#9 凛として時雨
『Inspiration is DEAD』中野(2007)
何かとんでもないことが起こっている!――凛として時雨の〈激情〉と〈轟音〉にまみれたサディスティックなギター・サウンドを耳にし、思わずそう呟いてしまう。一昨年秋の『♯4』、昨年のミニ・アルバム『Feeling your UFO』で、確実にそのチャームをリスナーに焼き付けてきた彼らのセカンド・アルバムとなる本作だが、〈とんでもない〉印象は、より強烈に。激烈なオープニング“nakano kill you”、狂乱ダンスを誘う“DISCO FLIGHT”、耽美なギターが浮遊感を演出する“knife vacation”、男女ツイン・ヴォーカルがもたらす〈ヒート&クール〉の質感が特に絶品な“赤い誘惑”、ファンタスティックな“1/fの感触”など、あらゆる手口で彼らの〈とんでもない〉演者っぷりを体感させられる。(ヨロイ騎士/bounce 2007年09月号掲載)
#10 ASIAN DUB FOUNDATION
『Punkara』Traffic(2008)
思えば、ADFはメンバー・チェンジのたびにサウンドの色合いを柔軟に変更してきたユニットである。2作目の『R.A.F.I.』や3作目『Community Music』を経てフロントマンのディーダーが脱退した際も、ツイン・ヴォーカルに切り替えてサウンドの突進力を強化し、結果的にはハードな『Enemy Of The Enemy』をキャリア最大のヒットに押し上げることに成功している。また、スキルフルなMCのゲットー・プリーストを加えた5作目『Tank』ではヒップホップ寄りのキャッチーな側面も見せていた。だからして、中心メンバーだったドクター・ダスらの離脱も、ADFにとっての後退を意味しない。チャンドラソニックの弟だというマーティンを新ベーシストに据え、さらにMCのアル・ラムジェンも加えて臨んだ新作『Punkara』の多彩な仕上がりは、よりタイトになったバンド内の状態の良さを感じさせるものだ。ディック・デイルばりにギラギラしたサーフ・パンク“Super Power”で幕を開け、彼ららしいジャングルの“Burning Fence”が飛び出したかと思えば、攻撃的なソカの“S.O.C.A.”や、ジャクージーのサーシャ・パレーラとのコラボ曲、さらにはダブ・ステップを意識した“Bride Of Punkara”のような新機軸も披露される。また、神秘的な“Speed Of Light”はそれこそ初期の彼らを思わせるピースフルなレイヴ感に満ちてさえいるのだ。例えばM.I.A.の〈楽しいレベル・ミュージック〉をキャッチできる人なら、今回のADFはいつも以上に楽しめるんじゃないかな。(出嶌孝次/bounce 2008年04月号掲載)
フル・アルバムとしては2005年の『Tank』以来約3年ぶりとなる新作『Punkara』。ある意味ポップとも言えるメロディーを主軸としながら、ヒップホップやテクノなどを吸収した多様な音楽性が特徴的だった前作に対し、本作で聴けるストレートで開放感のあるサウンドは、メンバー・チェンジを経て3MC布陣となった新生エイジアン・ダブ・ファウンデーションを強く印象付けるもの。ベスト盤『Time Freeze 1995/2007』をリリースしたことによってひとつの区切りを付けたことも影響しているのかもしれないが、〈Punkara〉とのタイトルどおり〈パンク〉と〈バングラ〉という自分たちのルーツを見つめ直した、ある意味原点回帰とも言える内容だ。〈パンク〉に関して言えば、ストゥージズの名曲“No Fun”のカヴァーにイギー・ポップ本人をゲストに招いていることも大きなトピックだろう。とはいえ、パンクの持つ一元的なイメージに囚われて本作を聴くと肩透かしを喰らうことになるかもしれない。ギターをはじめとした生音中心のフィジカルな躍動感を持ったサウンドからは、怒りや反抗精神といったものよりも、むしろポジティヴなヴァイブが強く感じられる。すべてをデストロイするのではなく、DIY精神でみずから新たな行動を起こす――本作における〈パンク〉とはそういうことであり、そしてそれを自分たちの血肉であるバングラ・ビートに乗せて高らかに鳴らすことができるのは、いまの彼ら以外にはいない。(粟野竜二/bounce 2008年04月号掲載)
