ブロンクス「今度、ジブさん(ZEEBRA)と高木完さんのイヴェント〈HARDCORE FLASH〉にDUB MASTER Xさんとのコンビで出演しますが*5、いとうさんがBボーイに見せたいものっていうのは……」
*5 11月26日(木)に渋谷Nutsにて開催。いとうは“噂だけの世紀末”“ヒップホップの初期衝動”“東京ブロンクス”の3曲を披露した
いとう「Bボーイに見せたいわけじゃなくて、客に見せたいだけ。来た人に、俺の思っている格好いい音楽と、格好いい言葉はこういうものだっていうのを聴かせるだけだから、それが誰であろうと。そこにおじいさんがいたからおじいさんに聴かせないってわけにはいかないでしょ。そんな奴は表現する必要がない。仲間内でやるだけだったら世界に通用しないじゃん」
ブロンクス「ということは、もちろん客全員がBボーイでも……?」
いとう「もちろん。こないだ近畿大学でDJ BAKUとやってきたけど、前列が全員不良だった(笑)。嬉しかったからノリノリにさせてやったよ。俺も(須永)辰緒たちの前でそれをやってたわけだからね。むしろそのほうが本当は嬉しいよ、不良が純粋な目で一生懸命こっちを見ている時の可愛さったらないもん。でも、不良たちだけに聴かせるつもりはなくて。まったく俺を知らない女子学生もいたけど、その子たちに俺とBAKUがやっていることの凄さをどう伝えようって考えるよね。BAKUは凄くいいインプロヴィゼーションをするんだよ。〈俺がやりたいことをなんでわかるの〉って思う。〈ここで入るぞ〉って時に〈ドーン〉って入ってくるもんね、打ち合わせがなくても」
ブロンクス「上ちょもBボーイと関係ないところでやることが多いよね」

撮影:かくたみほ
上野「話を聞いてて、相当影響受けてんなーって再認識しました。いま、団地のクリスマス会のオファーが来てて(笑)。それどうやってライヴやろうって考えたりしてるんです。俺はクラブに行くことが多いけど、そこでやってるライヴをそのまま歌っても通用しないんじゃないかなって思ってるから、歌詞にはクラブの雰囲気をあまり出していない。いとうさんの考えが、俺まで脈々と続いているんだなって感じます」
いとう「クラブもおもしろいんだけど、できたら早く帰って今日買ったCDを聴こうとか、そういうことじゃないの(笑)。別の世界にもっと格好いいものがあったらどうしようみたいなさ(笑)」
――上野さんは本当にいろんなところに出てますもんね。(代官山)UNITでワンマン・ライヴをやっているのに、この間は50人くらいのお客さんの前で、フロアに置いた機材の箱に乗ってラップしてたし(笑)。
上野「オファーが来たらやるしかないですからね」
いとう「俺もNIGOのパーティーで、ちょっと背丈が足りないから箱置いてくれって言ったら、〈ターンテーブルの入れ物なんで〉って断られたよ(笑)。やっぱり、ヒップホップの素晴らしさは臨機応変ってことだよね。現場処理だよ。俺が大好きな言葉」
上野「その場でできることを探してやるってことですよね」
いとう「針が飛んだら、飛んだだけ実力が問われるでしょ。飛んだら嬉しいもん(笑)」
上野「それはわかります。〈そのスリルがたまんない〉って俺もラップしてますし」
いとう「それがチームワークだよね」
ブロンクス「その気持ちは現場を離れていても変わらないですか?」
いとう「ライヴを久しぶりにやるようになってまた針が飛ぶけど、問題なく普通にやれてる自分がいるからね。その運動神経は変わってない。〈sonarsound tokyo〉っていうイヴェントに出た時に、DOOPEESの大野(由美子)さん、小山田(圭吾)君といっしょに参加してナイーヴスの曲をやったんだけど、直前にヤンさんが〈みんな集まって〉って言って。普通だったらそこで、〈3曲目の12小節目から~〉みたいなことになるじゃん。でもヤンさんの指示は〈相手の音をよく聴いて誠実に対応して下さい。以上〉だった。それがヒップホップなんだなって思ったよ。針が飛んだってことに対して誠実に対応する。だから、何年やってなかろうが関係ないんだよね」
ブロンクス「今後はリリースの予定ってあるんですか?」

撮影:かくたみほ
いとう「□□□でだね。あと、DUB FLOWERってバンドもやってるから。で、□□□はヒップホップって限る必要はないんだけど、〈これがイノヴェーションなんじゃないの?〉って、確信を持って更新する音楽を作っていこうと思う。ヒップホップのみのアルバムを作るつもりはまったくないよ。だって、自分がやっているイノヴェーション自体がヒップホップだと思っているから。日本の人って、茶道とか華道とか武道とかみたいに、すぐ〈道〉になっちゃうでしょ。道なんかどうでもいいんじゃない? 人が歩くから道になるわけで。そういう意味では逆風が吹くなかだろうがやらざるを得ないよね」
上野「ミスを楽しむっていうか、それが逆に力試しになるんですよね」
いとう「そうそう。逆風が自分を凧みたいに上に上げてくれることをイメージすると、今日すごいテクニック生まれちゃったなんてこともあるしね。想像外のことが起きるからね。それは現場主義だよね」
――失敗してビビッたりはしないんですか?
いとう「ちゃんとできるかなと思ったりするけど、出た音に対して誠実に対応するだけだから。〈こういう音が鳴ってるから、口でスクラッチしちゃおう〉とか、なんとかなるんだよね」
上野「俺の相方のDJが本当に不誠実な奴なんです(笑)。この間のライヴで、DJがミックスをして音を出す4つ打ちの曲をやった時に思いっきりズレてて。それを誠実にやってくれればいいんですけど。その時ばかりはさすがに〈それ、お前の悪いところだ〉って説教しときました(笑)」
ブロンクス「最終回を迎えるにあたって、上ちょがこの先どこに向かっていくのか凄い良いアドバイスだよね」
上野「話を聞かせてもらって、俺自身がいとうさんから受けた影響のデカさもわかったし、さらに下の世代に伝えていくのが役目だなと思って」
いとう「俺もさらに進化してくからね、これから」
ブロンクス「ヒップホップはスタイルではなくて方法論でスピリットなんだっていうことっすね。パイオニアならではの発言続出で、本当に勉強になりました」
いとう「ヤンさんだって、なんにも話さないけど、そういうことをやってるからね」
上野「いろんな先輩方がいるなかで、こういう話を聞けるのはデカいですよ。ためになりました。手に汗握る勉強会って感じで(笑)」
いとう「何がヒップホップかはわかったでしょ」
上野&ブロンクス「あざっす!!」
▼サイプレス上野とロベルト吉野の作品