今月のスナップ:パーカーの上からファンクなアイ・ギアを強引に装着。フレッシュ!
ブロンクス 当時は士郎さんもJINさんも、みんな雑誌でライターまでやってた。Dさんだって「BMR」誌でレビューとかやってたよね。
上野 士郎さんはすげー書いてますもんね。〈ちゃんとやってる立場で語る〉っていうのがすごい。
ブロンクス 士郎さんの昔の言葉を借りると「HIPHOP IQが高い」ってやつだね。タイニー・パンクスみたいな業界系とは違う文系B-BOYのはしりでしょ。
上野 そうっすね。DEV LARGEさんとかはアメリカから来て、USの知識があった人じゃないですか。そうじゃなくて〈日本人から学んだ〉代表格ですよね。RHYMESTERは実力勝負で「俺らが一番がんばってる」みたいなところで勝ち上がったもんね。
ブロンクス 多分ストリートとかハード・ノック・ライフが売りの奴らは「ラップまで大学出てる奴らに負けたくない」って思うんだけど、結果は歴然(笑)。
上野 「マジ上手いし、客集めるし」っていう。その辺、ハードコアだよね。やってることに確固たる自信があるから。
ブロンクス でもこの頃はヒップホップ人口も少なかっただろうし、そこから武道館まで持っていったのはやっぱりすごいな。色んな状況に対して怒ってるけど、変える努力とか教えることを放棄しないっていうか。
上野 まさに。閉じてはないんだよね。“知らない女”なんてわかりやすいし、誰が聴いてもいい歌でしょ。
ブロンクス ……誰が聴いてもいい歌、かな(笑)?
上野 いやー、こういうことあるなあっていう。「二度と会わない知らない女」とかさあ……(笑)。
ブロンクス ポッセ・カットの“Return of Funky Grammar”で、仲間のEAST ENDとMELLOW YELLOWを引っ張ってきて、そのMELLOW YELLOWのアルバムではRIP SLYMEを引っ張ってきているとか。
上野 そういうラインを作って、みんな成功させてる。
ブロンクス もとを正せば『EGOTOPIA』の功績だよね。全員成功して食えてる軍団なんて、FG以外いないよ。
上野 そうっすねー。普通ヒップホップの人たちは運営する技術がなかったりするし。
ブロンクス RHYMESTERはそういうシーンの維持と発展に対して意識的だったよね。ちゃんと後進に紹介するというか。時々オジさんたちが終わっちゃったイベントを「伝説だ」って言って復活させたりしてるけど、〈FGナイト〉は終わってすらないからね。
上野 そうっすよね。〈B-BOY PARK〉でトリをずーっとやってるっていうのも信頼度が違う。全B-BOYが信頼しすぎてる。大変だったろうに……。
ブロンクス それ誰の意見(笑)?
上野 いやいや、あの場で、あれだけの面子が集まった中で、トリを毎年務めるっていうのは……。なんというかね、嫌なところがない! あと一番謎なのが、士郎さんに女の客がついてるっていう。
ブロンクス スゴイね、言うね(笑)。
上野 いやいやいやいや、俺は分かる。けど……士郎さんのおかげで希望の光がね、射してくれるよね。こないだの〈申し訳ないと〉でも女の子が「師匠~!」みたいな感じでやって来て握手とかしてて……。
ブロンクス 思うんだけど、あれはやっぱ、士郎さんが細いからなんだよ。
上野 あ、細いからっすか。
ブロンクス 同じ文系でもオレらとはちょっと違う。オタクで、肉がつくとまた……。
上野 ダメだっていう(笑)。
ブロンクス 身体からアンダーグラウンドなスメルが出ちゃうからね。
一同 (笑)。
ブロンクス 士郎さんだって歳からしたら俺ら以上にスゴイおっさんなハズだし、革パンの中なんて絶対ヒドいとおもうんだけど。
上野 そこは清楚なイメージをキープしてるよね。ワイン飲んでカッコいいからな。スゴイ人たちです。ホントに。
ブロンクス というわけでヒップホップ偉人伝説第二回。
上野 まさに偉人ですね。
ブロンクス お札にしていいくらい(笑)。
上野 ほんとに士郎さんの話しかしなかったね……(笑)。
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