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第2回 ─ RHYMESTER『EGOTOPIA』~宇多丸師匠の偉大なる功績

連載
サ イ プ レ ス 上 野 の LEGEND オブ 日 本 語 ラップ 伝 説
公開
2008/01/10   22:00
テキスト
文/東京ブロンクス

希代のエンターテイナーにして、ヒップホップの未来を担うラッパー、サイプレス上野の連載第2回! 日本語ラップへの深~い愛情を持つサイプレス上野と、この分野のオーソリティーとして知られるライター・東京ブロンクスの二人が、日本語ラップ名盤を肴にディープかつユルめのトークを繰り広げます。今回取り上げる作品は、RHYMESTERのセカンド・アルバム『EGOTOPIA』。

●今月の名盤:RHYMESTER『EGOTOPIA』
宇多丸、MUMMY-D、DJ JINによるシーンきってのベテラン・グループ、RHYMESTERが95年にリリースしたセカンド・アルバム。ハードコアなスタンスを打ち出しながらも、ユーモアやエンターテイメント性を柔軟に取り入れた作風が高く評価された。キングギドラとSOUL SCREAMをフィーチャーした“口から出まかせ”ほか12曲を収録。(bounce.com編集部)

上野 最近、俺は佐々木士郎(宇多丸)がすごい苦手だってことが判明した。好き過ぎて。二人でいると全然しゃべれない。こないだの〈申し訳ないと10周年SP〉*1の司会を何故か俺がやることになったんだけど、士郎さんに話を振られても全然返せなくて。
*1 宇多丸氏もDJを務めるJ-POP限定クラブ・イベントの特別編。

ブロンクス 緊張するの?

上野 やっぱ緊張するねー。ライヴの後とかも、評価が一番気になる人だし。表向きはだいぶ砕けた感じになってきてはいるけど、それでも士郎さんの一言一言を拝聴しちゃう感じ(笑)。

ブロンクス 俺もたまにしか会わないけど分かるな。話したいことがいっぱいありすぎてね。

上野 そうそう。何から話していいのかわからなくなる。で、楽屋でこの連載の話になったんだけど、「お前は佐々木士郎が好きだってずっと言ってたのに、連載1回目はキミドリなんだ……」って言われて。

ブロンクス (笑)さすが、チェックしてるねー。

上野 「がっかりだったよ」って(笑)。さんざん言われちゃって。

ブロンクス それで今回は……。

上野 RHYMESTERを。取ってつけたみたいだけど(笑)。

ブロンクス じゃあ今日はひたすら宇多丸師匠こと佐々木士郎の成し遂げた数々の偉業について話そうか。

上野 〈佐々木士郎をほめる会〉に(笑)。そうそう『EGOTOPIA』は、その当時のラッパーがみんな聴いてるアルバムって触れ込みだったんだったんだよね。みんなが「これはヤバい」って言ってるという。それで急いで買ったな。

ブロンクス じゃあちょっと遅れて買ったの?

上野 そうすね。まあ遅れたとは言っても数ヶ月だと思うんだけど。『EGOTOPIA』の時って、まわりでは何が出てましたっけ?

ブロンクス スチャダラパーの『5th WHEEL 2 the COACH』、キングギドラの『空からの力』……。

上野 すげー時代。じゃあ(マイクロフォン・)ペイジャーも同じ年だ。『Don't Turn Off Your Light』。

ブロンクス ホント、ゴールデン・イヤーだったよね。

上野 でも『EGOTOPIA』はそれらよりもすげー前な気がするけどな。

ブロンクス ちょっとは前だと思うけど。この頃は、どんどんすごいのが出て来ちゃってたから。「ヒップホップ・ナイト・フライト」*2も前年末に始まったし、YOU THE ROCK★の『THE SOUNDTRACK '96』も翌96年の春でしょう。で、夏には〈さんピン(CAMP)〉だから……。
*2 YOU THE ROCK★がメインMCを務めたラジオ番組。日本語ラップを積極的に紹介した。

上野 数ヶ月前がえらい前に感じてたのかあ(笑)。その大変な時期の口火を切ったのが『EGOTOPIA』ってことだ。この頃のRHYMESTERって大学卒業して25歳くらいだよね? なんてモノ作ってんだよなぁ。俺ももう来年には28になるのに……。

ブロンクス 時間は残酷だね。

上野 俺〈KING OF STAGE〉*3の1回目も行ってるんすよ。渋谷クアトロ。ライヴ前にレコード屋でA.K.I.に会って、サインもらった(笑)。
*3 昨年で7回目を迎えたRHYMESTERのツアー・タイトル。

ブロンクス そのマニアな行動もすごいね。まだ中3でしょ? あ、でも大人は逆にA.K.I.のサインはいらないか。どっちにしろねぇ?

上野 完全に間違ってる(笑)。それで〈KING OF STAGE〉をひとりで見に行って……格好良かったすねえ。

ブロンクス 格好良いんだよねぇ。ライムスはその頃から、ライヴがどのグループよりうまいって言われてたし。

上野 当時すでにクアトロでライヴができてたっていうのもすごい。

ブロンクス FG*4クルーはポッセ・カットの醍醐味を分かりやすく教えてくれたよね。忘れがちだけど“DA・YO・NE”の後半部分なんかも熱い。アルバムにあえて派閥を越えた面子を集めてる曲を入れたり。
*4 FUNKY GRAMMAR UNIT。RHYMESTERのほか、RIP SLYME、KICK THE CAN CREW、EAST END、MELLOW YELLOWらが所属するヒップホップ・コミュニティ。

上野 そうだね。(Mummy-)Dさんって昔は雷(家族)にいたわけだし。

ブロンクス 今やDさんはマボロシで超モテまくっているようで……羨ましい限りです。

上野 そして士郎さんはキング・オブ・サブカルチャー。俺もDさんに憧れていたはずが、士郎さんに引き込まれたというか(笑)。

ブロンクス そうなんだよね。俺も昔は間違いなくDさんに憧れてたはずなのに、いつの間にか士郎さんの生き方とポジションが超うらやましい。日本語ラップ好きでDさんファンって本当に沢山いるんだけど、俺らが話すとね。

上野 どうしても士郎さんの話になっちゃう。