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第12回 ─ 21世紀のワープ

第12回 ─ 21世紀のワープ(5)

連載
Discographic  
公開
2003/04/03   12:00
更新
2003/12/18   18:48
ソース
『bounce』 241号(2003/3/25)
テキスト
文/bounce編集部

奥様は魔女!? MIRA CALIX


 96年の10インチ・シングル『Ilanga』、ボーズ・オブ・カナダのリミックスが話題になった98年の“Pin Skeeling”を経て、2000年の初アルバム『One On One』とそれに続くEP『Prickle』でそのポテンシャルを露にしたミラ・カリックス。簡素で無垢で純情で仄かに有機的な音世界や、マシンガンまたはミシンのようなエレクトロニクスの連なりも実に刺激的だ。間もなく登場する新作『Skimskitta』は、そのようなエッセンスをより高純度に精製したさらさらのひとつまみ。毒か薬かはわからない。

 ミラ・カリックスことシャンタル・パッサモンテ(オウテカのショーン・ブース夫人でもある)は南アフリカ生まれ。90年代初頭にロンドンへ移り、やがてワープ一家に加わっている。ただ、他の面々と大きく異なるのは「私はソフトウェア・タイプの人間ではない」ということ。いわく「ヴィンテージの楽器や古いアナログ・サンプラーを使ってる。機械のキャラクターに愛着を感じて、それらとの関係が音を作り出すのよ」。

 邪気と無邪気がキラキラした世界観に縁取られ、わずかばかりのヴォーカルも効果的に通り過ぎる。

「(歌も)楽器のひとつだと思ってる。たまに人に何者か尋ねられたら〈シンガー・ソングライターです〉って答えるけど」。

 もしくは言葉を使わない吟遊詩人。それが回りくどければ、答えは『Skimskitta』でどうぞ。(柚木晶代)