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第139回 ─ 映画「コントロール」から振り返る、ジョイ・ディヴィジョンの軌跡

連載
360°
公開
2008/03/27   14:00
更新
2008/03/27   18:07
ソース
『bounce』 297号(2008/3/25)
テキスト
文/村尾 泰郎

〈ひとりの若者〉としてイアン・カーティスを捉えたホロ苦い青春映画!


2007年/イギリス 監督/アントン・コービン 出演/サム・ライリー、サマンサ・モートン、アレクサンドラ・マリア・ララ他、東京・シネマライズにて公開中。全国順次公開予定(配給/スタイルジャム)

  70年代後半、たった2枚のアルバムを残して解散してしまったジョイ・ディヴィジョン。その解散理由はバンドの中心人物、イアン・カーティスの自殺だった。イアンを追い詰めたものは何だったのか――映画「コントロール」は、彼が駆け抜けた人生を静かに見つめ直すビターな青春映画だ。

 デヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックを聴きながら詩を綴っていたイアン。周囲に対して挑発的でありながら、常に自分の存在に不安を感じていた彼は、ジョイ・ディヴィジョンが注目を集めるにつれてプレッシャーを感じるようになる。しかも10代の頃からいっしょだった妻と、新しい恋人との三角関係にも苦しんでいた。

 さまざまな苦悩に取り囲まれながら、それを乗り切ろうとして自滅していく姿は、ロックのカリスマというにはあまりに弱々しい。そんな〈コントロール〉を失ったイアンの魂の遍歴を美しいモノクロ映像で捉えたのは、バンドのプロモ・クリップを撮ったこともある写真家のアントン・コービンだ。この映画はイアンをジョイ・ディヴィジョンという伝説から解き放ち、ひとりの若者として描くことで、彼のリアルな息遣いを甦らせた作品である。