『...Only When I Laugh』 TENT/ポニーキャニオン(1986)
彼の作品中もっともアウトドアが似合いそうな、〈陽〉の気が強いサウンドに溢れている。冒頭の“Weekend”からラストのスターバックによる名曲〈恋のムーンライト〉のカヴァーに至るまで、演奏はライトなトーンで統一。ウキウキするような昂揚感を得られる。
(桑原)
『La pensee』 TENT/ポニーキャニオン(1987)
山本耀司のパリコレのために制作されたサントラ。全曲インストながら、フックの効いたビートと滴り落ちるようなメロディーとが絡み合い、今日のポスト・ロックを先取りしたような内容に。ところどころコーラスが美しく挿入され、YMO時代の名残を感じさせたりも。
(岡村)
『EGO』 EMI Music Japan(1988)
ビートルズ“Tomorrow Never Knows”のカヴァーから旧知のビル・ネルソンが歌詞を提供したラストまで、エレポップ的なプロダクションのものを中心にした、カラフルで甘美な仕上がりに。鈴木慶一(作詞)、NOKKO(ヴォーカル)らの個性も活かされている。
(岡村)
『BROADCAST FROM HEAVEN』 EMI Music Japan(1990)
アンビエント色が強まった一方、肩の力が抜けた印象で、彼自身の歌もリラックスしているのがわかるし、いつもの〈好きな女性にはシャイな男風情〉の詞にも光るものが。鈴木慶一が絡んだ曲はTHE BEATNIKSの新曲のようで、2人の相性の良さを実感できる。
(岡村)
『A DAY IN THE NEXT LIFE』 EMI Music Japan(1991)
ビートルズの名曲をもじった表題通り、〈来世〉がテーマ。大人が聴くポップスという前作の方向性も追求しつつ、同時に厳かさの生成も目標とし、終盤はそんなムードが濃厚だ。ニール・ヤング“Only Love Can Break Your Heart”は、彼のカヴァー曲中でもベスト。
(桑原)
『A NIGHT IN THE NEXT LIFE』 EMI Music Japan(1991)
細野晴臣の“ありがとう”に始まり、細野の“はらいそ”で終わるライヴ盤。鈴木慶一、スティーヴ・ジャンセンらバックの演奏も申し分なく、日本語詞の良さを伝える曲を取り上げた選曲がミソと言えるだろう。“音楽殺人”の斬新なアレンジも聴きどころ。
(岡村)
『LIFETIME, HAPPY TIME 幸福の調子』 EMI Music Japan(1992)
〈BROADCAST~〉から続く〈大人の純愛・三部作〉の完結編で、穏やかな目線が詞曲に表れた傑作。ファンクにエレクトロニクスを絡ませた複雑なアレンジに舌を巻きつつも、全体を照らすブライトなムードに心が癒される。“元気ならうれしいね”は名曲。
(岡村)
『HEART OF HURT』 EMI Music Japan(1993)
初のセルフ・カヴァー集で、ほとんどのナンバーをアンプラグド風に再生。“今日の空”などの名曲たちが上品に料理され、〈こういう形で聴きたかった!〉と思わず声を上げたくなるほどに嬉しい仕上がりだ。大貫妙子、Sandiiが可憐な歌声を披露し、華を添えている。
(桑原)
『Mr. YT』 EMI Music Japan(1994)
YMO再生の翌年に届けられたジェントルなポップス集。冒頭のビートルズ“Taxman”をはじめ、タイトなデジタル・サウンドが飛び交うが、スルリと忍び込んでくるアコースティック楽器の効果で、冷ややかな感触は払拭されている。三橋美智也“星屑の町”における鼻歌的な歌唱が素敵。
(桑原)
『Fate of Gold』 EMI Music Japan(1995)
低音が引っ張る曲もあれば、宅録で仕上げたような箱庭感のある曲も。スカパラのメンバーら後輩世代が参加したことで、演奏には新しい息吹が吹き込まれて膨らみとしなやかさが加わったが、高橋の〈自嘲的ロマンティック〉な歌もそれに伴ってより生々しくなっている。
(岡村)