メンバーズレビュー一覧

おいづるさんが書いたメンバーズレビュー

  • 1

(全12件)

筆者にとってクラシック音楽没我への原点、出発点と成ったカラヤンがBPOと最初にベルリンの教会で録音敢行した本ベートーヴェン交響曲全集は、今以て特段の感慨、思い入れを抱かせて余り有るものと成っている。又之とは別に、同一内容SACD規格品のレヴュー欄にて其の演出過剰気味のサウンドに手厳しい我が主張を記して居るのでそちらも参照して頂きたく思うが、此処でのBRA仕様に拠る音声を一言で述べると、やや地味な感は否め無いのの、自然体でアナログサウンドに近似した柔和でシットリ感の有る仕立てと成って居り、我にとってもより好ましい内容に収束している。只、レコードで聴くトランペットのシャープで金属的な輝かしいトーンは遂にぞ発露される事は無く、(デジタル信号に変換される際に信号化若しくは記録出来無い音の成分が存在して居る事に由来しているのかも知れない)又、第1番、第2楽章に於いてテープレコーダーの回転軸ブレに起因していると目される瑕疵が認められる辺り、強いて言えば惜しまれる点だ。尚、第5、第7番共に第1楽章にマスターテープのシワ、垂水から来る不具合が一部個所に認められるが、此等はレコードないし通常CDにも刻まれているので、妥協するより他無い。因みにSACD仕様のディスクには、こうした不都合は無く推察するに別のテープを音源としている模様である。

0

先ず、本商品の説明欄として今や削除されて仕舞った当該ページのステレオ表記から購入を決意し、試聴するや、実際の処、モノラル録音を突き付けられ落胆した時の事が想起されて成らない。其れはともかく内容的には、ポリーニらしい透明感と精鋭なタッチで貫き応される自家薬籠中のショパン演奏と言って差し支え無いものなのだが、木枯らしのエチュードでの一部メロディーラインの茫漠化更にはプレリュードニ短調冒頭での主旋律の構成に直接関わる一音の欠落(打鍵不履行)等後のポリーニからは想像もつかないミステイクが認められ、此れには意外さと驚きを禁じ得ない。其れでも本番が、我々聴き手を世界の頂点に上り詰めて行かんとする等若きピアニストの進化と昇華のプロセスに立ち会わせ、彼の完全無欠の芸風が如何にして築き上げられて行ったかをリスナーとして知る上に於いて貴重な参考資料足り得る事は今更改めるべくも無い。

0

当盤を絶賛するレヴューが数多認められた事から其れに触発され、筆者が学生の頃、さしてチャイコフスキーで名を馳せた感も無かったハイティンクに依る本ディスクを取り寄せる次第と成った訳だが、期待に胸弾ませて試聴するや1~3番のシンフォニーは、割りと聴きやすく好感の抱ける内容だったのに対して後半3曲に関しては4番フィナーレの指揮者の一定の推進力、モメンタムを保ちつつのインテンポ気味に押し進めて行く解釈並びに重厚感、深遠さを湛えたRCOの響きこそ圧巻と言うべきで例外とし得るが、その他についてはハイティンクの何処か安全運転気味の優等生型、穏健派スタイルに収まって仕舞っている印象が否めぬ指揮ぶりに些かの不満を覚えずにはいられず、全編を颯爽とした緊張感と劇性で貫くカラヤンの数有る名盤との対比で思はず聴き劣ると感じてしまうのは筆者のみだろうか。個人的には、此の水準ならわざわざ4,6番の旧録収録は不要だったのではとも思われる。其れでもスラヴ行進曲は出色。

