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第12回 ─ 21世紀のワープ

第12回 ─ 21世紀のワープ(2)

連載
Discographic  
公開
2003/04/03   12:00
更新
2003/12/18   18:48
ソース
『bounce』 241号(2003/3/25)
テキスト
文/bounce編集部

ワープきっての危険なふたり AUTECHRE


 全世界のテクノ/エレクトロニカ・ファンは言うに及ばず、クリエイターたちにとっても待ちに待った巨星オウテカのニュー・アルバム『Draft 7.30』が、ついにその姿を現した。前作にあたる『Gantz Graf』は、DVD+CDのミニ・アルバムという変則的な形だったので、フル・アルバムとしては2001年の『Confield』以来となるわけだ。オウテカの1/2であるショーン・ブースは、以下のように語る。

「タイトルは7枚目のアルバムの30個目のヴァージョンって意味の仮題だったんだけど、それ以上に適したのを思いつかなかったんだ。今回は30個もヴァージョンを作ったんだよ。前までは、実際には僕だけで作ったトラックがあったり、ロブ(・ブラウン)が作った曲があったりしたんだけど、今回は2人で作ったトラックが多いんだ。意図的に曖昧にしているけどね(笑)。僕らはコラボレーションすることに満足してるから、相手が自分が作ったものを変更することは気にしないしね」。

 こうして出来上がったアルバムは、最先端のコンピュータ・ソフトウェアを駆使した過去数作の実験的な作風からは微妙にシフト・チェンジし、斬新な音作りはそのままに、初期の独特なグルーヴ感と、ある意味ではポップとさえ呼べるような感覚が回帰した、目の覚めるような快作となっている。

「ポップ・ミュージックが普遍的な音楽だっていう概念には興味があるけど、コマーシャリズムは大衆が作り上げたもので、最終的には失敗するんじゃないかな。何がポップか、どんなものが良いポップ・レコードなのかっていうのは難しい。ミュージシャンのなかには、自由な音作りをしたくても、契約上の制限があったり、家賃を払わないといけないとか、そういう心配があってできない人がいる。僕らはそういうことに制限されず、自分たちの基準だけで曲を作ってきた。目を覚ましてみんなも自己表現したほうがいいよ。他の人のルールになんて従っちゃダメだよ。音楽とサッカーは違うんだ。僕らは好きなものを作ってるだけで、それをリリースする時には、まだリスナーは聴く準備ができてないかもしれない。でも、そんなことは心配できないよ。やりたいことは絶対に妥協できないからね!」。(佐々木 敦)
▼オウテカの近作を紹介。