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第86回 ─ ロードランナー

連載
Discographic  
公開
2008/10/16   23:00
ソース
『bounce』 303号(2008/9/25)
テキスト
文/粟野 竜二

ニュー・メタル、メタルコア、トライバル・ヘヴィー・ロック……と新たなモードをどんどん発信することで、ラウド・ロック・シーン全体の未来を切り拓いてきたロードランナー。 メタル・ブームに沸くいまだからこそ、改めてレーベルの偉大な軌跡を再確認すべきではないだろうか? さぁ、握りしめたその拳で、いますぐ鋼鉄の扉を叩け!

  ロードランナーは80年にロードレーサーという名でオランダにて設立されたインディー・レーベルだ。86年に改名してNYに進出するが、当初リリースしていたタイトルはどちらかというとマニアックな、良くも悪くもB級バンドの作品が中心だった。そんなレーベルが躍進したのは、90年代に入ってからのこと。93年にタイプO・ネガティヴの『Bloody Kisses』がゴールド・ディスクを獲得し、それに伴ってレーベルも一気に知名度を上げていったのである。以降、ロック・シーン全体がグランジ・ブームに湧くなかでも時流に流されることなく、マシーン・ヘッドやフィア・ファクトリーなど後に〈ニュー・メタル〉と呼ばれるシーンの先駆者的なバンドを次々と輩出。そして、現在のレーベルを語るうえで欠かすことのできない看板アクト、スリップノットが99年に登場するのである。2000年代に入ってからも、キルスウィッチ・エンゲージをはじめとするメタルコア勢や、トリヴィアムら新世代メタル・バンドを間髪入れずに送り出して若者からの熱烈な支持を獲得。その一方で、ドリーム・シアターやメガデスらヴェテランのフックアップも精力的に行っている。

 また、ロードランナーはライセンス契約にも積極的で、ドラゴンフォースやウォンバッツ、ナイトウィッシュらがUSでブレイクしたのはこのレーベルの存在あってこそ。最近ではビート・ユニオンやビッフィ・クライロを筆頭に、従来のレーベル・イメージとは異なるアーティストの作品もリリースするなど幅広い展開を見せている。しかしメインはあくまでもハード/ヘヴィー系のタイトルであり、ロードランナーの名は赤地に白文字のロゴと共に現在のラウド・ロック・シーンにおいて〈確固たるもの〉と認知されているのだ。

 ヘヴィー・メタルというジャンルが死んだかのように言われていた90年代初頭から現在に至る流れのなかで、新しい〈メタル〉を提示し、シーンをリードしてきたロードランナーの功績は計り知れないほど大きい。手前味噌だが、そんな彼らの歩みを集約したタワレコ発案によるコンピ『Tower Of The Beast -Roadrunner Edition』もこのたびリリースされたばかりなので、本レーベル紹介ページと併せてそちらもぜひチェックしていただきたい。

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