0

先ず、我がレヴュー冒頭にて本ディスクの申し分無き迄の刻印を押すべき秀逸な録音、再生について触れて置かねば成らない。が本企画が、英国が世界に誇る名門ロンドン響を起用しているにも拘わらず、(どうにか一定の品格は保たれて居る)同オケ本来の重厚感並びに深遠な響きは何処へとやらと言った具合に影を潜める結果を助長し兼ねぬ、又、表情が希薄化し、無機質な表現に陥る事もまま有るピリオド奏法に全体が委ねられている実体に筆者として困惑し、落胆して居る。20世紀が演奏家の時代と謳われて久しく、我が国のみ成らず世界的にも多くの国々が目覚ましい経済発展を遂げて行く中、前のERAを象徴して余りある豊潤なオケのサウンドを十二分に堪能し、又其れが骨身に染み付いている我にとっての此のピリオドと銘打たれた楽器ないし奏法は、どうにも受け入れ難く、追従し得ないもの(共感して頂けるリスナーもおいでだろうが)と化している。無論、本盤にて此の奏法が取り入れられている背景には、強く働く指揮者ガーディナーの意向、指示が有るものと思われるが、筆者が学生の折、当指揮者の運命をチラッと耳にした際に現代的センスに溢れるスマートな解釈で将来多いに嘱望される逸材として注目した印象、記憶から本ディスクの取り寄せに至った次第だが、いざ試聴するや、上述した通り、我にとって好ましからざるボックスセットと化して仕舞った。取り分け真夏の夜の夢の音楽は、劇場型仕様での演出が施されている事から台詞の占める割合が多く、しかもベルガマスク、葬送マーチ更には結婚行進曲等の反復はことごとく省略されて居り、繰り返しになるが、個人的には、どうにもこうにも歓迎し得る内容には達し得ていない。

0

何時もの事ながらアナログ音声を彷彿とさせる本XRCD規格の至って良好な音質には感服する。又クルツの作品全体に対するパースペクティヴの効いた自信漲る指揮振りにも充分納得せしめられる。但、わざわざ此の時のセッションの為に招聘したメニューインのヴァイオリンソロが恰もコンチェルトの如く余りにも其の存在感を全面に押し出し過ぎて居り、(文句無く上手い)筆者的にはシックリ来ない。同様に、同曲の録音は、ソリストを招いて居る例は他にも幾つか有るが、其の中に有ってやはり個人的にはイダ ヘンデルを起用したプレヴィン盤での彼女の出しゃばらず、しかし投入するべき個性は大事にしつつ、指揮者の意向に寄り添うスタイルが最も好ましく思われる。敢えて筆者が同曲ベスト盤を掲げたとすると、やはり此のプレヴィン盤を筆頭に、僅差で追い駆けるデュトワ盤が此れに続くと言った処か。だが本盤も当規格ならではの卓抜なサウンドと相まって指揮者のバレエの現場で培ったノウハウをバックボーンとする楽曲のつぼ、肝を押さえた名人芸が一際、光彩を放つ名盤に押し上げていると言うべきだろう。

0

本盤は、演奏としての質感では同じブーレーズの指揮したNYフィルとの録音(おそらく小澤、パリ管と並んでベストパフォーマンスとなるだろう)との対比に於いて一歩譲る感が否めないが、此処での録音は実際にオーケストラを目の前にした際の金管群の風圧さえ感じさせる、空気を切り裂いてダイレクトに耳に達するあのドラスティックな音量を約束してくれて居り、殊に火の鳥フィナーレのブラス陣の号砲が、恰も其の場で聴いているかの如く鳴り響くのは圧巻だ。オーケストラに於ける各セクション同士の音量に纏わる優劣関係を考えた際に何と言っても他のパートを圧して余り有る轟音をかき立てるのがブラス軍である。其れを克明且つ鮮烈に刻んだ名録音は必ずしも多くは存在しない。其の中に在って本盤は、ブラス本来のオケの中での立ち位置を鮮明に取らまえた秀抜な録音と成り得ていると言えよう。もっとも同曲の最後の最後でのロングトーンに限っては、若干リミッターが働いている為だろうか、些か不満を感じ無くも無いのだが。然るに録音エンジニアには今後もオケの演奏会に足を運んだ際のリアルなサウンドの追求並びに具現化に奮闘して頂く事を願って止まない。

