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クラシック
CDアルバム

細川俊夫:大鴉(THE RAVEN) ~ メゾ・ソプラノと12人の奏者のためのモノドラマ

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フォーマット CDアルバム
発売日 2015年10月21日
国内/輸入 国内
レーベルNaxos
構成数 1
パッケージ仕様 -
規格品番 NYCC-27298
SKU 4562240279562

構成数 : 1枚
合計収録時間 : 00:00:00

【曲目】
細川俊夫:大鴉-メゾ・ソプラノと12人の奏者のためのモノドラマ
テキスト:エドガー・アラン・ポー「THE RAVEN-大鴉」
委嘱:ユナイテッド・インストゥルメンツ・オブ・ルシリン
1.エドガー・アラン・ポー「大鴉」朗読
2.大鴉-メゾ・ソプラノと12人の奏者のためのモノドラマ

【演奏】
シャルロッテ・ヘレカント(メゾ・ソプラノ・朗読)
ユナイテッド・インストゥルメンツ・オブ・ルシリン(アンサンブル…2)
川瀬賢太郎(指揮…2)

【録音】
2014年10月29日、31日 アステール・プラザ(広島)

  1. 1.[CDアルバム]

作品の情報

商品の紹介

エドガー・アラン・ポー(1809-1849)の「THE RAVEN-大鴉」は1845年に「イヴニング・ミラー」紙に掲載され、瞬く間に人気を博した作品。物語を進行していくメゾ・ソプラノのシャルロッテ・ヘレカントによる表現豊かな歌唱と語り、それを彩るルクセンブルクの名アンサンブル「ルシリン」の精緻なアンサンブル。恐怖の中に点滅する甘美な余韻までが見事に捉えられた、緊迫の音楽劇。 (C)RS
JMD(2015/10/15)

エドガー・アラン・ポー(1809-1849)の「THE RAVEN-大鴉」は1845年に「イヴニング・ミラー」紙に掲載され、瞬く間に人気を博した作品です。恋人を失って嘆き悲しむ主人公の元に、人間の言葉を操る「大鴉」がやってきては彼の心をかき乱し、その謎めいた言葉はやがて主人公を狂気の淵へと追いやるというものですが、全編を貫く高貴な様式と、文学性、そしてあらゆるところに散見される古典への比喩など、多くの点で人々の心を捉えて話さない魅惑的な物語詩なのです。日本が誇る作曲家である細川俊夫氏(1955-)も、そんな「大鴉」に魅入られた一人であり、彼はこの不可思議な物語から、日本古来の伝統芸能である「能」の世界観を見出し、これらを融合することで新たな宇宙を創り上げています。物語を進行していくメゾ・ソプラノのシャルロッテ・ヘレカントによる表現豊かな歌唱と語り、それを彩るルクセンブルクの名アンサンブル「ルシリン」の精緻なアンサンブル。恐怖の中に点滅する甘美な余韻までが見事に捉えられた、緊迫の音楽劇です。
ナクソス・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2015/09/24)

《大鴉について》細川俊夫
日本の伝統的な物語のなかで、動物や植物が、人間と交流を持ち、人間と会話をするような物語はよくあることである。アニミズムの伝統の深いアジアでは、西洋のように、人間と動植物が、はっきりした境界線を持つことなく共存している。エドガー・アラン・ポーの「大鴉」のテクストを知ったとき、私は日本の能の劇作品を思い浮かべた。能は人間中心主義ではない。その主人公は、動物や植物であったり、またすでにこの世にいない霊であったりする。
ポーの作品は、近代人の理性的世界に守られた存在に、不気味な動物「鴉」が侵入して、その理性的秩序の世界が、崩壊する過程が描かれている。私は、この作品を一遍の能ドラマとしてとらえ、それを一人のメゾソプラノとアンサンブルによるモノドラマで表現しようとした。本来は男性が主人公のこの「大鴉」を、女性によって語らせ、歌うようにしたのも、能では、役が女性の場合であっても、男性がそれを演じるのと逆の関係にしたのである。
このポーの主人公は、嵐の夜、一人で回想にふけっている。ここに起こるドラマはすべて、彼の心の中で起こる想像であり、夢、幻かもしれない。(能では、ドラマはほとんど夢のなかの出来事である。)主人公は、亡くなった愛する恋人レノーアの追想にふけっている。
その時に現れるのが、大鴉である。そうするとこの鴉は、レノーアの亡霊かもしれない。「Never more」としかしゃべらない、不気味な霊としての鴉。その霊との交感、会話がこのポーの作品である。
私の音楽で、女性が中心となる作品の多くは、その女性を冥界とつながろうとするシャーマンととらえている。この私の"The Raven"での、メゾソプラノも、鴉の不気味な自然の力に、理性を崩壊させる近代人であると同時に、冥界、人間の不可思議な世界との交感をしようとするシャーマンでもある。その場合、死んだ恋人、レノーアは主人公の声に乗り移って、歌い語り、発狂するのだろうか。
人間の理性の世界と、その理性では捉えることのできない狂気の世界、理解できない自然の沈黙との関わり。このように私はポーを読み解くことにより、この作曲を行った。
この作品を、私のオペラ「松風」において、村雨役を歌ったCharlotte Hellekantとルシリン・アンサンブルにささげる。
ナクソス・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2015/09/24)

