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第88回 ─ 高橋幸宏

連載
Discographic  
公開
2009/04/02   08:00
更新
2009/04/02   15:28
ソース
『bounce』 308号(2009/3/25)
テキスト
文/村尾 泰郎

ヨーロピアンな香りのシックな服装に、身振りもスマートなジェントルマン――高橋幸宏。そのスタイルと同様、彼の作る音楽も常にスタイリッシュな刺激に溢れています。今回のニュー・アルバム『Page By Page』をきっかけに、あなたも彼の過去のページをめくってみませんか?


  ファンからは〈Mr.YT〉として親しまれてきた高橋幸宏。そんなシャレた愛称がピッタリくるぐらい、彼はこれまで自分のスタイルを貫いてきた。

 52年、東京に生まれた高橋は中学生時代に早くもバンドを結成。自作曲をやるというより、パーティーなどに出張して演奏するハコバン的な活動で、ちょっとマセた中学生だった。高校に進学する頃にはすっかりテクニックも上達。スタジオ・ミュージシャンとして業界に出入りするようになり、一時期はガロのバック・バンドで活動していた。そして72年、武蔵野美術大学在学中に加藤和彦の誘いを受け、サディスティック・ミカ・バンドに加入。当時、時代の最先端だったグラム・ロックをいち早く消化したミカ・バンドは海外でも人気を博し、ロキシー・ミュージックの前座としてUKでもライヴを披露した。そしてミカ・バンド解散後、サディスティックスを経てソロ活動を行っていたが、細野晴臣のソロ・アルバム『はらいそ』に参加したことがきっかけとなり、細野の呼び掛けのもと同じくゲスト参加していた坂本龍一との3人で、78年にYMOを結成する。細野にその正確無比なリズム・センスを買われ、バンドに誘われた高橋だったが、YMOの衣装のデザインを手掛けるなどヴィジュアル面でも貢献。自身のブランドを持ち、ファッション・デザイナーの山本耀司とも交流を深めた。

 81年にはムーンライダーズの鈴木慶一とのユニット、THE BEATNIKSを結成。85年に2人でレーベル=TENTを立ち上げ、高野寛をはじめとした新人ミュージシャンを育てていくが、高橋はシーナ&ロケッツのメジャー・デビューにも一役買っていた。また、海外のミュージシャンとの交流も盛んで、80年代にはトニー・マンスフィールドやザイン・グリフ、デヴィッド・パーマー(ABC)など海外のミュージシャンと積極的にコラボレート。なかでもスティーヴ・ジャンセン(ジャパン)との付き合いはいまも続いている。

 YMO散開後はソロ活動を通じてそのポップセンスを深化させていくが、2002年には細野との新ユニット、SKETCH SHOWを結成。エレクトロニカを独自に昇華したサウンドで新境地を拓いた。さらに翌2003年からはSKETCH SHOWに坂本を加えたHUMAN AUDIO SPONGE~HASYMOを始動。そして2006年には7年ぶりのソロ作『BLUE MOON BLUE』を発表しつつ、木村カエラをヴォーカルに迎えたミカ・バンドの2度目の再結成にも参加した。さらに2008年には原田知世、高野寛、高田蓮ら〈高橋チルドレン〉ともいえるアーティストと共に新バンドのpupaをスタートさせるなどここ数年は大忙し。ふたたび活動のピークを迎えるなか、ソロでのニュー・アルバム『Page By Page』を発表したばかりだ。

 彼の活動を振り返ると、常に時代にヴィヴィッドでありながらも基本はシックであることがわかる。それこそが〈YTマナー〉なのかもしれない。
▼高橋幸宏が参加した作品を紹介。


竹中直人の95年作『MERCI BOKU』(CONSIPIO)