メンバーズレビュー一覧

平手造酒さんが書いたメンバーズレビュー

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(全18件)

ベートーヴェン「田園」が素晴らしかったので購入していたものの、聴いていませんでした。先日購入したブラームス4番があまりに素晴らしかったので、その流れで聴きました。ふっくらした暖色系の音色は、子どもの頃聴いた古い真空管アンプを思い出しました。昔から聴いている演奏なのに、本盤は晩年特有の弛緩した感がまったくありません。この名演を名演として初めて接することができたような気がします。本レーベルは、ワルターとクナッパーツブッシュに特に相性が良さそうです。ベートーベンもブラームスも、続編を楽しみにしています。

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驚くほど素晴らしい音。しっとりした弦、深みのあるホルン。数十年聴き続けていた乾いたがさついた音は、オーケストラと西海岸の気候の影響だと思っていました。好みの問題ですが、本家の最新リマスタリングは、とても美しくはありましたが、まるで漂白剤を通したかのように、聴き惚れるに至らりませんでした。本盤でこの演奏の本当の姿を知ることができたような気がします。1~3番も楽しみです。

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漆原さんのバッハの思い出は、日比谷のイイノホールで開かれたデビューリサイタルか、ヴィニャフスキーコンクール後の同ホールでのリサイタルまで遡ります。素晴らしい演奏でした。バッハ無伴奏ヴァイオリンの自分にとっての原点は漆原さんです。10数年前に録音されていたのは知っていましたが、当時はしかめ面のバッハのイメージが強い無伴奏は敬遠していました。ふと昔のことを考えているうちに漆原さんのバッハが懐かしくなって入手しました。素晴らしくて素敵な演奏。45年前の日比谷の夜に戻ったような錯覚すら感じ、とても嬉しかったです。その頃にもおそらく感じた、水草がなびく姿が見える透明な清流です。音に触れることで心が研ぎ澄まされます。特にパルティータ3曲のたおやかな美しさは、従前のこの曲のイメージとは違う軽妙で美しい舞曲に感じました。演奏に加え、録音もまた素晴らしいです。CDだけでなくe-onkyoでハイレゾ音源でも聴くことが出来ます。どちらで聴いても小宇宙を感じさせる自然な響きは魅力的です。10数年聴かなかったことの後悔以上に、今こうして出会えたことに感謝しています。

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1977年11月の杉並普門館は、黄金の組合せによるベートーヴェン交響曲全曲という垂涎のプログラムでした。高い競争率とチケット代で諦めたのが、高校生の自分でした。年末に民放FMで放送されるのを、機器の前でVUメーターとにらめっこしながら録音したのが懐かしいです。xrcdといえども音は記録用レベルです。録音で聴くと、曲のよって出来不出来は当然ですが、力で押し切るやっつけ仕事に聴こえる曲もあります。7番はミスの後遺症か力任せに感じます。8番は流しているのか雑で密度が薄く、凝縮されたベートーヴェンには至っていないようです。9番は畳みかける迫力が凄いです。2、3番は確かな名演で、特に3番は涙も枯れる哀しみさえ感じました。テレビ放送された6番は、その頃のスタジオ録音に近いまとまりの良さに加えて、楽章を追うごとに熱を帯びてきて終楽章が名演です。同じ日の5番は前半の力の入りをそのまま引き継いだ熱い演奏で聴かせますが、暑苦しさが時代を感じます。

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チェリビダッケのブルックナー8番は、幸いにして1990年に2公演聴いています。壮年期の精悍さは消えて、特にオーチャード公演はひたすら遅くて、耳をつんざくほど音が大きかったのは憶えています。発売されているサントリー公演では、このテンポに戸惑わないミュンヘンの合奏力に驚愕しましたが、感動するには至りませんでした。そんな感想の後に出会った1994年のリスボン公演。新宿の大手レコード店で普通に売られていた怪しいレーベルの当演奏は、テンポはさらに遅いものの、滑らかな音色は耳に心地良いものでした。元の録音は16bitの放送用でしょうから高音質とは言えませんが、チェリピタッケの最良の姿を音で伝えていると思っています。それから20数年後、xrcdとなった当演奏を聴くとはなんとも感慨深いです。5番比べて強気の値段設定は何なのだろうと思うのも付け加えておきます。

