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第139回 ─ 映画「コントロール」から振り返る、ジョイ・ディヴィジョンの軌跡

突然のバンド解散を経て、残されたメンバーが選んだ未来とは……

連載
360°
公開
2008/03/27   14:00
更新
2008/03/27   18:07
ソース
『bounce』 297号(2008/3/25)
テキスト
文/北爪 啓之


  イアン・カーティスの死によって残されたメンバーが、途方に暮れつつも名前を変えて再出発を図ったバンドこそ、つまりはニュー・オーダーである。初期の彼らはまさに〈イアン抜きのジョイ・ディヴィジョン〉であり、カリスマを失った虚無と不安が音にも反映されていた。その閉塞感を打破したのが83年のシングル“Blue Monday”と、続くセカンド・アルバム『Power, Corruption & Lies』。当時のNYディスコ・シーンに接近していた彼らは、ここで持ち前のメランコリックなロック・サウンドにエレクトロニックなダンス・ビートを導入し、後の方向性を決定付けた。この〈ロック+ダンス・ミュージック〉の方法論と、高音域のベースがメロディーを牽引していくという独自のスタイルが後続のバンドに与えた影響は図りしれない。

 また同じ頃、地元のマンチェスターにオープンしたクラブ、ハシエンダの経営に参画していることにも注目したい。ハシエンダは彼らのホームグラウンドであり、後のストーン・ローゼズらを生んだ〈マッドチェスター・ムーヴメント〉の発信地でもある。ちなみにピーター・フックがストーン・ローゼズの、バーナード・サムナーがハッピー・マンデイズの曲をプロデュースしていたことにも留意しておこう。そしてバンドは、89年にクラブ・カルチャーの聖地であるイビザでレコーディングを行った5作目『Technique』をリリース。それまでの内向的な音楽性から一転した、享楽と楽観に満ちたアッパー・チューンに彩られた本作をもって、彼らはようやくイアンの呪縛から解放されたといえよう。その後、メンバー間の確執が顕著になりつつも(昨年ピーターは事実上脱退)、現在も第一線で活躍している。
▼ニュー・オーダーの作品を一部紹介。