カスタマーズボイス一覧

ベートーヴェン: 交響曲全集 / ロヴロ・フォン・マタチッチ、他

イタリアの放送オーケストラを振った前回発売の全集より遥かに良いです。演奏、音質、オーケストラの技量のすべての面で。この演奏を聴いて思うに、マタチッチという指揮者は、晩年に向けてどんどん上り調子になっていったのではないでしょうか。枯淡の境地とか、テンポが遅くなるとか、そういった意味では全く無く、技量・熱量・芸風全てにおいて、どんどんすごくなっていったのではないか、と。枯れるどころか、さらに熱く、さらに細かく、なっております。このベートーヴェンは細部に渡るまで考証が加えられ工夫が施され、おやっと思う場面が多いのですが、それらは恰幅の良い芸風の中で、大きな流れの中で行われるので、全く不自然にも姑息にも感じません。大変楽しく、思わず共感して没入できるベートーヴェンです。

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kaki001さんが書いたカスタマーズボイス

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(全17件)

イタリアの放送オーケストラを振った前回発売の全集より遥かに良いです。演奏、音質、オーケストラの技量のすべての面で。この演奏を聴いて思うに、マタチッチという指揮者は、晩年に向けてどんどん上り調子になっていったのではないでしょうか。枯淡の境地とか、テンポが遅くなるとか、そういった意味では全く無く、技量・熱量・芸風全てにおいて、どんどんすごくなっていったのではないか、と。枯れるどころか、さらに熱く、さらに細かく、なっております。このベートーヴェンは細部に渡るまで考証が加えられ工夫が施され、おやっと思う場面が多いのですが、それらは恰幅の良い芸風の中で、大きな流れの中で行われるので、全く不自然にも姑息にも感じません。大変楽しく、思わず共感して没入できるベートーヴェンです。

超有名な音源。これらがはじめてCD化された1980年代末以来、国内外様々なレーベルから発売を重ねてきて、その都度音質向上が謳われてきたものの、聴くとがっかりというか、年代的にまあこれが限界かなと思ったものですが、今回のは頭一つ抜きん出ています。戦後発売の正規SPで状態の良いもの、くらいのレベルで聴けます。全盛期ホロヴィッツの鬼気迫る演奏は今までの音源でも伝わってきましたが、オーケストラの解像度が上がっているのが嬉しいです。ワルターにはおとなしい正統派のイメージがあってあまり聴かないのですが、こんなに熱い指揮者だっけ、と思いました。しかもいわゆる爆演型ではなく、造形は巨大かつきっちりしていて、それでいて熱いのです。あくまで、戦前戦後あたりの音源を聴き慣れている方向けではありますが、これら2音源の、今のところ決定盤と言って差し支えないでしょう。チャイコンのピッチは修正されています。

壮年期チェリビダッケの記録。ブル8を有名な90年東京ライブと比べると各楽章3~4分短いのですが、アプローチは変わらないと思います。より情報量を増やして磨き上げた結果が90年代の姿であるのに対し、本盤では磨きは(特に金管で)物足りないものの、全体的構築感としてはより均整が取れているとも言えます。どちらが良いとは言えません。80年代後半以降の演奏はちょっときつい・・という方にも、お薦めできる演奏です。

昨今の、円熟し磨き上げられたブロムシュテットの指揮ぶりから見ると若い印象ではありますが、透明で美しい弦パートの磨き上げ方などは今日に通じるものがあります。北欧的な民族性を全面に出した演奏ではなく、後期ロマン派の叙情性と構築性を意識した、より汎音楽的な表現だと思います。そのために物足りなさを感じる方も、いらっしゃるかもしれません。しかし、純粋に、理屈抜きに、美しい仕上がりです。

ミケランジェリのタッチは粒が完璧に揃っているのですが、やはり美しく揃っているギレリスとは一味違い、一音一音が次の音に移行するギリギリまで持続して美しくつながっていく所に、その特徴の一つがあるのではないでしょうか。これが華麗で丸みを帯びた美しいラインを紡ぎ出すのでは?この特徴はブラームスの仄暗い曲想に絶妙にマッチし、ベートーヴェンの緩徐楽章において憂いを湛えた無限の美しさを醸し出しています。

近年益々充実のシャイー、本作は2004年コンセルトヘボウ管との掉尾を飾る演奏。全集の完結作でもあります。そのような感慨を込めて聴くからでもありましょうが、万感の思いをこめて一音一音を慈しむように歩む第4楽章は本当に感動的。全編に亘ってうねる美しい弦楽器パート、緻密に譜面を分析し尽くした丁寧な音作りは、今も変わらぬこの指揮者ならではの流儀。本作を気に入った方は、是非全集版に進んで下さいね。

気心の知れた仲間と、楽器を演奏する歓び。そんな言葉が思い浮かぶ、心温まるアルバム。火花散るような緊張感とは無縁ですが、それでいてルーズにはならず、楽曲を知り尽くしたメンバー達の見事に合った呼吸の下、それぞれのフレーズを一気に弾ききっていきます。緩急のつけ方、場面場面で全面に出る楽器とサポートに回る楽器の切り替えなど、絶妙の一言。リラックスして、楽しく聴き通して下さい。

タワーさんの精力的復刻によりポール・パレーの真価が世に知られるところとなったのは、昔からのファンとして嬉しい限り。両曲とも同曲の代表盤に自信を持って推します。Mercuryの初期ステレオがいかに優秀録音であったかを知るにも好適で、例えばサン=サーンスの終楽章を初めて聴かれれば、自然な音場、ダイナミックレンジの広さ、奥行きの懐深さ、驚異的な分離の良さ等、吃驚されることでしょう。SACD化期待!

