ジャマイカ 楽園の真実 楽園の苦しい現状を描いたドキュメンタリー映画から真実を学ぼう!
ジャマイカの首都、キングストン。ノーマン・マンリー空港を降り立ち、市内へ向かう車中から最初に見えるのが〈Support Jamaica, Buy Jamaican〉と入ったバナーだ。〈ジャマイカを支えるために、ジャマイカ産を買おう〉というこのキャンペーンは、最近まで見られなかった風潮だ。〈グローバリゼーション〉という名のもと、世界銀行と国際通貨基金から融資を受け取ったがために、高い利子と不利な条件の貿易で、ジャマイカの経済は苦しんでいる。その現状を告発したのが、ステファニー・ブラック監督によるドキュメンタリー映画「ジャマイカ 楽園の真実」だ。ジャマイカと北米で公開されてから4年経った現在の成果を、監督自身に訊いた。
「大きなバックアップがないのに、多くの国に配給されたのは成果だと言えるでしょう。ただ、貧しい国がさらに貧しくなるシステムは悪化しています。ジャマイカだけでなく、南米やアフリカの国々でも同じことが起きているのですから」。
慢性的に飢えに苦しんでいる層がいるジャマイカで、競争に負けて牛乳を土に捨て、バナナ作りを諦めざるを得ない農夫たちの苦しいコメントが映画には収められている。
「安価な外国製品が入ってきた結果、国内でお金が回らなくなり、仕事も減って犯罪率が高くなる──悪循環はますます酷くなっています。最近始まった〈Support Jamaica, Buy Jamaican〉のキャンペーンは、ジャマイカの人々も本気になったサインでしょう。ローカル産と輸入物を分けて表示する動きもあります」。
この窮状を反映して生まれたお馴染みのヒット曲も少なくない。T.O.K.“Foot Prints”然り、ダミアン・マーリー“Welcome To Jamrock”然り、リッチー・スパイス“Earth Ah Run Red” 然り。
映画はレゲエとコインの裏表の関係だ。監督自身、この作品のリサーチのためにジャマイカに滞在していた期間、プロモ・クリップ撮影で資金を集めて多くのアーティストと知り合った。
「ブジュ・バントン、ムタバルカ、マーリー・ブラザーズなどがサントラに参加したり、プレミアに足を運んでくれたりしました。それも嬉しかったのですが、私としては映画に出演してくれた農夫たちが、作品の出来に満足してくれたのがいちばん嬉しかったですね。もちろん、レゲエは過度な商業主義に対して否を唱える音楽であり、私自身がインスパイアされ、この映画がジャマイカで撮られなければならなかった理由ではあります」。
イギリスで公開された際は、リントン・クウェシ・ジョンソンがガーディアン紙にレヴューを寄稿したうえ、プレミアで詩の朗読をしてくれたとか。レゲエ大国、日本ではやっと2005年に公開された。
「日本に足を運んでみて、ジャマイカ以外の国でもっともレゲエが愛されている国だという話は本当だと実感しました。その国でDVD化されて、さらに多くの人に観てもらえるのは嬉しいですね。ただ、リズムほどはリリックに込められている意味やメッセージが届いていないとも感じました。この2つは本来セットになっているものなのですが……」。
まず、この作品を観ること。それから、アーティストやプロデューサーに一銭も入らないミックスCDではなく、正規盤のレゲエ作品をきちんと買うこと。それが、私たちにできる〈Support Jamaica, Buy Jamaican〉であることを、お忘れなく。
ブジュ・バントンやムタバルカの楽曲が収録されているサントラ『Life+Debt』(Tuff Gong)