Cranさんのカスタマーボイスに心動かされ、改めて聴き直してみた。確かに仰せの通り、素晴らしい演奏だ。今さら「皇帝」なんか、と小馬鹿にして、お座なりにしていた。
テクニックを前面に押し出すような野暮な演奏ではなく、エゴロフが奏するピアノは一音一音が粒立って生きている。一瞬一瞬を愛おしむ、刹那に命を懸けている音だ。すべてを超越した天才の響きだと思う。エゴロフを支えるサヴァリッシュの指揮も冴えわたっている。
ベートーヴェンが愛した、モーツァルトのニ短調協奏曲との組み合わせもベストだと思う。「皇帝」の高揚感に満たされた余韻のあとに奏でられる、モーツァルトの悲しみの旋律が心に沁みる。
ヴァン・クライバーン国際コンクールで、なぜエゴロフが予選落ちしたのか、未だに謎だ。
ユーリ‣エゴロフ享年三十三歳…