチェルのスラヴと西欧、シリアスなものから快活な作品までの指揮者としての幅広く柔軟な力量が充分に発揮された一組だ。

0

BDA目当てで購入したが正解だった。混濁のないクリアーな音質で、音場の拡がりも自然で解像度もかなり向上しているので楽器ごとの分離状態やソリストの声とコーラスの位置関係も手に取るように伝わってくる。この時代のレコーディングとしては最良のひとつだろう。また60年代のカラヤンは作品をことさらスペクタクルに聴かせるようなはったりが無く、ベートーヴェンの音楽的構造、ここでは対位法や二重フーガなどをしっかり感知させている。歌手では当時全盛期だった四人、精緻で可憐なヤノヴィッツ、内声を輪郭のはっきりした美声で支えるルートヴィヒ、フレッシュで恣意的でないヴンダーリヒ、真摯なベリーが理想的なカルテットを披露している。なかでも録音時にコンサートマスターだったミシェル・シュヴァルベの手堅いオブリガート・ヴァイオリンが伴う『ベネディクトゥス』は天上的な美しさを持っている。

0

少なくともSACDで鑑賞する限りでは高音域が耳障りという印象は無かった。むしろ音質に艶のある潤いが得られ、彫りの深い解像度が得られている。スクリベンダムのレギュラー・フォーマット盤と聴き比べてみたが、こちらの方が音の混濁がなく、また両翼型配置のオーケストラの分離状態も自然で明瞭だ。マスターが第二音源だとしても充分納得のいく良好なサウンドが確保されている。余白に『ハイドンの主題による変奏曲』を収録したことも評価したい。

2

この曲集を始めて聴いたのは97年にグラモフォンから刊行されたベートーヴェン・エディションだったが、SACD化によってそれぞれの楽器の定位と音色に潤いが得られ、艶のある音質になった。レギュラー・フォーマット盤より明るいサウンドに聞こえるのはSHM効果だろう。アンサンブルの安定感と哲学的とも言える解釈の奥深さは秀逸。ケンプフがルービンシュタインに替わるシューベルト、シューマン、ブラームスのピアノ・トリオ集の三枚組も高音質化が望まれる。

0

ハイドン、ベートーヴェン及びブラームスを除くザンデルリングの比較的まとまった交響曲のセッション録音を16枚に収めた気の利いたボックス。ただしヘルマン・プライの歌うマーラーの『さすらう若人の歌』は何故か第3楽章が抜け落ちている。この全曲はザンデルリング生誕95周年記念にリリースされた2枚組の方に収録されている。音質は良好でコスパも良いが、残念ながら廃盤の憂き目に遭っている。

0

既出のSACDは持っていなかったのでUHQCDバージョンの2枚組選集と音質を聴き比べてみたが、やはり雑味が払拭されてクリアー感が際立っている。特に倍音を多く含む楽器の音色がよりインテグラルに響き、ハープの撥弦音やパーカッション・セクションは目の醒めるような鮮烈な音質が再生される。左右、奥行きだけでなく上下の音像もくっきりと浮かび上がり臨場感を高めている。半世紀にもなろうという古い音源だが、バランス・エンジニア、ポール・ヴァヴァスールは決して曖昧模糊としたサウンドを求めていたわけではないことが初めて分かった。この時代のEMIのエンジニア達の意気込みとレコーディング技術を見直したセットだ。

1

既にUHQCD盤を持っていたが、SACD化によって更に雑味が払拭されたクリアーな音質が印象的だ。また解像度が増したために高音部だけでなく低音も拡散されず、独立した力強いサウンドが確保されている。チェコ・フィルの明るく伸びやかな弦、アンサンブルと機動力に優れたウィンド、ブラス、パーカッション・セクションの特質が充分発揮されたディスクだ。第5番終楽章コーダのティンパニとグランカッサの打ち込みは素晴らしい効果を上げている。UHQCD盤には無かった『祝典序曲』を収録したことに大満足。底抜けに楽天的で超絶技巧的な曲趣が高音質化され、アンチェルの多彩な音楽性と統率力が実感として伝わってくる。

0

アンチェル、チェコ・フィルの演奏は高く評価したいが、マスター・テープの録音年代や保存状態によって音質にややムラが出ているのも事実だ。このディスクでは音源の一番古い1962年の序曲『フス教徒』が音質や解像度で他の2曲より劣っている。チェコは当時の東欧諸国では逸早くオーディオ分野を開拓していたので、いずれも時代相応以上のサウンドを確保しているが、まだ技術革新の途上であったためにクオリティーにばらつきがあるのは致し方ないだろう。オリジナル・マスターによってSACDの仕上がりもかなり制限されてしまうことは確実だ。

0

レーグナーは1985年にブルックナーの交響曲第4番から第9番までのセッション録音を終え、ブルックナー・シリーズの総仕上げとして、この2枚のディスクの3曲の宗教曲を1988年9月から10月にかけてベルリン・キリスト教会で録音した。彼らしい明晰な解釈で大所帯のオケ、ソリスト、混成合唱を統率し、混濁のないサウンドと透明感のある良好な音質も好感が持てる。CD1のキリエ及びクレードのヴァイオリン・ソロはゲルノット・ジュースムート、ヴィオラ・ソロはペーター・ザイデルがそれぞれ担当している。

0
  • 1

(全21件)