0

BRA仕様のカラヤンBPO2度目のベートーヴェン交響曲全集が、トータル6時間に満たない処で2枚に分けての規格と成って居るのに対し、本ブルックナー全集では裕に9時間を超えるタイミングを要しながら1枚物に収められている。其の事が直接原因と言えるかどうかは、筆者も其の道のプロでは無いが故、いとも軽々な言及に訴える訳にはいかないが、筆者の場合、購入直後は何の異常も認め無かった本ディスクが一定期間のブランクを経て再度再生した際に音飛びが生ずる結果と化した。其の事に照らすと、多少成りとも上記の圧縮型詰め込み式収録が災いして居る様に思われてならない。目視した処、特段目立った傷等も確認出来ず、研磨業者に依頼し、修繕処理に当たって貰ったが依然再生不良のままと成って居る。そこで我が所有の某大手家電メーカーのTV用録画再生装置からより情報解析能力に長けたパソコン型の機器を介して試聴した処、此れ迄の様な不遜も起きずに健全な再生を確認する事が出来た。こうした実情に鑑みると他のディスクは全うに再生し得ている我がBRプレーヤーに何らかの原因が有るとは考えにくく、何とも釈然とせず、遺憾な事この上無い。又当ディスクのサウンド其の物もBRA本来の此の規格ならではの冴え渡った美徳が感じられず、複写を重ねたマスターに由来している印象すら示唆し得る期待外れの音質と化している。尚、此れと平行して添えられた9枚のCDに関して筆者が聴いた処、取り分け粗悪なものには感じられず、極々普通と言った感想を得るに至った。

1

当ディスクに耳を傾けて先ず第一に感じたのは、半世紀近く前にFMから流されたポリーニのザルツブルク音楽祭におけるリサイタルでのソナタ3番を想起させる近似性である。アシュケナージは、同曲をステレオでは都合3度録音しているが、初回と3度めの表現、解釈は基本的には同一路線を行くものと言って良く、本録音は明らかに是迄彼が主張して来た内容とは一線を画するものとなって居り、緩徐楽章の頑なな迄の彼本来のインテンポ設定を例外に終始、有り余る技巧を分段に駆使しながらの畳み掛ける様な快速ピッチで進められて行く両端の楽章、更には此のピアニストとしては珍しく過分気味に適用されたペダルの扱いに起因する長めに鳴り響く左手伴奏型音符等、正しくポリーニのザルツブルク音楽祭時の実演に酷似している。此処でのアシュケナージは、あたかも即述のポリーニリサイタルを何処かしらで聴いていて、其れに触発され、僕にも同様に弾けるんだよと言わんとしているかの如くの印象を抱かせる。筆者は此の時局に至る迄、同曲のベストパフォーマンスと問われれば惑う事無く幸いにして当該放送をカセットテープに収め得たが故に以降幾度と無く傾聴し得る事と成ったFM提供のポリーニ ライヴと答える事として来て居るが、其のポリーニが数年以上時を隔てて、2番とのカップリングに依る最初のソナタ録音を世に送り出す事と成る訳だが(此れなど一般的にはベストレコーディングとして扱われて居り、我が尺度からしても異論は無い)本アシュケナージの録音は此れをも上回る程の出来栄えに仕上がっていると言うべきで、緊張感と言う点では即述のポリーニライヴには一歩及ば無いものの、筆者の中では現存の同曲ディスク中、最右翼に君臨する秀演に位置付けられている。又筆者もプロの様な訳には行かず、拙劣極まり無いながらショパンの2,3番のソナタについては、一通り奏でられる様に修練に興じて来たが為、おおよそピアニスト達の鍵盤上での動作は想像がつくのだが、真偽の程は、当事者のみぞ知ると言わざるを得ぬ事から明言には訴えられ無いが、アシュケナージ程のピアニストとも成ると、いざ其の気になれば他者の模倣も実践可能と成り得る事を証明した事例の様な気さえして来る一枚で、新たなる発見、認識を享受せしめられた事と併せて、改めて本盤に賛辞を贈りたい。

0

奇しくも筆者は、幸いにして今は亡き両親の計らいで当カラヤン、ベルリン・フィルに依る普門館日本公演に足を運ぶ事が出来き、遂にぞ此処に至って其の夜のプログラム1,3番を当ディスクを介して約半世紀振りに改めて鑑賞し、当日の感動を追体験するに至った。XRCD規格の当セットは、録音再生双方に於いてPCM方式に基づいている為、エッジの効いた鮮明な音響が約束されて居り、弦の細かい動きやさざ波の様なトレモロが未だ嘗て無い水準で浮かび上がるのを聴いて驚愕している。だが筆者には、此のXRCD規格と言うものはアナログ録音対象時に、よりレコード音声を彷彿とさせる効果、威力を発揮する物の様に思われる。それでも此処での録音が残響の少ない5000人収容のマンモスホールを舞台として居る事に鑑みれば、些か硬質では有るが、BRA,SACDには代行出来ない鮮度、純度を保ち得た上々の音質に落ち着いていると言うべきだろう。演奏の方は、生涯に渡り、ベートーヴェンをレパートリーの基軸に据え続けたカラヤンならではの面目躍如たる処を遺憾無く示したもので、我が傾聴した3番を始め、5番のフィナーレ、9番の2楽章等セッションでのカラヤンからは聞く事の出来ない金管の鳴りを堪能出来、やはりともするとレコーディングコンダクターと思われがちな此の指揮者もライヴに於いてこそ其の本領を最大限に発揮する事を示したものと言って良い。そして惜しむらくは楽員の座して居た椅子に起因するとも類推され得るギリギリと言った何かが軋む様なノイズが全9曲に渡って認められ、殊に8番にて頻発するのは僅かに遺憾である。