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20年以上前に会場で聴いた演奏です。ソリストの思いと指揮者の方向性の間に齟齬があったというのがその時の印象でした。両者の間に険しい緊張感以上の険悪な雰囲気する感じられました。そのため、発売された録音を聴くのが正直怖かった。しかし、聴いて驚きました。協奏しているというより、芸術家同士の真剣勝負なのでしょうか、音からも緊張感がびしびしと伝わってきます。それがプラスに働いて、とてつもなく力強い素晴らしい演奏です。特に第1楽章、ソロを受けて、かぶせるかのようにブラームスとはこう鳴らすのだとでも言いたげなオーケストラの強奏は朝比奈隆ここにありなのでしょう。

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このドヴォルザークは素晴らしいです。凄味すら感じます。完璧な技巧で、筋肉的ともいえるパワーで圧倒されます。抒情性や民族性は楽譜にあればある、なければないと開き直った感すらありますが、楽譜をひたすら信じているからでしょう。この演奏の後、いったい誰がレコーディングに臨めるのか、とまで考えてしまう新しいスタンダードの登場です。もちろん、ヒナステラもサラサーテも名演なのですが、このドヴォルザークの後だとどうしても印象は薄くなってしまいます。

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大きな期待を持って聴き始めた当初、良さをまったく理解できませんでした。ミルシテイン、ユリア・フィッシャー、五嶋みどりと有名どころを聴いてきた中で、特に特徴もなく淡々と弾いている感が強くて、まるで能面のような演奏とでも例えましょうか。ストイックなのだろうけど、笑顔がないと感じたのです。ドルフィンで録音してほしかったと思ったものです。オペラシティでパルティータ2、3番、ソナタ3番を聴いた印象も同じで、実演と録音の差をほとんど感じなかったのも驚きでした。優秀録音なのでしょう。
それでも何度か繰返し聴いてみました。昨日、パルティータ1番を聴き、せせらぎのようにゆっくりと音楽が身体にしみ込んでくるのがわかりました。ようやく扉を開いてくれたのでしょう。これからも聴き続けます。

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戸田さんのバッハを聴いてからもう何年も経ちました。九段下の文庫カフェ「みねるばの森」の上の階での小さな感動的なコンサートでした。彼女の演奏を最初に聴いたのは、1995年1月、阪神大震災直後の大阪フェスティバルホールでのメンデルスゾーン作曲のヴァイオリン協奏曲でした。正直、通俗曲とメインのブラームスの交響曲の前座程度に思っていたこの曲から聴こえてきたのは、香り立つような高貴な響きでした。バックは朝比奈隆指揮大阪フィル。その日、東京から尼崎で被災した親戚の見舞いに行き、惨状に心が折れそうになりながらたどり着いたフェスティバルホールで、戸田さんとの素晴らしい出会いで、少し元気が出ました。そして、時間を経て九段下でのコンサート。その時感じたものより、今回の録音はより深くより力強いです。よく、演奏家の姿が消え楽器だけが音楽を奏でているという論評を見ることはあります。この録音を聴いて、戸田さんのバッハは私には真逆に感じました。楽器ではなく戸田さんから泉が湧き出るように音楽が発しているのではないかと。指揮棒の先から音楽が奏でられているというのをどこかで読んだことがあります。まさに究極の指揮だと思いますが、それと同じようなことを今回の録音から感じました。ようやく出会えた、それが今の実感です。

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今度はベルリン・フィルとの共演と聞いて、二匹目のどじょうと最初は思いました。ウィーンとの未収録曲だけの1枚ものにすると想像していましたが、全曲収録とは驚きでした。もちろん、ウィーンとの録音のように後から全曲盤を出してくるより良心的だとも思います。不思議なのは配信が作曲者自身の解説や拍手を省略していたのに、CDには入っていたことです。これはブルーレイの音声をそのままCDにパッケージしただけになります。セットでの販売ですから、CDは音楽だけの方が楽しめると感じました。

