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第61回 ─ アリワ

BIG UP, LEGENDS OF REGGAE!!! 泣く子も黙るレゲエ界の大物アーティストがアリワから新作を発表だ!

連載
Discographic  
公開
2007/04/26   17:00
更新
2007/06/28   17:39
ソース
『bounce』 286号(2007/4/25)
テキスト
文/鈴木 智彦

 レゲエ界を代表するヴェテラン2人が、同タイミングでアリワから新作をリリースした。まずは、U・ロイ。42年生まれの彼は今年で65歳になるはずだが、昨年はスティーヴ・バロウ率いるブラッド&ファイア・サウンド・システムと共に来日し、元気いっぱいのステージを披露してくれたばかり。ライヴだけでなくレコーディング活動にも依然として意欲を燃やし続け、NYの話題スポット〈Nublu〉で活動するバンドで、トルコ出身のサックス奏者を中心とした3人組レゲエ/ダブ・ミクスチャー・ユニットのラヴ・トリオと発表したコラボ・アルバム『Love Trio In Dub Feat U-Roy』(2006年)が話題を集めたのをご記憶の方も多いだろう。

  御大のキャリアのスタートは、あの有名なダブ・ミックスの発明者であるキング・タビーのサウンドシステム、ホームタウン・ハイファイ。その時代から40年を経て、彼が新作『Old Scholl/New School』でのコラボレーションの相手に選んだのが、タビーの発明したダブ・ミックスをUKにおいてもっとも創造的に継承したひとり、マッド・プロフェッサーだ。実はこれが初のコラボではなく、97年に『Babylon Kingdom Must Fall』という素敵なアルバムを2人の共同作業で残してくれている。歌モノのラヴァーズ・チューンも十八番のマッド・プロフェッサー率いるアリワと、完全なダブ・トラックではなく、オリジナル〈歌モノ〉ヴァージョンに絶妙の間とタイミングで調子の良いトースティングを挟み込んでいくというU・ロイならではの名人DJスタイルの相性が悪いはずもなく、今回もヴォーカル/ダブ/レゲエDJという三位一体の醍醐味をたっぷり味わえる傑作に仕上がっている。ジャマイカ/NY/東京/ロンドン──還暦を過ぎてなお現役バリバリ。映画「ポートレイツ・オブ・ジャマイカン・ミュージック」の中で、〈俺は生涯DJ道を貫くさ〉と宣言していた男の有言実行ぶりに改めて感動した。

  そしてもうひとりが、プロテストな姿勢を貫き通しながらジャマイカ~ヨーロッパを股にかけて活躍を続けるシンガー、マックス・ロメオ。この新作『Pocomania Songs』は、彼がアリワからリリースする初のアルバムとなった。U・ロイより少し若いが、47年生まれのロメオもすでに還暦を迎えた人。彼のキャリアでいちばん有名なのは、70年代のリー・ペリーとのコラボ作品“War Inna Babylon”だと思うが、それ以前の作品も、またそれ以降の作品にも、常に一本芯が通った普遍的な姿勢(抑圧され続ける人々たちの心の代弁者)が貫かれており、実はこんなレゲエ・シンガーは彼以外には見当たらないというワン&オンリーの存在だ。甘さの中に憂いを秘め、ソフトな中に硬質な精神を包み込んだ彼の歌声は、今も昔もまったく変わることがない。そのロメオの音楽の本質、歌声の深さ、表現力の陰影の濃さを、見事なダブ・ミックスと、〈21世紀版レヴォルーショナリーズ・サウンド〉と呼びたいようなサウンド・プロダクションで再現し、彼の魅力を最大限引き出してみせたマッド・プロフェッサーのプロデュース・ワークが本当に素晴らしい。

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