アヴァン・ヒップホップの雄がリ・スタート! BEANS
ワープ所属アーティストのなかでも、ヒップホップとエレクトロニカ、ポエトリーとラップという4つのベクトルを結びつけたグループと言えばアンチポップ・コンソーティアム(以下APC)。97年にビーンズ、プリースト、サイードがポエトリー・イヴェントで出会って結成されたAPCは、カンパニー・フロウらと共にNYの新しいアンダーグラウンド・シーンを形成していく。グループは2002年に解散したものの、早速ソロ活動を開始したラッパー兼ビートメイカーのビーンズが、『Tomorrow Right Now』をリリースした。ビーンズによれば、「このアルバムは、いままでのアンチポップのアルバムと並行して制作してたんだ。だから、このアルバムは俺の成長を反映した曲の集合体だよ。APCのメンバーとは、個人的そしてクリエイティヴな衝突があったから解散したんだ。どんなグループでも、必ず妥協することになってしまうんだよ。APCではできないことを、独りでやることにしたんだ」とのこと。また、「それぞれの曲で違うスタイルを披露したかったんだ。同じような曲は繰り返したくなかった。みんなが期待してるスタイルに凝り固まらないように、バランスを取るようにしたんだ。一人のアーティストとして、どんなスタイルにもカテゴライズされたくないんだよ」とも語っているとおり、『Tomorrow Right Now』ではオールド・スクール・ヒップホップのドラム・マシーン・サウンド、ポエトリーのアカペラ、電子音が交錯するインスト・トラックなど、幅広いスタイルが内包されている。
「俺は、NWAもデ・ラ・ソウルも両方ともヒップホップだと言われてるような時代のなかで育ったんだ。また、オウテカは俺にとってマントロニックスの延長線上にある。俺は常にオープンでいたいんだ。でもいまのヒップホップにはユニフォームが多すぎるし、保守的になりすぎてるんだ」。
このフレキシブルなスタンスがあるからこそ、彼は常に型破りな曲を作れるのかもしれない。ビーンズは、ヒップホップとエレクトロニカ、そしてアヴァンギャルド・シーンの橋渡し的存在とも言える、要注意人物なのだ!(バルーチャ・ハシム)