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第14回 ─ BRITISH BEAT

連載
Di(s)ctionary
公開
2007/05/31   13:00
更新
2007/05/31   17:52
ソース
『bounce』 287号(2007/5/25)
テキスト
文/小松崎 健郎

さまざまな音楽ジャンルを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!

I ブリティッシュ・ビートの成り立ちと特徴

 それでは講義を始めます。今回のテーマは〈ブリティッシュ・ビート〉。ブリティッシュ・ビートは、62年秋、英国はリヴァプールという港町のバンド、ビートルズのデビューに始まり、いまなおロック・シーンの土台になってるわけだけれども、当時ここ日本ではビートルズの登場があまりに衝撃的だったこともあって、リヴァプール以外のロンドンやマンチェスター、ニューキャッスルにバーミンガムなどから登場したビート・グループまでも〈リヴァプール・サウンド〉なる呼称で取り扱っていたんだ。笑っちゃうよね。

 一口に〈ブリティッシュ・ビート〉といっても、そのサウンドは千差万別だった。バディ・ホリーなんかの影響をモロに受けた甘酸っぱいポップなサウンドを得意とするバンドもいたし、それとは反対にマディ・ウォーターズに代表されるブルースの影響を感じさせるバンドもいた。ともあれ、このブリティッシュ・ビートは英国だけに留まることなく、アメリカでもウケにウケて、そればかりか世界的な現象になっていったんだ。これは当時の画期的な出来事、いや、大事件といってイイかもしれないね。というのも、それまで世界のポピュラー・ミュージックというのは、アメリカを中心に回っていたから。エルヴィス・プレスリーだってチャック・ベリーだって、みんなアメリカ出身だったろ? 英国人が入り込む余地なんてなかったんだ。ましてやヒットを放つなんて一部の例外を除いてまずなかったんだ。それを変えるキッカケとなったのがビートルズの登場、そして同時に雨後のタケノコのように現れた数多くのビート・グループだったってわけだ。しかもその後、もちろん時流から脱落していったバンドもいたけど、残った連中は63年から67年にかけて〈ポップ〉が〈ロック〉となっていく基礎を築いていった。そしていまもその血脈は受け継がれてるんだ。じゃぁ、テキストを広げてみようか。