セルフ・プロデュースもこなすベックだけど、好奇心の赴くままにいろんなサウンド・アプローチを行ってきた彼のこと、外部プロデューサーとリンクして新世界を創造する能力にも長けている。例えば、ビースティに感化されてダスト・ブラザーズに『Odelay』の指揮を委ね、サンプリングの技法とファンクネスを血肉化。その延長でマニー・マークやマリオ・カルダートJrとも邂逅している。また、幾度となく絡んできたナイジェル・ゴッドリッチが主導権を握った前作『The Information』でも、数曲でグレッグ・カースティン(バード・アンド・ザ・ビー)を起用するなど、新しい風を吹かせることも忘れない。しかし、ティンバランドやダン・ジ・オートメーターとスタジオ入りするも、お蔵入りした例もチラホラ。特に前者は映画「ムーラン・ルージュ」のサントラで良いコンビを披露していただけに(ベックの歌うデヴィッド・ボウイのカヴァー“Diamond Dogs”はティンバのプロデュース)、いつか陽の目を見てほしいところだ。