本盤にも音の移動の推進力を確認。「合唱」交響曲でも冒頭より歌唱開始の直前までに認めた。「英雄の生涯」は作者の交響詩スタイルもの。30代前半で完成をみる。この人20代前半で「死と変容」を作っており、簡素かつ明白な表現方法は確立済み。本作は或る意味で手法のアンソロジーめいている。「シェエラザード」第3楽章を観る。夢魔の境域であるが、実際にはメタモルフォーゼンの自己確認かも知れぬ。すなわち、手放しの情緒と客観的認識との描き分け。かつてFM日曜喫茶室で、ゲストのトキワ荘住人の面々が、映画に学んだ話をした際に、シェエラザードが流された。この曲にその人々が好感をもったことをいかにもそうであろうと思った。うつくしい。