イタリアの放送オーケストラを振った前回発売の全集より遥かに良いです。演奏、音質、オーケストラの技量のすべての面で。この演奏を聴いて思うに、マタチッチという指揮者は、晩年に向けてどんどん上り調子になっていったのではないでしょうか。枯淡の境地とか、テンポが遅くなるとか、そういった意味では全く無く、技量・熱量・芸風全てにおいて、どんどんすごくなっていったのではないか、と。枯れるどころか、さらに熱く、さらに細かく、なっております。このベートーヴェンは細部に渡るまで考証が加えられ工夫が施され、おやっと思う場面が多いのですが、それらは恰幅の良い芸風の中で、大きな流れの中で行われるので、全く不自然にも姑息にも感じません。大変楽しく、思わず共感して没入できるベートーヴェンです。