1. 『Alfie』
変わったコード展開なのに、そんな印象を与えず優雅に流れていくメロディー。スティーヴィー・ワンダーが変名で発表したハーモニカでのカヴァーは、メロディーの美しさを際立たせた名演で、68年作『Eivets Rednow』(Motown)にて聴ける。ヴァネッサ・ウィリアムスのカヴァーでも知られ、とりわけジャズ・シンガーに人気が高い。
2. 『The April Fool』
数あるバカラック・バラードのなかで、もっともとろけるような甘いメロディーを持つ曲といえばこれ。アレサ・フランクリンや高橋幸宏のカヴァーも有名だが、2004年の『Blue Note Plays Bacharach』(Blue Note)収録の、メアリーJ・ブライジ“Beautiful Ones”でサンプリングされたアール・クルーによるアコギ・インストが最高。
3. 『Arthur's Theme (The Best That You Can Do)』
映画「ミスター・アーサー」の主題歌で(アカデミー主題歌賞を受賞)、81年にクリストファー・クロスへ書き下ろしたバカラック流AORの決定版。煌びやかな摩天楼を連想させる旋律は、邦題〈ニューヨーク・シティ・セレナーデ〉がピッタリ。彼のべスト盤『The Definitive Christopher Cross』(Warner Bros.)でどうぞ。
4. 『Baby It's You』
バカラックがブリル・ビルディング系(NYにあったポップス生産工場)の一員だったことを伝えるキュートな小品。オリジナルは黒人ガール・グループのシュレルズが歌い、イントロのコーラスが特徴だ。これをビートルズが63年のデビュー作『Please Please Me』(EMI)でカヴァー。〈シャララララ~〉とキュートに(!?)キメている。
5. 『Bond Street』
脱線感覚に溢れたコミカルなメロディー&テンポ。が、手触りはいたってクールだ。60'sモッド志向リスナーを熱狂させる要素満載なこの67年曲は、彼の変わり者ぶりを表す最良サンプルでもある。本人のお気に入りで現在もよくライヴで披露されており、彼の最新ベスト『The Universal Sound Of Burt Bacharach』(ユニバーサル)に収録。
6. 『Do You Know The Way To San Jose?』
バカラック・ソングの代名詞である転調や変拍子の要素は、ボサノヴァからの影響が大きい。この彼流ボサノヴァの完成形は、発表当時に世界中のイージーリスニング音楽に影響を与えたが、これを本場のセルジオ・メンデス&ブラジル66の弟分、ボサ・リオが69年作『Bossa Rio』(A&M)で逆輸入的(?)にカヴァーしたというのもおもしろい。
7. 『God Give Me Strength』
バカラックとエルヴィス・コステロによる98年の共演作『Painted From Memory』(Mercury)に収録されたドラマティックなバラード。本作にはバカラック&ハル・デヴィッドの傑作群にも引けを取らない良質な楽曲が詰まっているが、それもこの大作曲家の魅力を熟知したコステロとのコラボが刺激的だったからこそ。
8. 『A House Is Not A Home』
バカラックには歌い手の熱い感情表現を自然と引き出す力を持つ曲が多いが、これは代表的なものだ。最高なのはルーサー・ヴァンドロスが81年作『Never Too Much』(Epic)で披露したナンバーで、ルーサー没後のグラミー賞で、アリシア・キーズが涙声で弾き語ったのも記憶に新しい。涙の洪水に溺れそうになる。
9. 『I Say A Little Prayer』
ソウル・ミュージックとバカラックの相性の良さを語る一曲といえば、アレサ・フランクリンの68年作『Aretha Now』(At-lantic)収録のこのカヴァーだろう。プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーによるゴスペル仕立てのサウンドの上で熱のこもった歌を聴かせる彼女。メロディーと歌詞の切なさを存分に広げる名唱だ。
10. 『I'll Never Fall In Love Again』
バカラックにしては起伏が少なくシンプルなメロディーライン……この無駄のなさはどうだ。洗練度がめっぽう高い美しいこの曲の名唱といえば69年のディオンヌ・ワーウィックによるものか。丹念にメロディーをなぞりつつほのぼの感を漂わせた巧みな歌唱は『The Definitive Collection』(Arista)で確認できる。