全曲纏めて聴く機会の少ない楽曲ですが、この2枚組であれば一気に聴き通せます。ヴァイオリンとチェンバロは精密に、緻密に絡み合い、スリリングな推進力を醸成しています。シェリングの音色はあくまで明るいのですが、地中海世界の、どこか物悲しげな明るさを思わせます。チェンバロは強弱表現の苦手な楽器ですけれども、それを逆手にとるように、ある意味通奏低音のような作用を発揮してヴァイオリンを支えています。

アラウ氏といえば本作より15年前、ライブでクレツキ、マルケヴィッチら強面指揮者をバックに従えブラームスの協奏曲を豪快に弾き倒す、真に巨匠的な演奏が強く印象に残っています(ARCHIPEL)。年月を経て当盤録音時は76歳。一音一音を慈しんであくまで丁寧に、粒を完璧に揃えて、しかし決して小さくはまとまらない重量感。楽曲は違えども、さらなる高みに達したことが窺われます。録音も秀逸で美しい。

シーケンサーの如く驚くべき正確さのワルトシュタイン、LED ZEPPELINのように音塊をぶつけてくる熱情、穏やかな中ときに独白的感情の発露を差し挟む告別。それぞれ第1楽章の印象です。緩徐楽章では一転、漆黒の深みの中での思索を示し、そして怒涛の終楽章へ。昔、ギレリスにはまる契機となった音源たちが1枚に纏められて、嬉しい限り。エントリーに好適盤。ぜひ、彼がDGGに遺した全曲を聴いていただければ。

CD初期にフィリップスから出ていたものは潤いに欠ける音で、欲求不満が募りました。丹念にリマスターされた本盤により、この演奏の真価が明らかになりました。86年最晩年のライブ(THARA)と比べ各楽章とも1分前後早いもののアプローチは同じで、ヨッフム翁の本曲に対する一貫した姿勢が窺えます。ただ、例えばカラヤンの燃え上がるようなライブとは違い、ライブとしては大人しい印象があるのも事実です。

まず、この楽曲のために指揮法を学び、譜面を研究するのみならず校訂まで手掛け、実際に演奏まで漕ぎつけるというその情熱に、敬意を払わずにはいられません。演奏も大変立派なもので、特に終楽章の弱音部は絶品ですし、地の底から湧き上がってフィナーレに向かう一連の流れは大変見事。ただ、ただ、本当に惜しくも、まだ何かが足りない。テンシュテットの情念、クレンペラーの荘厳。今後に期待して4点!。

印刷字体で言えば楷書体のバッハ、ですが決して教科書体ではない。これだけの有名曲・有名演奏ひしめく中で、例えばエネスコのそれのような、演奏家を全面に出したアクの強い演奏には分類できません。ですが個性は随所に光り、その音色も併せブラインドでシェリングさんの演奏だと判別できる。ではどの箇所にその個性があるか・・・、文字で表現することは難しい、そんな演奏家だと思います。

オーケストラを存分に鳴らし、壮大なバッハ像を示しています。自由な表現への意欲みなぎる小澤さんの快作。悪く言えば大げさな演奏とも言え、今日このようなバッハが新録で出ることは稀でしょう。しかし、原作の時代に忠実であることだけが音楽ではないと思いますし(もちろんそれも音楽ですが)、多様で自由なアプローチがあってよい。何よりもこのアルバムは「楽しい」のです。

ベートーヴェンの方は有名な演奏ですが、個人的には線の細さ・繊細さが楽曲とやや合わない感じで、4点。ただ、シュニトケが良い。静かな導入部から徐々に参加楽器が増えてじわじわと盛り上がっていく、その過程で一貫してクレーメルの存在感が際立っています。こういう曲は本当に上手い。極端な言い方をすれば、古典曲のように楽しめます。空虚な打楽器の響きが、日本の古楽のようにおどろおどろしいことも申し添えておきます。

ブラームスの第一楽章、堂々たるといった形容が似合うスタート。一転、第二楽章の夢見るような叙情性の発露。終楽章まで聴き通して、一曲の交響曲を聴き終えたかのような満足感。その構築力と見通しの良さに脱帽。シューベルトの第一楽章、確信に満ちた強打に鳥肌が立ち、弱音との強烈なコントラストも見事。録音は少ないものの、やはり二十世紀最高のピアニストの一人ですね。

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