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シリーズ最初の8番がハース版でしたし、3番もノーヴァク1877年版と1889年版よりも長い版でしたので、版の経過が複雑な2番もハース版で録音してもらえるのではと期待しました。残念ですが、今最も一般的なキャラガン1877年版でした。2番はマイナーなので、指揮者自身もそれほどこだわりはなく、全集のパーツとして録音しただけなのかもしれません。美しさが散りばめられた2番は、3番をより野性的、原始的にしたような曲です。そのため、脇道ばかりのハース版は岩山を歩きながら、眺望を楽しむため寄り道をするような魅力にあふれています。寄り道は危険で、日没までに帰れないと困るので、今は避けられているのでしょうか。
演奏はウィーン・フィルの美しさを十分に発揮したものです。荒々しさはありませんが、安心してお勧めしたい録音です。

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マーラー:交響曲 第3番 ニ短調

小泉和裕、他

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

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ウィーン・フィルのブルックナーに接すると、他のオーケストラに失礼なのは承知で、ウィーン・フィルのための曲なんだなと思ってしまう。熱のこもった演奏、豊穣な響き、すべてがあるべき姿を再現しているのではないかと錯覚する確信に満ちたオーケストラの面々。終楽章の冒頭だけが力みすぎなのか、少し濁っていると感じたが、素晴らしい演奏だった。1988年のカラヤンとの違いは、息を凝らして聴いてしまうカラヤン、それでも最後まで一気に聴かせる。むしろ、ティーレマンの方が自然体で聴き始めたが、聴き手に体力、集中力を求めている気がする。しかし、それも心地よい疲れになる。

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世評の高いエソテリック盤の2番を購入しそびれて地団駄踏んでいたので、Definition Seriesと聞いて嬉しかったです。木管の音色が美しく、それだけで幸せになるような気分でした。演奏は世評の高い2番よりもたおやかな3番、遅めのテンポで終わる1番が楽しめました。4番のテンポは超個性的でウィーン・フィルがよく受け入れられたなと思いました。何よりもマスタリングが素晴らしいのか、心地よい香りの熟成ワインとでも例えようかと思うウィーン・フィルの素晴らしい音色を楽しめました。私にとって、ブラームス交響曲全集としてはマゼール(バイエルンとの自主盤、これもタワーで出してほしい)と並ぶ愛聴盤となりそうです。

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見通しの良い造形美、持続する緊張感。昔、尾高忠明さんがミュンシュのブラームス1番を評して「交響曲はこう演奏するもの」と語っていたことを自ら表現するように終盤の盛り上がりも凄い。EXTONの録音も素晴らしい。しかし、十八番のエルガーの域には達していない。無い物ねだりなのはわかっているけど。

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1993、1987年の放送用。16bitをSACDで発売する意味はあるのだろうか、とはいえ成功例もあるので期待して購入した。シューベルトは自主制作盤がある名演で、色付けがない素の音で少し物足りなさを感じていた。Profil盤はそこに仄かな色香を加え聴きやすかった。Altus盤の迫力は凄い、特にチャイコフスキー。ノイズを消さずに高域を強調している。私には聴き疲れする音作りに感じた。

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エルガー:交響曲 第1番

尾高忠明、他

5:
☆☆☆☆☆
★★★★★

収録されている拍手とブラボーは、果たしていつの日、どの会場のものでしょうか。それとも、別々の日なのでしょうか。聴くたびに戸惑ってしまいます。この曲のラストは大英帝国の栄光を奏でているというのが、私の勝手な想像なのですが、黄昏れつつある夕映えの美しさを叩き壊すような拍手、ブラボーはマイナスでしかありません。演奏はもちろん素晴らしいです。芯の太い大フィルの音は聴き応えあります。

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購入直後に2700円も値下げするなんて...。やはりAltusの販売方法は信用できません。内容以前の問題ですね。Altusの新譜には手を出してはいけません。

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