SIZZLA:良い意味で自己中心的なリリックが特徴。普段自分が考えていることや主義&主張を客観的ではなく主観的に、ストレートにDJする。この傾向は年々エスカレートしている。だからこそ、見えそうで見えない事柄をズバリ歌詞にできるのである。
BUJU BANTON:客観性を備えたリリックが多く、ラスタになる以前から大衆のリアリティーを曲にしてブレイクしたアーティスト。矛盾と悪に満ちた社会を批判する曲ばかりでなく、ゲットーの親玉たちや時にラヴ・アフェアまでをも題材に。
LUCIANO:ラスタマンがどんなことを歌うのかを知りたければ、彼の歌詞をチェックすることだ。最近流行のソフトなラヴソングも歌うラスタ・アーティストも良いけれど、伝統的で王道を行く実力派なら彼の他はいない。この人にウソはないです。
ANTHONY B:ピーター・トッシュの系譜を継ぐ男。圧力、身の危険が降りかかってきそうな事柄にもビビらない。〈ローマを燃やせ〉はキリスト教信仰者ならずとも一度は耳にしておくべきだろう。豪快なキャラのため見落とされがちだが、理路整然とした批判を歌詞にする人。
PETER TOSH:彼の野望は道半ばで途絶えたが、音楽は脈々と生き続ける。娯楽としてのダンス・ミュージックとは別のベクトルを強烈に感じるが、ヤンチャな性格が良いバランスを生んでいたんだな。強面の男も憧れる、そんな人物の歌は誰だって聴いてみたいもんでしょ。
BUNNY WAILER:トッシュと同じように強烈に社会を攻撃する歌の数々。その豊かな音楽性も相まって人々の心と身体を躍動させる。どこか優しい眼差しを感じさせる歌声で、さまざまなトピックを題材にした人でもある。時代と風格に敏感だったのはサウンド面だけではなかった。
THE WAILERS:トッシュ、ウェイラーが在籍していた時代の“Simmer Down”や“This Train”などにはジャマイカの一般生活に密着したリアリティーがある。地元の都市生活者のために作られた音楽だけが持つ生々しい手触り、そして滲み出る悲しみが。
SLIM SMITH:街角の真実も、真実なことに変わりはない。ストリートのルードな男の生き様を歌にしたこの男。R&B、ソウル・ミュージックのカヴァーといった2本立てで人気をさらったシンガーだ。男の美学をリアルに綴った歌詞はジャマイカの必需品。
ビッグ・ユースのベスト盤『Some Great Big Youth』(Heartbeat)
BIG YOUTH:街角のリアリティーと言えばこの人も。どんなメディアよりも早くいろいろな事件と流行、風俗を歌詞にしたDJ。時には大上般に振りかぶり、時にはユーモラスに些細とも思われる事柄も曲にした。〈ラヴ〉を隠しテーマにした曲が多く、またそれが印象的なDJでもある。
MUTABARUKA:こちらは日本で言う〈社会派〉か。一時の怒りの感情だけでない深い思考と調査をもとに、問題を露わにするダブ・ポエッター。ジャマイカが抱える幾多の難題をもっとも正確に知っている人物であろう。解決の糸口もリリックに書き込めるんです、この人は。
L.K.J.:彼はジャマイカに住んではいないけど……。差別と不正には泣き寝入りはしません。しかし、彼のような人が出現しないと素通りしてしまう現実が多いというのがいちばんの問題なのかも。社会がいかに思考停止しているかを考えさせられます。
CULTURE:スケールのデカい歌唱と、大らかなサウンドが特徴。歌詞は終末を題材にした有名なあの曲や、ガンジャを誉め讃えるものまでラスタファリアンとしての視点で書かれている。身近な事柄よりは世界的な構造を問題視した歌が多い。
MIGHTY DIAMONDS:美しいハーモニーで苦闘を歌う。低所得者層の生活を等身大で曲にした名作の数々。これからへの期待さえ待ち続けられなさそうな人々を描き続けているグループだ。“Hane Mercy”に代表されるそんな人たちの心情をストレートに伝える歌が、胸を締めつける。
WINSTON JARRETT:決してビッグネームではないかもしれない。けれど本当の現実を歌っている人たちはジャマイカにたくさんいる。素晴らしいシンガーです。素晴らしい歌詞です。この人の作品は見つけたら聴いてみてください。心を揺り動かす音楽だから。
DENNIS BROWN:歌詞、題材と言うよりは、その音楽、歌声で人々を魅了した人物ですが、痛烈な曲も数多い。〈Struggle〉〈Suffer〉などの言葉が出てくる曲のなんと多いこと。それだけ多くの人たちが苦しんでいるということです。歌にしないわけにはいかなかったのです。