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第49回 ─ 祝・flower10周年!!!

Little Big Bee 新しい年、新しい物語のスタート

連載
Discographic  
公開
2006/02/09   12:00
更新
2006/02/09   17:18
ソース
『bounce』 272号(2005/12/25)
テキスト
文/駒井 憲嗣

 flowerを主宰する高宮永徹がレーベルとほぼ歩みを同じくするように続けてきたユニット=Little Big Beeが、結成12年にして初のフル・アルバムをリリースする。このたびリリースされる『WATERMAN』は、ジャパニーズ・ハウスのイノヴェイターとしてディケイドの活動を続けてきたキャリアをことさらに誇示するわけでもなく、一方では音の快楽と色気を知り尽くした者にしか出せない、狂おしいほどの美しさに満ちている。これまでジャンルを超えたアーティストの数々の名リミックスを手掛けてきたことから、〈有能なプロデューサー集団〉というイメージの強かった彼らだが、今作はクロスオーヴァーな感性と実験的精神をもって、高宮(プログラミング)と“PLAZA”藤崎(キーボード)、神宮寺謙次(ベース)の3人がバンドとしてのポテンシャルをあらためて注ぎ込んだ作品ということができるだろう。

「3人で集まって音を出しながら、おいしいフレーズが出てきたら拾っていく、そういう感じで作っていきました。70年代のソウル・ミュージックを聴いて育ったので、コンセプチュアルというか、アルバムだからこそできるような、1枚を通じてトータルとしての物語が聴こえるものを作りたいとずっと思っていた。だから曲順も含めてアルバム全体の聴かせ方というのを相当話し合いましたね」(高宮:以下同)。

 ドラマティックなアルバムのタイトル曲“WATERMAN”、深みのあるトラックとMika Arisakaの麗しい歌声が素晴らしい相性の良さを見せる“Solitude”など、水面から深い海の底を覗き込んでいるような、透明度の高い世界がうねりを持って続いていく。かつてマーヴィン・ゲイも取り上げたソウルフルな“Calypso Blues”の、韓国のヴォーカリスト=キム・パンジャンの「日本人でもアメリカ人でもない独特のエスニック感、なんともいえない色合い」という印象からインスパイアされた解釈、リル・ルイスへのオマージュと形容するピークタイム・チューン“Story Still Continues”など、中盤の畳み掛けるようなダンサブルな展開もあるが、流麗なピアノや浮遊感溢れるトラックと、音使いや空気感には不思議な清涼感が色濃く漂っている。しかしいわゆる〈チルアウト〉といったムードを決してダウンテンポで表現しないところに、日本のダンス・シーンを牽引してきたLittle Big Beeの静かな真面目さを感じてやまない。

「リミックスでも自分たちの作品でも、僕らは何か方法論を定めているわけではなくて、けっこう無意識でやっている。周りの人の話を訊くとそこが僕たちらしいところみたいなんですよ。自分たちが得意なパターンが出てきて、それをずっと続けてると、だんだんおもしろくなくなってくる。そうするとその手法はNGにしてしまうんです。メンバー同士で違う〈縛り〉を作ることで、スキルを追究していくっていうことをずっとやってきていますね」。

 移り変わりが激しく、かつトレンドに流されやすいダンス・ミュージックなら、なおさらそうしたセオリーを打ち破って活動を続けていくことは至難の業に違いない。しかし、それまでその多くを外国産に頼っていたハウス・ミュージック・シーンにおいて、先陣を切って作品をリリースし続けてきた彼らにとっては「自分のやりたいことを正直にやる」と至極ナチュラルなことだったようだ。クールでスムーズなアルバムを流れる、ダンス・ミュージックのエピキュリアンとしての情熱、そして包まれるような温かいヴァイブは高宮永徹の人柄やDJプレイを確かに映し出している。

「クラブではもちろんですけど、家とか車のなかでも、一遍の小説みたいな感覚で、ひとりで対峙して聴いてもらえたら嬉しいですね」。

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