今年はラヴェル生誕150年といふことで、ラヴェルのピアノ作品を複数のピアニストの演奏で楽しんだ一年であったが、その記念の年の掉尾としてこのCDが発売されることを嬉しく思う。11月28日に京都で開催されたメジューエワのリサイタルにて先行発売されていたのを購入。コンサートの余韻がようやく消えたところでCD音源を楽しんだ。メジューエワのラヴェルは、キレッキレの怜悧な演奏の真逆で、演奏者の体温のぬくもりがそこかしに感じられるような実にあたたかな演奏であった。例えばクープランの墓のメヌエットのトリオ。メジューエワの演奏ではバスに響くト音の保持が陰影を伴って上声部への血脈となり体温を感じさせるのである。「繊細で豊かな己の感情を、豊かすぎるがゆえに隠しても隠しても隠しきれない」ラヴェルの心情が自ずとにじみ出てくる演奏。そうした心情にそっと触れるようで聴いていて心があたたかくなる、そんな演奏だ。録音もラヴェルの繊細な心情を感じさせるに充分だ。