細野晴臣+高橋幸宏=SKETCH SHOW! この巨匠2人が3つの〈お題〉で描き下ろした特別ギャラリー〈SKETCH BOOK SHOW〉開催中!!
高橋幸宏、そして細野晴臣。日本が誇るマエストロ2人奇跡の邂逅、それがSKETCH SHOW。みずからユニットではなく〈バンド〉と公言する彼らのデビュー作『AUDIO SPONGE』は、いわゆる大御所とは思えぬ、転がり続ける意志力に満ち溢れている。果たしてその転がる先には……!?
──コントを意味するバンド名から、もう少しコミカルなものになるかと思いましたが、出来上がった本作はシリアスですね。
細野「そう、シリアスだよ。最初の思惑とは裏腹にどんどんいろんなものが出てきた」
高橋「結局、細野さんや僕は音楽を作ると真面目になっちゃうんです」
細野「そう。“Turn Turn”の歌入れをしている時に、〈この2人の声が重なった感じってどっかで聴いたことがあるな〉って思ったときに、〈あ、YMOじゃないか!〉ってことに初めて気が付いた(笑)。それだけ今は(YMOを)客観的に見れるようになったんですよ。そこから変わってきましたね」
高橋「やっぱりそれまでは、邪魔な、のしかかってくるようなものだったんです」
──SKETCH SHOWは、ある種出来上がってしまっている音楽を作る方法論を、意図的に壊す作業だったようにも思えるのですが……。
高橋「本当はいつだって変わりたいんですよ。YMOを始める時だって、それ以前のことに飽き飽きしていたし、そこに次の何かがあるような気がして楽しかった。で、YMOをやめた時に、ミュージック・シーンのなかで自分を活かすためにはどうしたらいいかなって20年近く考えてきて……。でも、それにも正直飽き飽きしてきて。次に行けるんだったら、行ってみたいって気持ちがあるんです、僕には」
──変わることってすごくエネルギーが要る作業じゃないんですか?
高橋「それがね、要らないんですよ。エネルギーを必要とするときは何もできない」
細野「世の中変わっていくほうが自然なんです。変わらないのは余計な力を使っているわけ」
──曲名に〈TURN〉という言葉が多用されていますが、それは〈変化〉することを意図的に考えた結果なのでしょうか?
高橋「これは、偶然と必然が一致したようなものですね。偶然って、後で考えたら必然であることが多いから。今回、そんな偶然はすごくたくさんあった」
──ブライアン・ウィルソンを想起させる“Wilson”や、ジョージ・ハリスンのような“Flying George”なんて曲もありますが……。
高橋「今回バンドだから、そんな気楽さがあるわけですよ。ソロではできない。それがバンドの良さでもあるかもしれない」
細野「そう。責任を二分できるというか」
高橋「ブライアンっぽい曲がやりたかった時に、映画〈キャストアウェイ〉のなかに出てきた〈Wilson〉の話(注:無人島にたどり着いた主人公が、Wilson社のバレーボールを心の支えに生き延びる話)を観て、曲にできるかもしれないと思った。で、細野さんが、ボールの〈Wilson〉とブライアン・ウィルソンの共通性を紙に書いてくれるわけですよ。〈あのWilsonは砂の上にいた。ブライアン・ウィルソンは砂の部屋にいた〉とかさ(笑)」
──今回はどちらがリーダーシップを?
高橋「いつもは僕が細野さんの尻を叩く形なんだけど、今回はじっと見てました。でも、どんどん加速していくんですよ、細野さんが。最後はものすごいスピードになった」
細野「最後が本当のスタートだって感じだね。しかも締めきりがあるから、そこで止めなくちゃならない。本当はその先があって、ずっと作り続けたいわけ」
高橋「そう。ただ、作り続けたら全然違う作品になっていたでしょうね。バンドって過程があるじゃないですか。それが見えないとおもしろくない。1枚目はご挨拶で、2枚目でいい感じになって、3枚目でケンカして別れる、と。でも3枚目は荒んでいるけれど、いい曲が入っているんだよね(笑)」
細野「じゃあ、最初に3枚目作る?(笑)」
──さてさて、そんなわけで、〈SKETCH BOOK SHOW〉の始まりで~す!!