#11 GOGOL BORDELLO
『Super Taranta!』Bullion/WAVE MASTER(2007)
激アツのステージ・パフォーマンスと奇天烈な音楽性で注目を集めるジプシー・パンクス、ゴーゴル・ボールデロがニュー・アルバムをリリース! ヴァイオリン、フィドル、アコーディオンを擁し、トラディショナルなサウンドをベースにパンクの攻撃性や過激さを好き勝手に解釈してしまった雑多ぶりは強烈だ。聴いてるうちに酒場の喧騒の中に漂う哀愁感を嗅ぎ取ってしまったぞ。気高くも下品で最高!(若狭谷力/bounce 2007年09月号掲載)
#12 JANET KLEIN
『Ready For You』BUFFALO(2008)
21世紀に現れた〈オールド・タイム・ミュージックの妖精〉によるアルバムももう6枚目だ。キュートなヴォーカルに〈超〉が付くほどマニアックな選曲、そしてパーラー・ボーイズの完璧なバッキングと、いつも最高のセンス(これが肝心)でもって、世のスキモノを歓喜させてくれる彼女だけど、今回はなんと“銀座カンカン娘”を日本語でカヴァーしているのです。舌っ足らずな歌がもう可愛いったらありません。(梶丸基史/bounce 2008年05月号掲載)
#13 MARK STEWART
『Edit』FREAKES R US/BEAT(2008)
声ですべてを破壊するマーク・スチュワート親分が13年ぶりに絶叫!? これがダンディズム皆無の超アッパーなブチ切れダブ・ファンクに仕上がっているのです。彼の専売特許である不条理なカットアップ&コラージュと、アジテーションがこちらの興奮を煽動。バックを固める共謀結社のマフィアやスリッツのアリ・アップ、エイドリアン&デニス・シャーウッド父娘ら〈ダブ友〉に囲まれて親分本人も終始ご機嫌な様子だ!(久保正樹/bounce 2008年05月号掲載)
#14 UNDERWORLD
『Oblivion With Bells』Pias/Traffic(2007)
フロア志向はやや後退したようだが、彼らにしか出せないまろやかなフォルムの音を随所で響かせて、まぎれもないアンダーワールド節の健在ぶりを確認させてくれる5年ぶりの新作。ダンス・トラックからダウンテンポ、アンビエントへと展開する流れのなかで、アーティスティックな側面やインテリジェンスをより鮮明に強調している。ハッとするような驚きは少なくとも、高いレヴェルでの安定した音作りはまさに横綱相撲!(青木正之/bounce 2007年10月号掲載)
#15 LETTUCE
『Rage!』Velour/P-VINE(2008)
サム・キニンジャーをはじめ、現代USジャズ・ファンクのスターたちによるドリーム・チームが、6年ぶりとなるメガトン級の新作を叩きつけてきた。堂々とした風格を感じさせる冒頭曲や、ドゥエレをヴォーカルに迎えてノリノリなセッションを繰り広げるカーティス・メイフィールドのカヴァー“Move On Up”など、高濃度な全14曲。〈フジロック〉への参戦も決定したし、これからの季節もファンクの嵐が吹き荒れるぜ!(藤井大樹/bounce 2008年05月号掲載)
#16 BETTYE LAVETTE
『The Scene Of The Crime』Anti/エピタフ(2007)
先日メイヴィス・ステイプルズの素晴らしい作品を送り出したアンタイから、ベティ・ラヴェットが新作を発表。同レーベルからの前作は女性シンガー曲のカヴァー集だったが、今作はサザン・ロック・バンドのドライヴ・バイ・トラッカーズが全面援護。ドスの効いた塩辛ヴォイスは齢60を越えてなお迫力を増し、ブルージーな南部マナーのスロウからラフで躍動感のあるナンバーまでをコッテリ聴かせてくれる傑作!(佐藤ともえ/bounce 2008年01月号掲載)