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第141回 ─ 「ディス・イズ・ボサノヴァ」を観て、サウダージ・トークを敢行!

第141回 ─ 「ディス・イズ・ボサノヴァ」を観て、サウダージ・トークを敢行!(2)

連載
360°
公開
2008/04/10   19:00
ソース
『bounce』 297号(2008/3/25)
テキスト
文/佐々木 俊広

サッカーとAC/DCが大好きな年下の彼女、ミナ・ヤングとの久々のデートをJリーグ開幕戦にしよう――と意気込んでいたトシーニョ青年。だけど生来のインドア気質とのんびりした性格が災いして、チケットはすでに完売……。幼い頃、コンセントで遊んでいたときに感電して以来、極度にアンプラグドな生活を送るようになった彼の頭の中には、ネット・オークションという概念も存在しなかった。

ミナ・ヤング(以下MY)「横浜F・マリノスvs.浦和レッズの好カードだから、早めに予約しておいてって言ったじゃない! も~楽しみにしてたのに!!」

トシーニョ(以下T)「……ごめん。代わりにおもしろいDVDをゲットしたからいっしょに観ようと思って……(なかば強引にDVDを再生)」

――約2時間後、映画に出てきた美しいイパネマ海岸の余韻に浸りつつ、会話は続く。

MY「あ~ん、イパネマのビーチって超素敵! でも、どうしていまボサノヴァなんだろ?」

T「今年はボサノヴァ誕生から50周年と言われているんだけども……知ってた?」

MY「へぇ~。ボサノヴァってギター一本で〈暇つぶしにやってみたら出来ました〉って雰囲気になんだか余裕を感じるね。でもブラジルといったらやっぱサンバじゃない?」

T「うん。リオのカーニヴァルみたいなものもあるけど、ブラジル人にとってサンバは昔からギター一本で熱いハートを歌える音楽。で、ボサノヴァ誕生の直前にサンバとジャズやボレロなんかが合わさったサンバ・カンサォンってスタイルがあってね。エリゼッチ・カルドーゾって歌手がそのスタイルの代表格なんだけど、叙情的で少しメロドラマっぽい音楽だったわけ。まあ簡単に言うと、サンバやサンバ・カンサォンの発展形というか、軽やかな歌詞や洗練された要素を加えたのがボサノヴァかな。そもそもボサノヴァという言葉の意味は〈新しい傾向〉だから」

MY「ふ~ん。映画にナラ・レオンって女の人が出てきたでしょ? 彼女が超印象的だった。みんながこの人のアパートに集まって来てたんだよね?」

T「そう。いろんなアーティストが集まるサロンみたいになってたんだね。そこにはボサノヴァのパイオニアたち、ジョアン・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ジョビンなどがいて、夜ごと新しい傾向の音楽についてああでもないこうでもないと議論を交わしたりしながら、ボサノヴァ誕生の土壌が築かれていったんだよ。そのメンバーには中産階級のヤングが多くてさ。当時この音楽を支持したのも、例えば大学生といった似たような生活レヴェルの若者たちだったんだ」

MY「オシャレでクールな印象を受けるのはそういうところが影響しているのかもね」

T「そうだ、映画にはフランク・シナトラが出てたね。62年にNYのカーネギー・ホールでジョアンやジョビン、ルイス・ボンファらが出演した大々的な〈ボサノヴァ・コンサート〉が開催されて大評判となってさ。ボサノヴァは海を渡っていろんなアーティストにいろんな形で採り入れられて世界中に広まったんだ。例えばバート・バカラックも影響を受けた曲をたくさん発表しているし、エルヴィス・プレスリーは“Bossa Nova Baby”なんて歌まで録音してる。あとフランス人監督のマルセル・カミュが59年に撮った「黒いオルフェ」という大ヒット映画の音楽に、ジョビンたちの楽曲が使用されたことも注目度を上げるきっかけになったっけ。いまではポップスのひとつのキーワードとして定着しているボサノヴァだけど、その発展はブラジルの音楽シーンだけでは語れないのが事実なんだ」

MY「ところで、いろんな曲の歌詞に何度も出てきた〈サウダージ〉ってどんな意味?」

T「う~ん、〈郷愁〉って訳されることが多いけど、〈想い〉とか〈名残り〉とかも合ってる気がするな……直訳しづらいところなんかすごく日本的だし、日本でのボサノヴァ人気の秘密はこんなところにあるのかも。墨色のジワ~っとした世界観というか。コラムで紹介しているジョビンのジャケットもまさにそうだと思わない?」

MY「……なによ、そのコラムって? ねぇ、ジョアン・ドナートさんの〈いつだって、いい音楽の陰にはいい女がいるものさ〉ってセリフも素敵だったね。映画で弾いてたワルツとバラードはある女性に捧げたって言ってたけど、その時は本当にその人のことばっかり考えてたんだろうなぁって。そういう気持ちを素直に歌うのはそんなに簡単なことじゃない……のよね?」

T「(おもむろにギターを手にして)ミ~ナ・ヤング~ラララ~♪」

MY「……」

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