<ユナイティッド・インストゥルメンツ・オブ・ルシリン(アンサンブル・ルシリン)>
ユナイティッド・インストゥルメンツ・オブ・ルシリンは1999年、西欧の中心部に位置し、欧州文化が高度に集約されるルクセンブルク大公国で現代音楽の創造と推進を目的とするアンサンブルとして、有志の音楽家により結成された。弦楽四重奏にピアノ、打楽器のアンサンブルを基本に、楽曲によって管楽器を加えるフレキシブルな楽器編成を採っている。本拠地ルクセンブルクを中心に世界各国への客演を含めで年に20回から30回のコンサートを行っている。その演奏は、知的要素、精神性、視覚などを複合した、独特な表現で高い評価を勝ち得ている。また、ルシリンは演奏活動のみにとどまらず、演奏家、作曲家、舞台芸術家の集う創造の場として、新ウィーン楽派から新世代のアメリカのミニマリスト音楽、即興演奏や電子音楽など、現代の音楽創造の広い分野をカヴァーしている。 これまで楽曲を委嘱し初演した作曲家は、ルカ・フランチェスコーニ、ドンチャ・デヒニー、ジャン=リュク・ファフシャン、マルセル・ロイター、ミヒャエル・リースナー、ヤン・マレシュ、マルタン・マタロン、クラウス=シュテッフェン・マーンコプフ、細川俊夫と多士済々である
ナクソス・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2015/09/24)

「大鴉」といえば、エドガー・アラン・ポー晩年の傑作として、日本はもとより、世界中に影響を与えた(かの芥川龍之介も影響を受けている)物語詩。鴉が語る「Nevermore(二度とない)」という言葉は、詩の中核を担う言葉として強烈な印象を残す。現在の日本を代表する細川俊夫もこの作品に魅せられ、その幻想的かつ破滅的な世界観を音として表した。その姿は現代の音色だけかと思えば、要所要所で和楽器が顔を出し、世界の輪郭を浮き彫りにしてゆく。詩の内面で目を向け、能につながる世界観を見出した氏だからこその楽器の使い方。そこに重なる「Nevermore」の言葉…凄いです。
intoxicate (C)大場健
タワーレコード(vol.119(2015年12月10日発行号)掲載)

メンバーズレビュー

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ポオの詩「鴉」に由来。作者言「近代人の理性的世界に守られた存在に、不気味な動物『鴉』が侵入して、その理性的秩序の世界が、崩壊する過程が描かれている。」。結果は、音により確かめられんことを。当方は古風に、詩論「構成の原理」を持ち来る。「・・・この詩は終わりから始まったと言っていい(すべての芸術作品はここから始まる)。」(篠田一士訳)。倒叙法による時の逆転を観る発想なら花田清輝「球面三角」(1941.12)「終末観」(1942.11)に露わな先例を持つ。もっとも詩の構成要素を細分化し「実際には」連続の着想成就というよりは不連続より連続を構成するという詩人の主張は、今日、デジタルからアナログをとでも言い換えることができよう。女声人声による朗誦および音の付加の企画に、当方は、タルコフスキーがユリア・ハマリらによるバッハの音を映像と並行させたことを想起。借問す。天使による命名にレノアとされた、発話者に相対する存在を、理性的世界の崩壊の価値の一因子とするか? 理性の光がアテナ女神の青白い胸像をみやり、詩人の理知と等分の理知が作者に働き、曲が生まれ、作曲行為が、決して崩壊せぬ理性的秩序の活動の証左と化す。本邦、1920-30年代のフランス詩移入に、自意識の過剰な働きが特筆された。一方でヴァレリイの理知表現も存在していた。落差修正には吉田健一らが尽力した。良い曲を聴いた。
2025/06/08 村夫子さん
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