序章及び単年ごとの章立てになっている1962年までは情報量が多く読み応えがあり、著者の指摘や感想に共鳴する箇所が多々ありました。。気になったのは、pp.9-16のカラーページで取り上げられているCDがオルフェオ・レーベルのものに偏っていること(ジャケットの見栄えが関係しているのかもしれません)、厳密なライヴではないと思われるDGが1958年に録音した合唱曲集について本文中での記載が見当たらないこと(巻末のディスコグラフィーには網羅されています)及び全体を通じ細部の校閲がわずかに甘いと思われることの3点です。これに対して1963年以降は複数年ごとの章立てとなり、情報量にやや物足りなさを覚えます。シーズンごとのスケジュール一覧表もなくなっています。ことに第16章は1971年-1975年のハイライト部分のみをピックアップしたという内容にとどまっていて、(誠に失礼ながら)やっつけ仕事の感があります。著者は「あとがき」で映像主体の続編の可能性を示唆しているので、それが実現すれば前史的な扱いで1970年代前半の情報を追加されることを期待します。