0

クラシックファンの間でベートーヴェン交響曲全集と言えば少なからず当カラヤン ベルリン・フィルのセットを第一に掲げると言う声を耳にする。筆者も同感で、カラヤンが生涯に渡って実演、録音双方に於いて演奏し続けた客観事実を以てしても正しく彼のレパートリーの基軸を成すものと言う位置付けに関しては、疑念を介在させる余地はないだろう。そうした事からSACDに依る高音質で改めて鑑賞したいとする我が所望を押さえ切れず、実際に手にして傾聴したのだが、一言で言うと失望の色を隠せないと言うのが正直な処だ。DSD方式を特徴付ける柔らかな音では有るが、此れは、我が十代の頃レコードで堪能した響きとは明らかに異なり、アナログのグリップの効いた引き締まり感を伴う高密度なサウンドでは無く、デジタル特有の散開気味且つ希薄でエコーを引いた感すら附帯させた音声が、遺憾な事この上ない印象を齎している。そして敢えて視覚に置き換えて例えるならば、拡大鏡を用いて対象物を手前に引き寄せて細部を明らかにしたかの如くオケ全体をリスナーに近づけ、ラウドネス的効果を加えながら過分な演出脚色を施し、より以上に豊満な音響で聞かせたインプレッションを強く抱く。あくまて一個人としての主観だが、やはりアナログ時代の録音は、可能な限り誠実且つ実直にレコードの原音に近いもので有ってほしいと嘆願され、余剰な色調を加えるべきでは無い。此れはもはや我が周知のベルリンイエス・キリスト教会の響きとは異なる。筆者は、この後等セットでは承服が行かず、オリジナルプロセッシングに依る通常盤の商品を購入する運びとなった。こちらは往時のイメージをダイレクトに伝播し得た仕立てと成って居り、初めからこちらに頼っておくべきだったとつくづく感じた次第である。

0

これ程購入後の充足感に浸り得た経験も無い。筆者は大のバーンスタイン贔屓であるが、彼のファン成らずとも手元に置いておくだけで安堵する類いのボックスセットではと標榜したい。内容的には、後年のバーンスタインも叶わぬキリリと引き締まったテンポで野心的且つ、気概漲る熱演を展開し、世界初といった快挙の中成し遂げたマーラーの全集、作曲者自身を感動せしめ、ステージに駆け上がらせた折り紙付きショスタコーヴィチ5番の名演。さらには、同じソ連時代のプロコフィエフとの相性の良さを感じさせる抜群のセンスも特筆に値する。そして期待を大きく上回るビゼーの1番。此れなど我がリスニング歴中、至上の好演で見事と言うよりほか無い。その他胸のすく様な早いテンポで推し進められる欣快至極なベートーヴェンの4番。ただチャイコの3大シンフォニーは音が軽く、粗野な上がりの5番や、テンポの変動が著しい6番には賛同し兼ねる。とは言え総じて極めて聴き応えのある、充実感を満喫出来る我が一押しのセットと称賛したい。

0

本日7月17日迄掲載頂だいた我がカスタマーズヴォイスに誤りが有りましたが故、訂正とお詫びを申し上げまず。是迄録音上の瑕しからと目される音声の割れ若しくは歪みを指摘させて頂きましたが、オーディオ環境、具体的には、再生プレイヤーを換えて再度視聴致しました処、即述の様な不具合も無く2000年以降の録音によく聴かれる卓越感が得られました。誤解を招く投稿と成りました事を深くお詫び申し上げます。なお、演奏内容につきましては是迄同様、指揮者の不足気味の個性の表出を指摘させて頂きます。

0
  • 1

(全12件)